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終わりに
7月15日、カキの実は随分立派になりました(写真1)。イヌマキの枝に絡むアケビの実も大きく育っています(写真2)。7月5日に一斉に咲いた海岸のオニユリには17日の炎天下、ナガサキアゲハが吸蜜にきます(写真3)。ユリの赤い花粉をハネにいっぱい付けて無心に食事中です。後バネがまるで赤色かのように見えるものもあります。ダイビングパークのあるこの海岸一帯は、この後に入る山かげの谷間と違って、気候が随分温暖と見えて、季節の移り変わりが幾分早いようです。19日、海岸では既にクサギのつぼみが大きくふくらんでいました(写真4)。
7月22日、急に青空が広がり、夏が来ました。実質上の梅雨明けのようです。この日、今年初めてタマムシが金緑色のハネを輝かせて、飛ぶのが観察されたほか、クマゼミの初鳴きを聞きました。また近年ぐんと個体数が少なくなったように思えるアブラゼミは24日に初鳴きを聞きました。そして、7月28日には海岸のクサギの開花が始まりました(写真5)。
8月1日、クサギは既に満開で(写真6)、甘い香りをあたりに振りまいています。クサギはこの最も暑さの厳しい期間に、甘い香りで、多くのアゲハ類を集め、彼らが夏ばてしないように、栄養補給の役目を一手に果たします。しかし、谷間の観察コースでは、クサギはまだあまり大きくないつぼみをやっと付けたところです(写真7)。
8月1日の定期観察の様子をお知らせしましょう。ウメは相変わらず、すがすがしい木陰を提供しています(写真8)。そのほかのクリ、カキ、ミカンはそれぞれ順調に実を生長させています(写真9-11)。ハマボウの花は得意な夏に咲き誇るはずですが、今年はちらほらという調子で、花の数があまり多くありません(写真12)。またアカメガシワの花も終わりの時期を迎えています(写真13)。シイとシャリンバイの実はこれから大きくなろうとしています(写真14-15)。一方、トベラとサンゴジュの実は既に充分に大きくなり、サンゴジュの実は既にサンゴ色を呈しています(写真16-17)。
イヌビワの実は充分に熟していて(写真18)、割ってみると、イチジクの仲間であることがよくわかります(写真19)。一方、アケビの実は半月前の様子(写真2)とちっとも変わるところがありません(写真20)。さらに、先月には海岸で咲き誇っていたハマオモトの花は盛りを過ぎました(写真21)。この時期になって、ウバメガシは新枝を出したようです(写真22)。また、ヤマモモも一部の木で枝先に新たな葉が茂ったように思われます(写真23)。このようなことは毎年起こることなのか、あるいはあまりの暑さに木がぼけたのか、はたまた観察者の目がかすんだためなのか、定かではありません。
8月6日に、錆浦海岸で、赤潮が見られました(写真24-25)。前日の5日に沖縄地方で、サンゴの一斉産卵があったと、テレビで報道された翌日だったので、ひょっとしてサンゴの卵かとも思いましたが、チェックをしたところ、夜光虫の赤潮でした。そして、8日にはカキとクリの実が順調に大きくなっています(写真26-27)。
今回の最終日、15日にはミカンの実も大きく成長しています(写真28)。ところが、前日の風で、クリの実が沢山落下しました(写真29)。ここ数年の観察では、カキやクリの実は、たいした風も吹かないのに、なぜか大量に落果してしまうことが多いことを知りました。しかしそれでもなお、今年はカキの生り年のような気がします。この15日になって、ようやく、谷間のクサギの花が咲き始めました(写真30)。海岸に比べて、実に18日も遅い開花でした。
予報では、今年は冷夏と言うことでしたが、串本では、7月22日に突然夏になって以後、異常に暑い日が続いています。沖縄ではサンゴの白化が深刻で、また大量のサンゴが死にそうです。串本ではほとんど白化は見られませんが、陸上と同じく、また我々串本人と同じく、「ヒェー、今年の夏は暑いのう」で、この夏も過ぎていくのかも知れません。陸上の多くの生きものがそうであったように。あるいは暑さによって多少ともダメージを受ける種が、海中と陸上で出るかも知れませんが、彼らにしてみても、長い種の歴史の中の気候変動の内で、環境さへ保全されていれば、暑さが去った暁には、また元の活性を取り戻すに違いないのです。我々串本人も、海中のサンゴも、陸上のあまたの生命体も、もう少しの辛抱でしょう。