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終わりに
9月に入りましたが、まだまだ海水温は高いままです。9月前半の平均水温は27.9°Cで、真夏と変わらないほどです。台風13・14号が本土への接近したことで、その後の水温は27°C前後に下がってきましたが、朝夕に空気の涼しさを感じられる陸上のように海中には秋が来ていません。
さて、今年は8月の水温も非常に高く推移し、平均値が28.4°Cという、1998年以来の高い値が記録されました。1998年と言えば、エルニーニョが話題に上り、世界的にサンゴの白化現象が見られた年です。造礁性イシサンゴ類の体内には褐虫藻という単細胞の共生藻が共生しており、イシサンゴ類はその共生藻がつくり出す光合成産物を利用しています。白化現象は高水温などのストレスで、サンゴの体内から褐虫藻が抜けだし、サンゴの色が白くなることです。長くこの状態が続くと、エネルギーを供給して貰えなくなったサンゴは死んでしまいます。
現在の錆浦では浅いところを中心に白化現象が確認されています。まず、多く見られるのが、サンゴイソギンチャクの白化です。サンゴイソギンチャクはクマノミの共生するイソギンチャクとしてよく知られている種で、サンゴと同じように褐虫藻を体内に持っています。水深10mくらいまでの岩礁域に多く生息するのですが、これらの色が非常に薄くなっています(写真1)。真っ白にはなっていませんが、白化しているのがよく分かります。また、サンゴではコブハマサンゴに白化が目立ちます。ごく浅いところでは確認していないのですが、水深10m前後の所でよく色が抜けているのが確認されました(写真2)。この深さで白化しているのは前述のサンゴイソギンチャクとコブハマサンゴだけのようです。
今のところ、死滅したサンゴやイソギンチャクは見つかっていませんが、暑い夏の影響がまだ残ったままとなっています。しかしながら、もう少し水温が下がると、サンゴたちに褐虫藻が少しずつ戻ってきて、正常な状態になっていくことでしょう。