串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
去年と違って、今年は台風の襲来がありません。海中公園にとっても、漁業者にとっても、さらには紀南の住民にとっても、大変ありがたいことです。秋のお彼岸も近い9月18日、畠の畦にヒガンバナが咲きました(写真1)。また同じ所には以前からツリガネニンジンが咲いていましたが、本日見ると、いよいよ花の盛りのように咲き競っています(写真2)。また荒れ地ではアメリカセンダングサが花を咲かせています(写真3)。一方、山影には山里ハイカーには人気の高いミズヒキソウがひっそりと小さな花の列を綴っています(写真4)。セミの鳴き声も真夏に比べいささか弱々しく聞こえます。それに比べて、秋の虫の鳴き声が聞こえてきます。秋の虫の音はやかましいばかりのセミと違って、どこか弱々しく、もの悲しく聞こえます。コロコロコロと鳴きながら、落ち葉の上にひょっこり顔を出したコオロギを見つけました。エンマコオロギのように見えました(写真5)。10日ほど前から飛ぶのを見ていたホソバセセリの撮影に本日(18日)やっと成功しました。メス個体です(写真6)。ハネの裏の模様が独特で、夏と秋に発生しますが、錆浦では多くありません。
21日には、ついにミンミンゼミの鳴き声が消え、ツクツクボウシのみが鳴くようになりました。非常に長い間に亘って花を咲かせているキツネノマゴは、ひょっとしてこの時期が最盛期かと思われるほど多くの花を付けています(写真7)。秋になって周りに花が少なくなったので、そのように感じるのか、あるいは求蜜する花が少なくなったので、キツネノマゴの小さな花でも求蜜に訪れる昆虫が目立つせいなのか。この日(21日)はよく目を引きました。前回にお知らせした8月下旬に変わった花を付けていたヤマノイモは既に立派なムカゴを付けています(写真8)。また前回にあでやかな花を紹介したヌスビトハギは既に独特の形をした実を実らせ(写真9)、あとは私のズボンにくっつくだけと、待ちかまえています。 定期観察コースの廃屋の庭にはこの時期小型のギボウシが満開です。多分栽培種だろうと思いますが、秋に咲くギボウシはあまり聞きません(写真10)。
26日にキバナコスモスで吸蜜するニホンミツバチを見ました(写真11)。これからの越冬に具え、あまり蜜源がないこの時期に、必死に吸蜜しているミツバチを見るのは心温まる思いがします。この辺りはセイヨウミツバチが入っていません。土地の人々は在来種のニホンミツバチをゴウラという木製の樽のような円筒形の巣箱を用いて養蜂しています。
9月最後の日、30日、ようやくススキが目に付くようになりました。今年の秋の訪れは遅いようで、いつまでも真夏日が続きます。しかし、夏の間じゅう、真昼の時間のこの観察で、ツユクサの花を見たことがありませんでした。というのは、早朝咲いた花はその時刻には既にしぼんでいるからです。ところがこの時期になって、初めて真昼にツユクサの花を見ることができました(写真12)。それだけ秋が進んでいることを示しているのでしょう。また、実の付きの悪い今年のクリが、サルの襲撃を受けたと見えて、ただでも少ない実がサルによって食われていました(写真13-14)。
10月1日は定期観察の日です。ミカンとカキは着実に実を大きくしています(写真15-16)。ウメは葉だけしかありませんが、それも秋の訪れと共に、隙間が多くなったように見え、いくらかは既に落葉したようです(写真17)。クリは相変わらず目の届く範囲にはイガはありません。葉も秋の気配を漂わせています(写真18)。クリの葉はこれら4種の果樹の内では一番最初に黄葉するようです。ところで近くにあるナシが去年に続いて秋に狂い咲きの花を付けました(写真19)。10月に入って、ようやくススキが目立つようになりましたが、秋の名物セイタカアワダチソウの黄金の波はもう少し後のようです(写真20)。
10月2日にツクツクボウシを聞きましたが、それ以後セミの声は途絶えました。この日かわいい花を咲かせていた栽培種であるフウセントウワタに大きな実がなっているのに気が付きました(写真21)。数年前に御坊でこれにカバマダラという奄美以南にしか分布しない迷蝶が発生しました。串本では栽培量は僅かですが、毎年注意してみていますが、これまではカバマダラの偶産はないようです。
植物を見ていますと、見たところほとんど環境が変わらない場所に生えている株でもずいぶんと花の盛りの時期が異なることがあります。この辺りではクサギの花はお盆の頃から開花し、9月の初旬には花は終わります。ちなみに今年の開花は8月16日でした。しかし10月3日に遅くまで咲いている1本のクサギがあり、その花にナガサキアゲハが訪花しているのを見ました。遠くからの撮影でいい写真ではありませんが、証拠までに掲載します(写真22)。
いよいよ秋も深まった頃になるとベニシジミが目立ちます。ハネの裏はいつ見ても同じでなかなかしゃれた模様をしています(写真23)。秋も深まったので、表の模様は春型に近くなっているものと期待して、観察すると表は未だ夏のままです(写真24)。
収穫の秋とは人間だけのものではないようで、今年の数少ないクリが、10月9日徹底的に猿の攻撃を受けました(写真25)。今年はクリが不作なので、猿たちは次になにをねらうのでしょう。