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終わりに
今年の梅雨は空梅雨で、雨量が極端に少なく、四国では深刻な問題になりました。この空梅雨は6月のあいだ中続いていましたが、6月17日には錆浦海岸で今年初めてハマオモトが咲きました(写真 1)。通俗名をハマユウとよび、紀南の夏を代表する花で、清楚な風情は照葉樹林の生い茂る海岸林をバックにした紀南の海岸の風景によく調和します。気温も随分上がり、空梅雨ながらじめじめした日が続きましたが、そのような気候を好むヘビがにょろにょろ這うのが目立ちます(写真 2)。この日に、サフランの花が咲きました(写真 3)。先月号で紹介した13日に落果した梅の実は肉が腐っているのか、発酵しているのか、辺りに甘い香りが漂っています(写真 4)。夏の訪れを最も顕著に表しているのはベニシジミの羽の色です(写真 5)。春の鮮やかな紅色から、日焼けしたような焦げ茶色の羽になっています。ところが、すぐ隣には春と夏の中間型の配色の羽をもった個体が飛んでいます(写真 6)。ただしこの個体の羽は長期間使用したと見えて、かなりくたびれているのがおわかりでしょう。
今年の春は遅かったのですが、夏になるのも例年よりも少し遅めです。何よりも奇妙なのは、6月19日になっても、海中公園センターの生け垣のサツキが満開であることです(写真 7)。これだけ見ているとまるで春の風景です。この日、ミカンの花の後に、小さな実ができているのを見つけました(写真 8)。
ここ数年海中公園センターの軒に巣を作りに来なかったツバメが、今年は巣をかけました。それも研究所の軒にです。カメラを向けると、親は非常に警戒するので、撮影は控えていましたが、6月24日、ヒナもだいぶ大きくなったので、1枚だけ撮らせてもらいました(写真 9)。
26日には多くの花が開花しました。毎年畠の畦に咲くヤブカンゾウ(写真 10)、林の縁の大きな葉を展開させるタケニグサ(写真 11)、古くからの栽培脱走種であるヒオウギズイセン(写真 12)、それに研究所の横の草藪のホタルブクロ(写真 13)がこの日一斉に初開花したのです。
7月1日は定期観察日です。ウメの木は葉をいっぱいに茂らせていますが、実は少ないようです(写真 14)。クリもよく茂っています(写真15)。ミカンの実も19日より少し大きくなったようです(写真16)。柿もよく茂っていますが(写真17)、今年は実がみんな落ちたようで(写真18)、今年のカキは不作ではないかと思います。
7月に入って、空梅雨はどっかに飛んでいってしまいました。毎日鉛色の空と、しとしとあるいはザーザー降る雨に、閉口する日が続き、研究所の木製の扉も湿気で膨張して、うまく閉まらなくなりました。水不足で悩んでいた四国も、この豪雨で水不足は解消しましたが、災害が起こってしまっては、喜んで良いのか、悲しむべきなのか、複雑です。幸い錆浦を含めた、串本町では、深い森と小さな河川との組み合わせのお陰で、水不足で困ることも、洪水で慌てることもまずありません。自然の前に謙虚であれとは、どなたの言葉だったか忘れましたが、ここ串本の暮らしはまさに、それを地で行くものでしょう。
7日の七夕の日に、11年前の、1994年6月18日に、海中公園の隣にある有田小学校の生徒が植樹したハマボウが、今年初開花しました(写真19)。本来は川縁や、海縁の湿地に生える種なのですが、海中公園ではダイビングパークの縁に植えてあり、湿気が不足するのではないかと、心配したのですが、おおきく成長し、毎年多くの花を咲かせます。
また次の日(8日)、ハマナタマメのピンクの花が初開花しました(写真20)。この日、ニイニイゼミとクマゼミの初鳴きを聞きました。
この頃、カラスウリのしぼんだ花を見かけます(写真21)。早朝に咲くので、私が観察する昼には花は全て、写真のようにしぼんでいます。また明日咲く花はつぼみのままです(写真22)。7月12日にはヌスビトハギが初開花しました(写真23)。
7月中旬ともなれば、出荷用のホオズキの実が赤く色付き(写真24)、海岸ではオニユリの花がハマオモトの間で揺れています(写真25)。