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終わりに
串本海中公園センターには海中展望塔という水深5 m程の海中を観察できる塔が建っています。この塔は串本海中公園2号地区に隣接しており、これまで27年に渡る観察で300種以上の魚類を記録しています。今回はここから見られるイスズミ科の魚についてお話しします。
串本町近海では4種のイスズミ類の生息が知られており、海中展望塔でもその4種が全て記録されています。ただし、4種のうち「テンジクイサキ」を除く3種は互いに良く似ているので区別が難しく、「いずすみ」という地方名でまとめられていることが多いようです。また、塔の周りに数百尾が群れるメジナに似ているために、お客さんにはイスズミ類の存在に気がつかない人も多いのではないかと思います。
さて、海中展望塔で見られるイスズミ類4種を多く現れる順に並べると、ノトイスズミ(写真1)、テンジクイサキ(写真2)、ミナミイスズミ(写真3)、イスズミ(写真4)の順になります。ノトイスズミは10~50尾くらい、テンジクイサキとミナミイスズミ10尾前後、イスズミは2、3尾くらいが普通ですが、それぞれ少ない日もあれば、見られない日もあります。
ところで今年に入ってから、イスズミ類がほとんど見られない日が続きました。その理由として、塔の近くに住みついていた200羽以上のウミネコが考えられます。ウミネコたちは寒くなってから塔の周辺に集まり始め、みるみるうちに数を増やしていきました。大挙して水面に浮いた餌を食べるので、水面下ではメジナたちも警戒して、なかなか餌にたどり着けないように見えました。塔の係員もウミネコに餌を与えていたので、人に慣れてかなり近くまでやってくるようになっていました。しかし、塔が糞で白く汚れることや、慣れすぎてお客さんの中に怖がる人もいたことなどから、ウミネコに餌が渡らないように工夫したところ、しばらくして数が減り、数羽が見られる程度になりました。その後しばらくして、イスズミ類が戻ってきたのです。
ウミネコが直接イスズミを捕食するとは考えづらいのですが、水面上を飛ぶウミネコの群れがイスズミたちの住みにくい環境をつくっていたのでしょうか。2月になってウミネコの減った海中展望塔では以前のような魚たちの楽園に戻りつつあります。