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終わりに
12月の平均水温は20.2°C、平年値を1.1°C上回っていました。過去最高の暑さを記録した9月以降、少しずつ水温が下がっていき、11月以降は前年(2006年)よりも少し低い値で推移しています。1月前半の平均水温は19.0°C、さすがに20°Cを超える日はほとんどなくなってしまいました。水温は下がってきましたが、まだまだ錆浦の魚たちは元気に泳いでいます。
グラスボート港内のサンゴ群落ではチョウチョウウオ類が相変わらずたくさん見られます。10月に紹介した15種の内、ゴマチョウチョウウオとセグロチョウチョウウオ以外の13種が確認でき、さらに10月には見られなかったミカドチョウチョウウオも観察されました(写真1)。個体数は以前と変わらず多いままです。全体的に少し大きくなったのか、逃げ足が速くなって、写真を撮るのが難しくなりつつあります。
チョウチョウウオ類の観察を続けていると、珍しいスズメダイ類も見つかりました。まず見つけたのはルリホシスズメダイです(写真2)。写真の個体は昨年の冬を越したと思われ、体の大きさと色がよく見るものと大きく違います(小さいものは地色が焦げ茶色一色です)。昨夏は本種も多く流れ着いたようで、小さな個体はけっこう普通に見られますが、このように大きくなったルリホシスズメダイは初めて見ました。また、地味なスズメダイですが、珍しいヒレナガスズメダイも発見できました(写真3)。黒と黄色が美しい幼魚はけっこう見たことがありますが、これほどの大きさの物は4年半ぶりの2度目です。2005年の夏に同じ場所で小さな幼魚を見たことがあり、それが大きくなったと考えると(普通に考えれば、違う個体である可能性が大きいですが…)、何となく楽しくなってきます。
さて、ちょっと嫌な話をしましょう。海中展望塔の沖、水深15 mくらいのところで、大きなオニヒトデを見つけました(写真4)。見つけたときはサンゴを食べている様子はなかったのですが、あらためて周囲を見渡すと見事に食べられたキッカサンゴを発見しました(写真5)。串本の沿岸では引き続きオニヒトデ駆除が行われていますが、駆除されるオニヒトデも減少しつつあり、一段落かと思われている節もあります。しかしながら、錆浦の海でもこのように時々オニヒトデが捕獲されています。今回見つけたものは、持ち帰って計ったところ、直径34 cmもあり錆浦では最大のものだと判りました。まだまだ、油断できない状況にあると痛感させられました。
最後に珍しい棘皮動物(ウニやヒトデの仲間)を次々と発見できたので紹介しましょう。ひとつ目はパイプウニ(写真6)です。グラスボート港内の岸壁の隙間に隠れています。実は10月から見つけていたのですが、良い写真が撮れなかったために紹介していませんでした。それから3ヶ月、まったく同じ場所に生息しています。ふたつ目はノコギリヒトデ(写真7)です。グラスボート港内で転石をひっくり返したところ、見つけることができました。採集して帰ったのですが、調べてみると本州初記録だと判りました。みっつ目はワモンクモヒトデ(写真8)です。これは海中展望塔の近く、水深5 mで転石下から見つけました。これも採集して帰ったところ、本州初記録だと判りました。採集したノコギリヒトデとワモンクモヒトデは錆浦研究所の大切な資料としていきます。(採集は許可を取って行っています。一般の人が潜って採集することは禁止されています)
今回は少し水温の下がった海で、珍しい魚類と棘皮動物を紹介できました。次回は最も水温の下がる2月の海を紹介しようと思いますが、どのくらい冷たい海になるのか、どんな生き物が見られるのか、興味は尽きません。