串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
1月12日にサンゴを食害するシロレイシガイダマシ類の駆除作業が4号地で行われました。これに同行しましたので本海域の現況について報告します。
4号地は串本町有田と田並の間にある名近崎先端部の小さな入江の中にあります。串本海中公園地区は4ヵ所に分かれていて、4号地は一番西に位置しています。ここは卓状に生育するクシハダミドリイシが海中景観の中心になっていますが(写真1)、入江の中央部から奥にかけては枝状のミドリイシ類の高密度群集も見られます(写真2)。また、入江の中央部付近には直径3 m、高さ2 mほどの大きなオオスリバチサンゴ(写真3)があり、これもこの海域を代表するサンゴになっています。オオスリバチサンゴは昼間でもイソギンチャクのようなポリプをのばしているので(写真4)、サンゴがイソギンチャクと同じ仲間の動物であると説明するのに大変良い材料です。
この海域は海中公園地区に指定された1970年当時に比べ、枝状のミドリイシ類が非常に多くなっているという変化が見られます。これは1990年代に起こった黒潮の接岸による冬季水温の上昇のため、熱帯性の強い枝状のミドリイシ類が繁殖しやすくなったためと思われます。この黒潮の接岸はサンゴを食害するシロレイシガイダマシなどの異常繁殖をもたらし、4号地をはじめ串本町の各地でサンゴに大きな被害を与えました。ここではサンゴの半分以上がこの巻貝によって食害を受けました(写真5)。このため串本海中公園センターの錆浦研究所が中心となり、地元のダイバーの協力を得て大量の巻貝を駆除しました。多い時は一人当たりの駆除数が1700個もあった時もありましたが、今回の駆除作業では50個以下になりました。この巻貝によるサンゴの食害も一段落したようです。もし、この巻貝を駆除せずに放置していたなら、4号地のサンゴは全滅していたことでしょう。今回の駆除作業には16名のダイバーが参加してくれました(写真6、7)。寒波襲来という悪条件での海中作業に熱意をもって取り組んでくれた皆さんには感謝しています。
昨年あたりから周辺海域ではオニヒトデの異常繁殖が見られるようになりました。幸いこの海域にはまだ侵入していません。しかし、今回の駆除作業中に目についたのはサンゴにからみついた大量のゴミでした(写真8、9、10)。このゴミの大半は細い木の枝ですが、これは昨年相次いで襲来した台風によって海岸域から流失したものです。これによるサンゴの損傷は少ないのですが、この海中の異物は美しいサンゴ景観を印象の悪いものにしています。