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終わりに
9月の平均水温は28.1°C(平年比+1.7°C、前年比+1.1°C)10月の平均水温は25.2°C(平年比+1.1°C、前年比+0.6°C)でした。月に入ると水温もだいぶ下がってきて、暑かった夏の海が懐かしくなってきます。
さて、10月のある日、海中展望塔でいつものように魚類の観察をしていると、不思議な魚を発見しました。遠くにいるところを見ると、タカノハダイのように見えるのですが、近づくにつれてミギマキのように見える部分もでてきます(参考写真1&2)。これは初めて見るユウダチタカノハでは、と思い図鑑を調べてみても、何となく違う魚のようです(写真3)。ここまで名前の出た3種はタカノハダイ科に属する魚類で、串本および日本で見られるのはこの3種だけです。ミギマキとタカノハダイは錆浦でも普通に見られる種ですが、ユウダチタカノハは潮岬の東側で行われているエビ網で捕獲されたものを見たことがある程度なので、あまりはっきりと特徴を覚えていません。たまたま展望塔のガラス掃除当番が回ってきたところだったので、早速カメラを持って潜水掃除(!?)に出かけました。
なお、展望塔の周辺海域は魚を驚かせないために、スタッフであってもできる限り近づかないようにしています。展望塔に近付いていくと、さっそくこの不思議魚が見つかりました。近くで観察しながら撮影していると、タカノハダイとミギマキのどちらでもなく、両方の特徴があるように見えます(写真4)。ただ、観察し続けると、タカノハダイとミギマキの特徴が何だったか、だんだんと自信がなくなってきます。近くに泳いでいるタカノハダイやミギマキを観察しつつ、掃除も手早く終わらせました。写真を見ながら図鑑を開いて調べると、陸に上がって写真を見ながら調べると、やはりユウダチタカノハでもないことが解り、結論としてタカノハダイとミギマキの雑種という答えにたどり着きました。過去の記録をベテランスタッフに聞くと80年代後半にエビ網に掛かったものが水族館に持ち込まれ、けっこう長い間飼育されていたという話が出てきました。なお、この雑種は毎日ではないものの、普通に展望塔から観察できるので、この近くに居着いたようです。いつまで見られるかは判りませんが、しばらく楽しめそうです。
今年の展望塔は珍しい雑種が見られるのと対照的に、普通種の減少が目立ちます。昨年どの窓から覗いても大きな群れが見られたキビナゴは、時々小さな群れが見られるだけとなり、出現が遅れているように感じます。また、ほぼ必ず見られる魚種のひとつ、クロメジナがほとんど見られません。これまではメジナに混ざって大型個体(40 cm以上)が10個体前後見られていたのですが、数個体が見られれば良い方で、まったく見つけられない日もあります。また、クロメジナが多いときにはよく見られていた10 cmくらいの「こっぱぐれ」と呼ばれる小型個体も全く見られません。夏の暑さが原因なのか、それとも普通のメジナが増えすぎて、居場所を失ったのかは分かりませんが、展望塔の周辺も様変わりしているようです。