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終わりに
1月の平均水温は17.9°C(平年比+0.5°C、前年比+1.1°C)、2月の平均水温は16.7°C(平年比+0.3°C、前年比+0.7°C)でした。今年の冬はほとんど平年並みで、2011年よりは少し暖かいようです。2011年は2月の初旬に13°C台を記録するなど、記録的な低水温もあって冷たい冬の海を体感しましたが、今年は普通の冬となり多くの熱帯性魚類も越冬できたのではないかと思います。3月に入ってから水温が18°C以上に上がる日が増え、19°C以上になる日も出てきました。これで春が近付いたと思ったのでしたが、3月11日以降は水温が低下して16°C台と冬に逆戻りとなりました。
水温が低いと海に潜るのを躊躇するところですが、敢えて水温の低い(と思われる)串本の東側に潜ってきました。潜った場所は「内浦ビーチ」と呼ばれる大島の白野港横にあるダイビングポイントです。冬季限定で開放されているところなので、3月末には閉鎖されていまいますが、岸から入って20 m以深に潜れる串本でも珍しいポイントです。ちなみに当日の水温は16°Cくらいで、錆浦のある西側とほとんど変わらないくらいでした。白野港は近くにオオナガレハナサンゴが群生する串本海域公園地区5号地と隣接する「地蔵岩」というダイビングポイント(船に乗って約3分)もあり、大島周辺の様々なダイビングポイントに潜りに行くのに便利な港です。
さて、内浦の話に戻しましょう。堤防の付け根から飛び込んで潜っていくと、水深10 mくらいから砂地になります。砂の上を深場へ進みながら魚を捜していくと、いろいろな魚に出会います。ヒメジ、トラギス、イトベラ、ハマフグなどは西側でも見られますが、あまり見ない魚種です。マエソやクラカケトラギスは西側ではまず見られない魚種でしょう。また、水深20 m以深で他のダイバーがじっくりと写真を撮っている姿を見たら、内浦のアイドル・ミジンベニハゼを撮影しているはずです。空き缶や空き瓶など人の棄てたゴミを巣に利用することも多い小さなハゼの仲間で、黄色い体と緑色の目がキレイな魚です。砂から顔を覗かせたダイナンウミヘビや、その周辺に群れるテッポウイシモチも内浦ならではの魚です。以前からよく潜ってきた内浦ですが、今年はテッポウイシモチがこれまでになく多く見られます。
深場に潜った場合、減圧症を防ぐために浅いところで減圧を行う必要があります。もともと深いボートポイントに潜ったときなどは、アンカーロープに掴まりながら減圧するのが普通ですが、内浦なら10 m以浅は周辺の魚類を観察しながら楽に減圧ができます。浅いところのゴロタ石と砂地の境目付近にはマダイやサビハゼなどが見られます。ゴロタ石の上にはミドリイシ類も少し生えていますが、串本の東側らしく温帯種のスズメダイも普通に見られます。そして、圧巻なのがマアジの群れです。数万尾(それ以上かも?)のアジたちが群れをつくり、周囲を取り囲む中を泳ぐのは爽快です。アジを狙うマトウダイも人を怖がる様子もなく、間近に見ることができます。浅いところで確実に減圧を済ませたらそろそろエクジット(上陸)、ボンベの中もそろそろなくなってくるはずです。
白野港は周囲を陸に囲まれて風の影響を受けにくく、大きな波が出ることが少ないため、「内浦ビーチ」は常に穏やかで潜りやすいところです。残念なのは冬季限定のために水温の低いときしか潜ることができないことです。一度で良いから暖かな夏の様子も見てみたいものです。