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終わりに
今年は冬季の水温が例年に比べて低いことを4月のコラムで話しましたが、夏を迎えても依然として低い状態が続いています。錆浦地先の7月の平均表面水温は23.9°Cで、平年値(25.4°C)より1.5°Cも低くなっています。8月に入り、26°C以上の水温が記録されるようになりましたが、例年だと27°C以上が当たり前、28°Cを越える日も多いはずです。聞くところによると、潮岬沿岸のダイビングポイントで20 mの海底まで潜ると、水温が20°C程度となり、ウエットスーツを着ていても寒くていられないそうです。なお、20°Cといえば、錆浦では12月の水温です。黒潮は潮岬の南、30マイル程度まで近づいているのですが、暖かい潮はなかなか海底まで届かないようです。
さて、生物に目を向けると、この時期、浅い海底の枝状ミドリイシ類の隙間には10種程のチョウチョウウオ類の小さな子供が何十個体も見られるのが普通だったのですが、今夏にはこれらがほとんど見られません。これまでに見ているのはトノサマダイとスミツキトノサマダイを数個体程度だけです。ベラ類やスズメダイ類の幼魚も多数見られるソラスズメダイを除くとほとんど見られません。
南方から稚仔魚が運ばれてくるチョウチョウウオ類などの幼魚があまり見られない代わりに、この夏多いと感じられるのが、カサゴとアカウニ、そしてムラサキウニの子供です。カサゴは20 cm以上になる底生の魚で、串本では「ごっちょう」と呼ばれる美味しい魚です。これの5 cm程度の子供が転石の隙間などでよく見られます。これまでは小さな個体を見ることはあまりなかったのですが、今年は普通に見られるのです。アカウニとムラサキウニは殻の直径が7~8 cmになり、食用となるウニで、アカウニは赤紫色、ムラサキウニは黒紫色をしています。多く見られるのは殻が3 cmほどの子供たちで、水深数mの海底で20~30 cmほどの石をひっくり返すと、1、2個体が必ずと言っていいほど見られます。ちなみに、まだ小さいこれらのウニたちも来年には食べ頃の大きさになっていると思われます。なお、漁業権を持っていない人は採集が禁じられているので、普通の人が採って食べてはいけません。
今年の錆浦の海は、冬だけでなく、夏まで冷たく(涼しく?)なってしまい、これまで暖かい海で過ごしてきた私のようなものには、別世界と感じられます。しかしながら、このまま数年経てば、美味しいウニが安く手に入り、食べ放題(?)という嬉しいことになるでしょうか。