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終わりに
5月の平均水温は21.1°C(平年比+0.6°C、前年比±0、6月の平均水温は23.8°C(平年比+0.9°C、前年比+0.6°C)でした。6月8日朝に海中観光船の港が赤潮でピンク色になっていて、昨晩サンゴの産卵があったことがわかりました。これまで6月下旬に産卵があったと聞いたことがありましたが、こんなに早いのは初めてではないかと思います。以前は夏休みにナイトダイビングをしてサンゴの産卵を観察したものですが、この時期に夜潜るとまだまだ寒そうです。
さて、サンゴだけでなく、海の中は生きものの繁殖が真っ盛りです。クロホシイシモチは5月末からオスとメスのペアが多くなり、6月に入ってからは卵の口内保育をする姿が普通に見られるようになってきました(写真1)。写真では左側にいるオスの口から卵が少しはみ出ています。これはちょうど口の中の卵をかき混ぜて、卵全体にきれいな海水が行き渡るようにしているところです。また、2008年8月から錆浦での産卵を確認しているオヤビッチャが今年も同じ場所で産卵していました(写真2)。今回卵を見つけた6月下旬の水温は24°Cほどで、決して高いわけではありません。オヤビッチャのような熱帯域で繁殖する魚種には、まだ涼しい水温だと思っていたので、産卵が始まっていることに驚きました。オヤビッチャもオスが卵を守っているのですが、さすがに人が近づくと卵から離れてしまいます。すばやく動き回るオスの姿を写真に撮ることはできませんでした。
かわりに水槽で産卵するオヤビッチャのペアを紹介します(写真3)。左側で青く輝いているのがオス、右側のメスは壁に卵を産み付けていることろです。オヤビッチャの縞模様は通常は白黒ですが、繁殖期には青みが強くなり、とくにオスの色は鮮やかになるのが特徴です。水槽の中は冬季も保温してあり暖かいので、成熟したオヤビッチャは年中青っぽく見えます(さすがに真冬に産卵はしていません)。
春からの水温が高いと生きものの繁殖時期が早まると想像されますが、今年は平年と比較しても決して高い水温が続いているようには思えません。毎朝、海中展望塔で水温などを計測し続けていますが、人間には分からない変化があることを海の生きものたちは気付いているのかも知れません。