串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
北西の季節風が吹きつける潮岬の北海岸に降りてみる。木々に頭上を覆われた急な坂道を降りてゆくと、波の音が聞こえ、やがて目の前が開ける。海を挟んで遠くには串本海中公園センターの白い建物が山の懐に抱かれるように建っているのが見える。足下からすぐはラムサール指定地になっている住崎の海。シーズンにはたくさんのダイビングボートでにぎわう海域だ。向こう岸の錆浦の海域公園のサンゴ群集を中心とした海とはまた違う海がここにはある。だが、12月のオフシーズンは訪れる人もまばらな海岸だ。すぐ背後の道路を回り込めば、本州最南端の灯台がすぐそこに望める。太平洋から打ちつける荒波に削られた岩が海岸を埋め尽くすように重なり合っている。そんな中、たくましく黄色い花を咲かせるのはツワブキ。びょうびょうと吹きつける北風をもろともせず、重なり合う岩の上に艶やかな緑の葉を広げ、すっくと黄色い頭をもたげて海を見下ろしている。同じ花を咲かせるならもっと暖かい時期にすればいいのにと思わずお節介に思ってしまうが、彼らにとってはこの時期にこの場所で花を開くのは宿命なのだろう。
最近はツワブキも園芸種が出回って、庭先でも時折見かける事がある。でも、ツワブキはこの荒々しい北風吹きつける浜辺で見るのが一番美しい。それは色や形の美しさではなく、生命そのものの美しさであるからだろう。ツワブキの写真をアップに撮ったはずが、帰って拡大してみたらどれも使い物にならなかった。どうやら強い北風であおられてピントがぼけてしまったらしい。帰りを考えるともう一度あの急坂を下りる体力がなく、春の再訪を誓った。