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終わりに
1月の平均水温は18.7°C、平年値を1.4°C上回っていました。水温が18°C以下に下がった日は3日だけで、海水温は暖かく推移したと言えそうです。2月に入ってからは、5-6日に19°Cを超えるなど、今年も暖かい冬となりそうかな、と思われましたが、15日~17日に15°C台の低水温となりました。
さて、先月の予告通り(?)、その水温が下がった錆浦の海に潜ってきました。潜水当日の朝の表面水温は15.2°Cで、今季最低水温です。当日午後、陸上では雪がちらほらと舞っている中、相当な覚悟をして海に飛び込んだのですが、意外に海中は暖かく、少し拍子抜けした気分です。手持ちの水温計も17°Cと表示されており、そんなに冷たい海ではないことが判りました(観測結果でも次の日から17°C近い値が記録されており、昼頃には暖かい海水に入れ替わっていたのだと推測されます)。
潜ったところは、毎度おなじみのグラスボート港です。海中透視度は非常に高く、20 m以上見えています。何もない港の中で、青い水を撮影しました(写真1)。港の奥は海中観光船などが行き来することで、かき混ぜられて濁りやすいのですが、当日の透視度からは、そんなことは想像できません。
いつものサンゴ群落に近づくと、ソラスズメダイやクロホシイシモチが普通に群れているのが見られます。さらに近づくとトノサマダイやアケボノチョウチョウウオの黄色も見えてきます(写真2)。サンゴ群落内をぐるっと一周したところ、チョウチョウウオ類は先月と同様に数多く見られ、全体的には水温の低下による減少は感じられませんでした。今回確認できたのは11種で、先月見られたハナグロチョウチョウウオとチョウハンの2種が見られませんでした。10月の時点で多い種はトノサマダイとアケボノチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、ヤリカタギとお伝えしました。2月になって少し変化が見られたのはヤリカタギ(写真3)で、他の3種が減ったように見えないほど多く見られる中、ヤリカタギだけは明らかに減少していました。ヤリカタギが減少する理由は定かではありませんが、少し大きくなったヤリカタギはテーブル状のミドリイシ周辺で見られることが多いので、棲みやすいテーブル状のサンゴを求めて移動していったと考えられます。港内のサンゴ群落では枝状のスギノキミドリイシが比較的多いため、少し成長したヤリカタギには棲みにくいところなのかも知れません。
ところで、サンゴ群落に生息するチョウチョウウオ類に大きな変化はありませんでしたが、サンゴ群落の周辺は冬らしくなっています。最も大きな変化がフクロノリです。海底の石という石から人の拳より大きな褐色の海藻が生えています(写真4)。フクロノリという名前の通り、袋状の海藻で、中身は空っぽです(本当は海水が入っています)。錆浦の海では水温の低くなる1~3月に、この海藻が浅い海底を覆い尽くすようになります。ただし、サンゴを覆って殺してしまうようなことはないようです。
黒潮は依然として潮岬沖から離れることなく接岸傾向が続いています。気温の低さもあって2月中旬に低い水温を記録したこともありましたが、今後は少しずつ上がっていくと予想されます。また多くの魚たちが越冬することが予想されます。錆浦のサンゴ群落の賑やかさも変わることなく、春を迎えられそうです。