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終わりに
7月の平均水温は25.5°C(平年比+0.1°C、前年比+0.4°C)、8月の平均水温は28.6°C(平年比・前年比ともに+1.2°C)でした。台風4号が九州の西側を通過して日本海に抜けていきましたが、その後水温が一気に高くなり、海中も猛暑になりました8月の平均水温は海中展望塔での観測史上2番目の高さとなり、とくに8月下旬の平均水温(29.1°C)は過去最高値を記録しました。陸上がこれだけ暑ければ、海中も例外なく暑くなってしまうのでしょうか。
9月に入っても水温が下がることはほとんどなく、暑さが続くことによって海中ではサンゴやイソギンチャクが次々と白化していきました。ダイビングパークの前の海岸は夏の間にスノーケリングを楽しむたくさんのお客さんが泳いで生きものを観察していましたが、その辺りの浅いところはフタマタハマサンゴという緑色でモコモコとした被覆状のサンゴが多く見られます。これらのハマサンゴは完全に色を失って真っ白になっています(写真1)。また、錆浦周辺に最も多く見られるクシハダミドリイシも色が薄くなっています(写真2)。真っ白ではないので、白化していることがわかりにくいのですが、本来の深緑色~焦げ茶色の姿と比べるとわかりやすいのではないでしょうか(写真3)。水深が浅ければ浅いほど白化したサンゴの割合は多くなっていて、太陽熱によって予想以上の暑さがサンゴにダメージを与えているように感じます。
イソギンチャクの白化は最近夏の風物詩となっているようで、今年も水深10 mくらいまでは当たり前のように色が薄くなっています(写真4)。白化したイソギンチャクの中にクマノミが隠れていると、非常にキレイな写真が撮れるのですが、イソギンチャクの健康状態を考えると、あまりお奨めできる光景ではないでしょう。
寒さや冷たさといったものが「超」がつくほど苦手な私にとって、暖かいことは大歓迎なのですが、これほど暑いのは困ったものです。私に適温な暖かい時期は短く、これからはどんどん涼しい秋になっていきます。涼しくなれば、白化しサンゴたちも体力を回復して、元の色に戻っていくことでしょう。白化によって死んでしまっているものはほとんどないように見えるので、大量のサンゴが死滅するような事態にはならないと思います。少し不健康な海中景観が観察されているのは残念ですが、今後はこのような夏の風物詩が当たり前となっていくのでしょうか。水温が高いときは黒潮が串本沿岸によく接近して流れているのが通例です。このような時は夏の間に多くの稚仔魚が串本沿岸に流れ着いているはずで、これらの発見と成長していく様を観察するのは秋のダイビングの楽しみです。サンゴには辛い夏でしたが、まだ私の見たことのない魚たちが、発見されるのを待っているはずだと思います。