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終わりに
今年は記録的に台風の多かった年でした。とくに10月20日に四国に上陸した台風23号は猛烈な波が海岸に打ち寄せ、海中展望塔の連絡橋が破壊されました。波はダイビングパークの駐車場まで達し、砂や石が打ち上げられた駐車場はまるで海岸のようでした。波の大きさも記録的で、ここまで高く波が打ち上がったのは1970年の海中公園創業以来のことです。
この大波で大量のサンゴが打ち上げられました。この海岸はもともと打ち上げサンゴの多い所ですが、とくに今回は台風襲来前までは海中で生きていただろうと思われるサンゴが非常に多かったのが特徴でした。サンゴは普通の石に比べ比重が軽いので、海岸の特定の場所に集中して堆積しており、この付近ではしばらくの間生臭いサンゴの腐敗臭が漂っていました。古い打ち上げサンゴは骨格が削られ特有な模様が不明瞭になっていて、色も少し黒ずんでいますが、死んで間もないサンゴは色も白く、骨格の模様も明瞭です。
大量の打ち上げサンゴは海岸歩道をふさいでしまいましたので、歩道を復活させるためサンゴを片付けているうちにサンゴの石垣ができてしまいました。サンゴのなかには骨格標本にでもなりそうなきれいなものがたくさんありましたので、これを並べて約100 mのサンゴ歩道ができあがりました。台風は海中公園に大きな被害をもたらしましたが、少しだけ素敵な贈り物をくれました。
打ち上げられたサンゴを調べてみるとオヤユビミドリイシやキクメイシ、ムカシサンゴ、イボサンゴ、ハナヤサイサンゴ、オオハナガタサンゴ、オオナガレサンゴ、ベルベットサンゴなど20種以上が確認されました。量的にみるとミドリイシ類とキクメイシ類が大部分を占めています。ミドリイシ類は骨格の模様が小さくて目立ちませんが、キクメイシ類は大きくて肉眼でも色々な模様を識別することができます。サンゴに興味のない人でも珍しい石が落ちていると、手にとってながめています。
海岸に打ち上げられたサンゴの骨格は炭酸カルシウムでできていて、どれも真っ白です。しかし、海中で生きている時は共肉という組織におおわれていて、まったく違ったものに見えます。海中公園前で見られるキクメイシの仲間のいくつかをクローズアップ撮影してみました。サンゴ個虫の大きさは直径5~10 mm位です。