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終わりに
4月の平均水温は18.5°C(平年比+0.2°C、前年比±0°C)、5月の平均水温は21.1°C(平年比+0.6°C、前年比-0.4°C)でした。あまり暖かく感じらなかったのは、近年の高水温に慣れてしまったためでしょうか。水温が20°Cを超えるようになったのは4月30日からで、その後どんどん暖かくなってきました。6月前半の平均水温は22.7°C(平年比+0.3°C、前年比-0.3°C)で、前年より若干低い傾向が続いています。
また、海底を散策すると「海そうめん」と呼ばれる焼きそばのような卵塊を発見できます(写真3)。これはアメフラシの仲間、タツナミガイの卵塊です(写真4)。錆浦の潮間帯では多くのアメフラシ類が春に見られますが、このタツナミガイは水深5mくらいの砂礫底で年中見られます。繁殖期には、転石の下などに数個体が集まって見られることが多いようです。
一方、魚ではソラスズメダイも雄が巣穴を作って、雌を待つようになりました。ソラスズメダイは鮮やかな青い色をしたスズメダイですが、繁殖期の雄は地味な紺色になってしまいます(写真5)。また、アカエソは普段単独で生活していますが、繁殖期になると雌雄のペアが寄り添う姿が見られます(写真6)。イシヨウジの雄が抱卵しているのも見つかりました(写真6)。イシヨウジは20 cmほどのヨウジウオ類で、顔の形をよく見ると、タツノオトシゴに近い仲間だと分かります。イシヨウジを始めとして、タツノオトシゴの仲間は雌が産んだ卵を雄が腹部で育てます。写真の個体も腹部が膨らんでおり、多数の卵を保育しているようです。
水温が上がって夏が近づいてくると、多くの生きものが繁殖期を迎えます。紹介できたのはごく一部ですが、海の中もだんだんと賑やかになっていくのがよく分かります。次の機会には生まれた子供たちをいくつか紹介できると思います。お楽しみに。