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終わりに
今年の当地での最大の事件は大きな地震と、数多い台風の襲来です。そのようなわけで、10月11月の秋の行楽シーズンになっても、秋晴れの天気が少なくて、紀南へ来られる観光客のみなさんには、あまり良くない秋になったと思います。しかし、例年はこのシーズンは秋晴れが続き、我々住民も、各地から来られる観光客の人々も、紀南の自然と秋の味覚を充分に満喫する時節なのです。
近頃は各地でコスモスの栽培が盛んで、中でも最近になってキバナコスモスが各地で広く植えられていて、この時期はキバナコスモスの盛りです。10月はじめから見られたツマグロヒョウモンについては、先月の近況報告に書きましたが、ついに10月16日にキバナコスモスに吸蜜している雌の撮影に成功しました(写真1)。
またこの頃になると、春に多く発生していたサツマシジミが、食草であるサンゴジュの近くでちらほらと目立つようになります(写真2)。
10月19日から20日にかけて、今シーズンの台風の総仕上げの23号が襲来しました。 この台風は、数日前からの天気予報で、わが国がすっぽり収まるほどの大きな強風圏を持つ、まれに見る大型台風であるとのふれこみでやってきました。しかし風雨はさほど強くはなく、風による被害はほとんどありませんでしたが、波浪は非常に激しく、わたしは当地に30年以上いますが、このような大きな波はこれまで見たことがないと断言できるほどの波浪の大きさでした。この台風で、海中展望塔へ連絡する架橋の橋脚が倒れて、橋が壊れてしまって、展望塔が利用できない状況になってしまいました。この被害や、室戸岬付近での防波堤の崩壊などから見て、強風域の大きな台風は、風の吹く距離が長くなることから、波浪を強大にする効果が大きくなったのではないかと思われます。
台風のあと、ダイビングパーク前の海岸は全てが砂利になって、海岸植生が全く消えてしまいました(写真3)。写真は10月21日に撮影したものですが、24日によく観察したところ(写真4)、砂利の上にはハマゴウの幹のようなものが枯れ枝のように残っていました。細い枝や葉は全くない状態です(写真5)。研究所前の海岸も同じような状況です(写真6)。ところがよく観察しますと、海岸植生は根こそぎ持って行かれたのではなく、植生の上に大量の砂利が積もったことがわかりました。それは海岸からダイビングパークへ上がるために付けられた階段の手摺りが、ほとんど埋まってしまっていることによって明らかになりました(写真7)。またダイビングパーク前に植栽されているトベラなどの樹木は根があらわになっていて、この付近までの土壌が波浪によってはぎ取られたことも明らかになりました。
このような度重なる台風の襲来にもかかわらず、自然の季節はそのような事件がなかったかのように、移り変わります。10月24日にはキチョウがアメリカセンダングサで吸蜜していました(写真8)し、ビワが開花しました(写真9)。さらにこの日は、当地方で冬を代表する花であるツワブキが開花しました(写真10-11)。
11月1日には恒例により、果実の観察を行いました。クリはイガがすっかり落ちてしまって、葉も少し色付いています(写真12)。これはあるいは台風の潮風のせいかもしれません。カキの実は少し色付いています。このカキは形からして渋柿のようです(写真13)。また夏みかんはますます太って、おいしそうに見えますが、色付くまでにはもう少しかかりそうです(写真14)。
この日(11月1日)には、秋に大発生して、長距離を渡ることで有名になったアサギマダラがツワブキに吸蜜しているところを見ました(写真15)。
11月になって、他へ出かけることが多く、7日に久しぶりに観察に歩きました。すると海中公園の駐車場のキンカンの木に、青い実が鈴なりになっているのに気がつきました(写真16)。またいつも観察している野辺にはイシガケチョウ(写真17)やヤクシマルリシジミ(写真18)の飛ぶのが見られました。これらの蝶は天気の良い日には12月末まで、姿を現す種です。