串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
6月16日、昼頃が干潮で、潮間帯の岩の上にはホンダワラ類が厚く繁茂しています(写真1)。例年、この頃にはそろそろ流れ出してもよい時期ですが、今年は時の移り具合が少し狂っているようです。この日には、5月8日には既に立派な実を付けていたと、前々回にお知らせしたヤマモモの実が熟して食べ頃になりました(写真2)。木の下には多くの実が熟して落ちています(写真3)。さらにこの日、海中公園の園地の芝生にネジバナが咲きました(写真4)。我々に最も身近なラン科の野草で、野生のランで、このように普通に見られる種は他にはありません。
6月23日には、13日に満開だったサンゴジュの花が終わり、無惨な姿をさらけ出しています(写真5)。またクリの観察木のあたりにはクリの花の残骸が無数に落ちています(写真6)。
小野小町花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふるながめせしまに
前回にも書きましたように、当地は15日に梅雨入りしました。有名なこの歌は、「世にふる」は己が古る、すなわち年を取るという意味と、雨が降るとの掛詞、「ながめせし」は己が眺めると、長雨が降っている、すなわち梅雨の雨との掛詞、の二重の掛詞の巧みな歌で、サンゴジュとクリの花の花殻を見ていると、ついこの歌が浮かびました。
同じく23日、ダイビングパークの駐車場の山際に、大きなきれいなキノコの1群を発見しました(写真7-8)。傘の径は12 cmほどです。いかにもおいしそうですが、紀南でのキノコ類の第一人者である、新宮の南 敏行さんに見てもらったところ、オオシロカラカサタケという種で、有毒だとのことでした。
26日には研究所の前で、ホタルブクロが咲きました(写真9)。また観察コースではヒオウギズイセンが初開花しました(写真10)。さらに付近にあるアケビの実が大きくなり始め(写真11)、アカメガシワも目立たない花を咲かせました(写真12)。夏本番を思わせるベニシジミの高温期型が見られるようになりました(写真13)。同時に飛んでいた低温期に発生したもの(写真14)と比較すると、違いは明瞭です。
6月最後の30日、7月1日の天気が不安だったので、この日に定期観察をしました。梅は先月と同じく、葉をいっぱい茂らせて日陰を作っています(写真15)。カキの実は大きくなってきています(写真16)。ミカンとクリは共に小さな実を付けています(写真17-18)。ビワとヤマモモの実はすっかり落ちています(写真19-20)。
またシイは実を付け、トベラの実も立派になってきました(写真21-22)。この頃になると、ハマボウが本格的に開花し始めました(写真23)。さらにこの日、ヤブカンゾウが初開花しました(写真24)。この日、ヤブマオには立派な花芽が育っています(写真25)。また海岸ではハマオモトがいよいよ満開の季節を迎えていますが(写真26)、一方、梅雨時咲き誇っているアジサイはこのところの晴れ続きで、花がしおれています(写真27)。
翌7月1日にはヤブマオが開花しました(写真28)。この日は梅の枝でゴマダラカミキリが交尾しているのを観察しました(写真29)。今年は、ジャコウアゲハの当たり年で、目についてしかたありません。この日も、花盛りのノウゼンカズラの花に潜り込んで吸蜜に余念がありません(写真30)。頭隠して尻隠さずなので、どれほど近づいても一向に逃げる気配はありません。またこの日には早くもキリギリスの初鳴きを聞きました。
7月3日、梅の林で、キノコを2種見つけました。1種はこれまでにもちょくちょく見かけた種で、根元にツボを持っていて、いかにも毒キノコのような種で、もう一方の赤い種は初めて見るものでした。早速、南さんに尋ねてみると、ツルタケ(テングタケ科)とコニオイベニタケ(ベニタケ科)とのことでした(写真31-33)。この日、ニイニイゼミの初鳴きを聞きました。
5日には、ダイビングパーク前のハマボウが満開になりました(写真34)。さらに10日には、錆浦海岸の筆島近くで、オニユリが一斉に開花しました(写真35-36)。
14日から15日にかけて、7月の台風としては史上最強の台風4号が、西方から日本を襲い、被害が心配されましたが、幸い串本の南岸沖を通り、少し波浪はあったのもの、風による被害は全くなく過ぎました。そして15日に、イヌビワの実が熟しはじめました(写真37)。また観察コースの農家では、家の横にある柿の木の実に袋をかけました(写真38)。どうも今年はカキの当たり年のようです。