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終わりに
8月の平均水温は27.4°C(平年比±0°C、前年比-0.4°C)、9月の平均水温は27.0°C(平年比+0.6°C、前年比+0.4°C)でした。8月が平年並みの暖かさで終わったことで、今年はサンゴの白化の話をほとんど聞くことがありませんでした。10月前半の平均水温は25.1°C(平年比+0.4°C、前年比+0.3°C)で、9月からは若干暖かい水温となっています。10月7日から8日にかけて台風18号が強い勢力を保ったまま熊野灘に沿って北上し、愛知県の知多半島に上陸しました。5年前の台風20号とよく似たコースを通ったために、串本の町でも風による被害が出ていました。
さて、台風の波が一段落したので、周辺の被害状況を確認しました。潜らずに確認ができる海中展望塔では、半数以上の卓状ミドリイシが破壊され、大きな被害が見られます。錆浦の全体でこのような被害が出ていると大変なことになりそうだと、心配しながら潜ってみました。
最初に観察したダイビングパーク前の浅いサンゴ群落では、枝状のスギノキミドリイシもあまり割れていないようで、被害は少なそうに見えました。しかし、ところどころで流れてきたゴミがサンゴに引っかかっていたり、大きなクシハダミドリイシがひっくり返っていたりと、若干の被害が見られました(写真1,2)。
次に観察した錆浦港では、やはりゴミが見られる以外に、特に被害はなさそうに見えました。その後、展望塔の沖まで泳いでいきましたが、途中に割れたスギノキミドリイシの折れているところや、折れた枝が散乱しているなど、多くの被害が見つかりました(写真3,4)。波の当たり具合の違いで、場所よって被害の大きさも様々なようです。そのまま、沖の砂地に来ると、砂の上に大量の泥が積もっていました(写真5)。泥は砂地の凸凹の凹んだところに多く溜まっていて、(写真ではわかりにくいのですが)多いところでは5 cm以上の厚さがあります。台風通過後の濁りがなかなか取れず、透視度の低い日が続いていましたが、その理由は周辺に堆積した泥(大雨で陸上から流れ出したものと思われる)だったのです。また、上から落ちてきた岩が砂の上に転がっているところも確認できました(写真6)。岩の大きさは1 m以上あり、台風の波が岩を割り、転がしてくるという、とんでもない自然の力を見せつけられました。
最後に、被害を受けたサンゴをどうするのか疑問に思う人も多いのではないでしょうか。串本海中公園センターとしては基本的に何もしません。折れたり、ひっくり返るのも自然現象であり、サンゴたちはたくましく生きて、自然に回復していくものです。しかし、海中展望塔の周辺は、お客様に見てもらう場所でもあり、サンゴの自然回復を待ってもいられません。周辺で折れたサンゴを集めて、「水中ボンド」と呼ばれる水道修理などに使用するエポキシ系接着剤で岩にサンゴをくっつけるという、水族館の飼育係による移植が行われました(写真7)。移植されたサンゴは小さな欠片ですが、自然より早く回復し、海中展望塔の周囲を元の状態に近づけてくれるはずです。