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終わりに
8月前半は高い水温が続き、サンゴやイソギンチャクに厳しい海となりましたが、8月17日に28°Cを下回ると、その後は26°C台が続いて平年値以下の水温になってしまいました。その結果、8月の平均水温は27.8°Cで、平年値より0.4°Cだけ高い値となりました。8月末から少し水温も上がって27°C台になり、9月前半の平均水温は27.3°Cとなりました。
暑さが一段落してサンゴの白化も起こらなくなりましたが、潜って観察しているとサンゴを食害する生物がよく見つけられます。これまで錆浦ではあまり見かけなかったオニヒトデを結構な確率で見つけられるのです。結局、私が潜水中に見つけた8個体を捕獲、駆除することができました。多くは10~15 cmくらいのやや小型の個体ですが、最大のものは28 cmもある大型個体でした(写真1)。この大きなオニヒトデの周辺は広い範囲でクシハダミドリイシとニホンミドリイシが食べられて白く無惨な姿に変わっていました(写真2、3)。今年度も串本町ではボランティアによるオニヒトデ駆除が続いていますが、1個体でこの被害と考えると、オニヒトデがサンゴに与える影響の大きさを思い知らされます。
また、最近ではオニヒトデだけでなく、サンゴを食害する小型の巻き貝が増えているようです。2000年頃に串本町沿岸で猛威をふるった小さな巻き貝「ヒメシロレイシダマシ」は5年ほどの駆除努力によって、ほとんど姿を消し、サンゴの巻き貝による被害は収束していました。しかし、2005年以降に続く冬季の高水温下で、そしてオニヒトデの脅威の陰で少しずつ数を増やしていたようです。ただし、最近私が見つけたのはシロレイシダマシという近縁種で、被覆状のコモンサンゴに寄生しています(写真4)。海中展望塔沖の水深10mくらいでコモンサンゴを見ると、10~20個体くらいの貝がコモンサンゴを食べています。クシハダミドリイシに集るヒメシロレイシダマシの数から考えると少ないものですが、錆浦でも決して多くないコモンサンゴにとっては大変な事態になっています。
さて、これは脅威にはならなそうですが、マンジュウヒトデがサンゴを食べた跡も見つかりました(写真5)。左上に食べられたニホンミドリイシが、右下にマンジュウヒトデがいます。マンジュウヒトデは腕が非常に短いヒトデで、ほとんど五角形をしています。サンゴを食べることも知られていますが、大発生などの記録はないようです。
8月前半の高水温による白化現象が終わっても、食害する様々な生物が多く見られ、錆浦のサンゴたちはひとときも安心できそうにありません。