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終わりに
11月の平均水温は22.7°C(平年比+0.9°C、前年比+0.2°C)12月の平均水温は20.2°C(平年比+0.8°C、前年比-0.1°C)でした。海の中ではありませんが、年末年始頃から陸上の寒さが際だっています。私の知る限りこんなに寒い冬の記憶はないので(昔は寒い日もあったと思うけど)、なかなか海に入ろうという気分になりません。海水温が平年値(過去30年の平均値)よりは高いので、それほど冷たくないのですが、海から上がってきた時のことを考えると不安になってしまいます…。
さて、年末から展望塔にはアカカマスの群れが居着いています(写真1)。アカカマスは串本ではスーパーマーケットで普通に売られている食用種で、尾ビレが黄色く、他のカマス類と比べるとウロコが大きいことで近似種と簡単に区別できます。このアカカマスたちは10月頃には連絡橋の真下で群れているところを観察されており、だんだんと行動範囲を広げて展望塔から見えるところに来るようになったと思われます。多いときには数百尾も観察でき、展望塔の主役・メジナよりたくさん見られることもあります。今年は昨年と比べるとキビナゴが少ない分、アカカマスが塔の周辺を賑やかにしていると言えそうです。
10月から観察され続けているタカノハダイとミギマキの雑種は、年を越しても展望塔の周辺に居続けているので、高い確率で観察できます(写真2)。タカノハダイの仲間と言えば、エビ網に掛かって多く捕獲されているのですが、展望塔の周辺は禁漁区なので安心です。このまま安全に暮らせる塔の周辺から離れることなく、いつまでも元気な姿を見せてほしいものです。
話は変わりますが、串本海中公園・錆浦の西隣にある有田港、その湾口部に「吉右衛門」というダイビングポイントがあります。そこに珍しいヒトデがいるとの情報を以前から聞いていたので、観察に出かけました。錆浦から近いポイントですが、私にとってはあまり潜らないところなので、なんと2004年以来7年ぶりとなりました。海中に潜っていくと水深10~20 mくらいの深さで南北に岩が連なっています。ヒトデがいる南の方へ泳ぐこと約10分、目的のヒトデを発見しました。カワテブクロと名のついたそのヒトデは、腕の端から端まで20 cmほどで、本当に丈夫な皮の手袋のような感じに見えます(写真3)。琉球列島以南に生息するこのカワテブクロが串本で見られるのは初めてではないかと思います。また、周辺ではフトトデヒトデ、オオアカヒトデ、アオヒトデなど大きなヒトデが多く見られ、ヒトデだらけのダイビングとなりました。
2月になると、水温がさらに低くなって、黒潮に乗って運ばれてきた熱帯性の生きものたちには厳しい季節になります。この冬はどのくらい水温が下がり、どのくらいの生きものが越冬できるのか、その答えは黒潮だけが知っているのかもしれません。