串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
1月になり、水温が19°C台まで下がり、少し冷たく感じるようになってきました。12月より1~2°C下がりましたが、まだまだ黒潮接岸の影響が強いものと思われます。 さて、まずは前回の訂正です。「11月の錆浦の海」でいくつかのスズメダイ類を紹介しましたが、オキナワスズメダイと紹介したものを精査したところ、カブラヤスズメダイの間違いであったことが判りました。オキナワスズメダイは体高が低く、やや細長い体型に見えるのですが、カブラヤスズメダイは体高が高く、幅のあるスズメダイです。私の知る限り、串本では初めての記録となります。写真が上手く撮れなかったこともありますが、串本で見られるとは思っていなかった種なので、以前見たことがあるオキナワスズメダイと見間違えたのです(苦しい言い訳ですネ)。申し訳ありませんでした。
さて、12月中旬にカブラヤスズメダイを確認し直した時に、面白い光景を見つけました。サンゴのないところにソラスズメダイが10個体以上集まっていたのです。「何でこんな所に…?」と思いながら近づいてみると、シラヒゲウニが産卵していており、生み出される卵を食べようと集まっていたのです(写真1)。ウニと言えば食べられるのは卵などの生殖巣ですが、産卵の時期は種によって異なります。紀南では夏にムラサキウニやガンガゼ、秋にアカウニ、そして冬にシラヒゲウニが産卵期を迎えます。ソラスズメダイたちもおいしい物(栄養価の高い物?)をよく知っているのか、とちょっと感心しました。
ところで、12月下旬と1月初旬に、串本海中公園地区1号地に近い高富のビーチに潜ってきました。錆浦からは東に500 mくらい離れたところで、2軒のダイビングサービス(橙色と赤色の店)のあるところです。岸から潜っていくと、まず水深3 mくらいの浅場にはフカトキクメイシを中心にしたサンゴ群集があります(写真2)。冬季は透視度が高いこともあり、明るい海底に多数並んだ丸い群体が面白い景観を作り出していて、懐かしい八重山のリーフ内の景観を思い出しました。錆浦にもフカトゲキクメイシ群落はありますが、こちらの方が規模も大きく見応えがあるようです。
沖にまっすぐ泳いでいくと、水深5~7 mくらいの砂礫底が続き、左手に水深2 mくらいのクシハダミドリイシとスギノキミドリイシを中心にしたサンゴ群集が見えてきます。砂礫底は一見単調な景観ですが、多数のニセクロナマコが生息し(写真3)、シマキッカイソギンチャク(写真4)やキッカイソギンチャク(写真5)、アジサイイソギンチャク(写真6)のような砂礫底に生息するイソギンチャク類の宝庫です。また、ニセクロナマコに混じって珍しいナマコが見つかりました。その場で名前が判らなかったのですが、帰ってから調べたところ、クリイロナマコだと判りました(写真7)。20 cm以上ある大きな個体でした。
一方、ミドリイシの群落では、様々な熱帯性魚類が見られます。チョウチョウウオ類の数は決して多くはありませんが、スズメダイ類やベラ類など錆浦で見られるものが一通り揃っているようです(写真8)。そして、ここに本物のオキナワスズメダイが生息していました(写真9)。全長が5 cm近くあったので、2006年の冬を乗り越えたものだと思われます。他にも深緑色をしたクギベラの雄が見られたり(写真10:幼魚や雌は普通に見られるが、雄はめったに見られない)、モンツキアカヒメジ(写真11)やコモンフグ(写真12)のような錆浦ではなかなか見られない魚が見られたりと、サンゴやイソギンチャクだけでなく魚類も面白いところでした。
もう少し沖に出ると、串本海中公園地区1号地になり、クシハダミドリイシの大群落があったところ(2004~2005年にかけて台風や寒波で大ダメージを負って、未だ回復していない)がありますが、じっくりと観察をするにはちょっと遠いために、今回は見ていません。けっこう浅いところにサンゴも魚も多いので、夏のシュノーケリングも十分に楽しめそうなので、今度は暖かい時に観察に行きたいと思います。