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写真1. 摘果期を迎えた梅の実
写真1. 摘果期を迎えた梅の実

 先月のこの欄の終わりに、5月に入っての事象について、串本を留守にしたことにより、書けなかったことを謝りましたが、本年5月は全く多忙な毎日で、ほとんど串本を離れていたため、さらには台風の余波や、梅雨入りで、天気が悪かったことも重なり、以後も観察の機会がなく過ぎてしまいました。
 その間に断片的に観察した、海中公園付近の様子を紹介します。

 5月末になると、梅の実も大きくなり、摘果シーズンとなります(写真1)。梅の雨と書いてツユとは、まさにこの頃から始まります。山かげの草むらには日陰のほの暗い中に、鮮やかな真っ白の模様をちりばめたようなドクダミの花が盛りを迎えました(写真2-3)。ドクダミの花は清楚な感じがするきれいな花で、ご存じのようにドクダミは薬草としても有名なのですが、近くに寄ったり、特に踏みつけたりすると、いやなにおいを発するので、あまり好まれないようです。また同じような日陰には、同じく薬草として用いられるユキノシタが花塔に小さな花を鈴なりに付けます(写真4)。ユキノシタの花は日当たりの良いところでは5月初旬には開花していますが、よく目立つようになるのはこの頃です。

写真2. 山かげのドクダミ
写真2. 山かげのドクダミ
写真3. ドクダミの花
写真3. ドクダミの花
写真4. ユキノシタの花
写真4. ユキノシタの花

 一方開けた草原では、外来種のヒメジョオンが満開で(写真5-6)、花は蜜があまり多そうには見えないにもかかわらず、モンシロチョウなど数種の蝶が吸蜜に訪れているのがみられます(写真7)。モンシロチョウはすでに夏型の装いで、春型がハネのうらに黄色とネズミ色ですすけたように見えますが、夏型のモンシロチョウの裏は真っ白です。

写真5. ヒメジョオンの草原
写真5. ヒメジョオンの草原
写真6. ヒメジョオンの花
写真6. ヒメジョオンの花
写真7. 夏の装いのモンシロチョウ
写真7. 夏の装いのモンシロチョウ
写真8. 風雨の翌日の梅の落果の様子
写真8. 風雨の翌日の梅の落果の様子

 6月にはいると、梅の実はいよいよ熟し、風が吹くと沢山落果します(写真8)。ここの梅の木は毎年収穫されずにこのように落果しては腐ります。この辺りのサルもイノシシもさらにはタヌキもこの実には手を出さないようです。青梅の実にはアミグダリンが含まれていて、空気中にある加水分解酵素エムルジンの作用で、有毒な青酸ができ、おなかをこわします。これらの動物は本能的に生の梅が有毒なのを知っているのでしょう。

 梅雨に似合う花はアジサイです。色も赤から青まで微妙に色調を異にします(写真9-11)。アジサイは長崎に滞在したオランダ人シーボルトによって、オタクサ(otakusa) という種の学名で日本から新種記載されました。花が沢山付いていることから、”オーたくさん”とされたためではありません。シーボルトの日本での愛人であった女性”お滝さん”の名をとってアジサイの学名にしたのでした。本当は”おたきさん”のはずですが、シーボルトも彼女のことを”おたきさん”とは知らず、”おたくさ”だと思っていたに違いありません。従って彼女を呼ぶ時も”おたくさ”と呼んでいたはずです。そこで学名を”おたくさ”としたのでしょう。アジサイの学名は現在では、それ以前に日本に来たツンベルグの命名したマクロフィラ(”大きな葉の”という意味)が使われていて、お滝さんの名は消えてしまっています。
 アジサイの花の色は、梅干しの色、すなわちシソの色と同じ、アントシアンという色素です。この色素は酸性で安定し、赤色を呈します。そしてアルカリ性では不安定で、濁緑色をしています。従ってアジサイは土壌のpH(ペーハー)の微妙な差によって、あのように花の色を変えるのです。

写真9. ダイビングパークの青いアジサイ
写真9. ダイビングパークの青いアジサイ
写真10. ダイビングパークの紫のアジサイ、これぞ紫陽花
写真10. ダイビングパークの紫のアジサイ、
これぞ紫陽花
写真11. ダイビングパークの赤いアジサイ
写真11. ダイビングパークの赤いアジサイ

 6月初旬には海中公園の敷地内で、ホタルブクロ(写真12)やネジバナ(写真13)が咲きます。ネジバナは苑地の芝生の上に林立して(写真14)、気の付いた来園者は”ちょっと見て、見て。変わった花が咲いているよー”などと、仲間に叫んでいます。ネジバナはランの一種です。近頃は野生のランでこのように普通に見られる種は滅多にありません。敷地内でネジバナの開花に初めて気が付いたのは、今年は6月6日でした。

写真12. 研究所横のホタルブクロの花
写真12. 研究所横のホタルブクロの花
写真13. 研究所裏のネジバナ
写真13. 研究所裏のネジバナ
写真14. 中央苑地の芝生に林立するネジバナ
写真14. 中央苑地の芝生に林立するネジバナ

6月10日には海岸でハマオモト(通称ハマユウ)が初めて開花しました(写真15)。すぐ隣では、ハマヒルガオの開花も始まりました(写真16)。一方海岸を離れると、タイサンボクの大きな花が咲き(写真17)、人家の庭先ではナンテンの目立たない花房が開花期を迎えています(写真18-19)。当地方で、風よけに生け垣として植えられている外来種のサンゴジュも開花時期となります(写真20-21)。サンゴジュは甘い香りを四方に放ち、ミツバチやハナアブが沢山吸蜜に来ていて、花の辺りではブンブンという羽音が絶えず聞こえます。
 この辺りで最も普通なシジミの一種であるベニシジミもハネの紅色が黒ずんで、夏型の装いです(写真22)。これは6月10日に撮影したものですが、写真23の3月18日の春型のベニシジミと見比べてください。近頃の若い人は男女を問わず、日焼けが嫌いなのか、あるいは皮膚ガンを恐れてか、真っ白です。日向に出る時は日焼け止めクリームをベタベタと塗りたくっているので、黒くならないのでしょう。夏は小麦色に焼いても皮膚ガンにはならないはずです。もしその程度でガンになるなら、私も含め、昔の若者はみんな皮膚ガンで死んでしまっているでしょう。ベニシジミは昔の若者と同じように、日焼け止めをもっていないのでしょう。

写真15. 6月10日に開花の始まった錆浦研究所研究所のハマオモト
写真15. 6月10日に開花の始まった錆浦研究所研究所のハマオモト
写真16. ハマヒルガオの花
写真16. ハマヒルガオの花
写真17. タイサンボクの大きな花
写真17. タイサンボクの大きな花
写真18. あまり目立たないナンテンの花穂
写真18. あまり目立たないナンテンの花穂
写真19. ナンテンの花
写真19. ナンテンの花
写真20. 開花期のサンゴジュ
写真20. 開花期のサンゴジュ
写真21. サンゴジュの花
写真21. サンゴジュの花
写真22. 夏型のベニシジミ
写真22. 夏型のベニシジミ
写真23. 3月18日の春型のベニシジミ
写真23. 3月18日の春型のベニシジミ
写真24. 雨が少なく、しおれてしまったアジサイの花
写真24. 雨が少なく、しおれてしまったアジサイの花

 今年は早々と梅雨入り宣言が出たものの、以後ほとんど雨が降らず、梅雨時期の象徴のおたきさんも水不足で、花がしおれて、おばあさんのおたきさんになっているこのごろです(写真24)。

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