串本海域公園について
串本海域公園の利用
串本海中図鑑
串本海域公園の話題
終わりに
錆浦の海岸は2月のコラムでも話したとおりサンゴのガレキでできている。この軽石の様な穴だらけの石は、今でこそ誰も見向きもしないが、昔は貴重な資源だった。一体何に使われていたのだろうか。串本海中公園ができる直前の昭和40年代まで、この地には海岸に大きな窯(かま)があちこちにあった。煉瓦で積まれた大きな窯である。見た目には焼き物を焼く窯や炭を焼く窯の様に見えるが、実はここで焼かれているものは、サンゴの骨だった。サンゴの骨は周辺の海岸から集められ、この大きな窯の中に薪と一緒に積まれ、蒸し焼きにされた。石としては軽いとはいえ、サンゴの石を集めるのも大変な労働だったことだろう。最盛期には海岸にうち揚がっているものだけでは足らず、海の中にまで入って拾ったという。そうまでして作っていたのは石灰。炭酸カルシウムでできているサンゴの骨を焼くことによって、生石灰ができるのだ。この生石灰は出荷まで山積みされ、出荷に合わせて水をかけて消石灰とし、袋に詰められて漆喰等の材料として大阪方面に多く出荷されたという。その名も熊野灰。この熊野灰はとても良質の石灰で、当時の蔵や城など多くの建物の外壁に使われた。サンゴから作った漆喰は昔は沖縄や南九州、紀伊半島などで作られたが、どこもサンゴの採取が禁止されたので、現在は日本では作られていない。
このサンゴのガレキでできた海岸は保水力がないので、植物が生きていくのはなかなか大変だ。でもそんな中でもどんどん増えてしっかり生きている植物がいる。それがハマダイコン。ハマダイコンは一般に畑の大根が野生化したものと言われているが、それに異を唱える人もいる。確かに大根には似るが、色々な点で大根と違う点が多い。まあその点は研究者に任せて、さて仮にもダイコンと言うことであるから味の方はどうなのだろうか。食べてみた感じでは、味はダイコンに似て辛いが、筋がやたらと多くあまりおいしいとは言えないと言うのが感想。でも花は薄い紫色でとても美しい。海からの強い浜風をものともしないで咲く強い植物だ。