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終わりに
毎年夏になると、磯の浅い海底にはいろいろな魚種の幼魚たちが現れ、海中はにぎやかになります。今年はとくにニザダイの幼魚が多く見られるのが特徴です。
7月の上旬に海中に入ると、水深1mの浅い海底を黒く丸い小さな生物の集団がごちゃごちゃと動き回っているのが目にはいりました。直径1cmほどの小さな個体で、互いに体が触れ合うほど密集して泳いでいます。アニメの「となりのトトロ」に登場する妖精「真っ黒くろすけ」のようで、魚とは思えない集団でした。近づいてよく見るとニザダイの幼魚だというのが分かりました。100尾以上の集団で、あちこちで見られます。30年近く串本の海で魚の観察を続けていますが、こんな光景を見るのは初めてのことです。
ニザダイは串本の海で普通に見られる魚で、串本海中公園の海底では全長20~30 cmの個体が単独あるいは10~50尾の群で泳いでいます。イスズミ礁や浅地、シママワリなどのダイビングポイントでは100尾を越す大きな群がよく見られ、時には壁のように密集した大群に出会うこともあります。こんな時は全長が30 cmを越す大型の個体が中心です。串本ではサンノジ(3の字)と呼ばれていますが、これは尾びれの付け根付近にある骨質板を囲む黒色斑が三という字に見えるからです。しかし、実際にはこの黒色斑は4個あります。1個が小さく目立たないので「三」に見えるということもありますが、「四」の字が死につながるといって嫌ったためという説もあります。ニザダイは石灰藻を主食とする雑食性の魚で磯臭さがありますが、冬には臭みが減り美味しくなります。
8月の中旬になるとニザダイの子供たちも3~4cmに成長し、一回り大きくなりました。まん丸だった体形も前後に伸びて、成魚に近い形になっています。泳ぎ方ももう成魚と同じです。群を作って岩に付いた藻を一生懸命に食べています。この調子で成長を続けたら、串本海中公園の海中景観も変わるかもしれません。