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終わりに
11月になり、水温が24°C前後と少し涼しくなってきました。9月に白化が見られたハマサンゴやサンゴイソギンチャクも少しずつ回復しているようです。
錆浦地先のスギノキミドリイシ群落には、7月頃から見られ始めたチョウチョウウオ類の子供達が枝の隙間から出たり入ったりと忙しそうにしています。今年はチョウチョウウオ類が非常に多く見られるようで、特にトノサマダイとヤリカタギ、そしてミスジチョウチョウウオの3種が昨年以上に多く感じます(この3種はそれぞれ100個体以上いるものと思われます)。また、昨年に比べて串本への到着が早かった(昨年は9月頃からよく見られた)ためか、大きな個体が多く見られるのも特徴です。このスギノキミドリイシ群落で多くのチョウチョウウオ類が見られるのは昨年もお伝えしたとおりですが、今年はセグロチョウチョウウオやアミチョウチョウウオ、シラコダイなども見られ、本当にチョウチョウウオ類の楽園となっています。
さて、チョウチョウウオ類に見とれてばかりいられないのが今秋の海です。錆浦地先には見慣れない黒っぽいスズメダイがたくさん見られるのです。このスズメダイは体色が濃いグレーで、胸ビレ基部と背ビレ前端に黒点があり、背ビレの黒点には黄色い点が並んでいます。大きさは2~3 cmで、昨年までは見られなかった(気がつかなかっただけかもしれない)種ですが、岩陰という岩陰に1個体ずつ、どこを探しても見つかるくらいにたくさんいます。この魚はフチドリスズメダイの幼魚で、普通に見られるセダカスズメダイと同じクロソラスズメダイ属の魚です。フチドリスズメダイは潮岬でダイビングインストラクターをしている参木氏から浅いところにたくさんいることを聞いていたのですが、その数の多さは、これまで本当に見られなかったのか不思議でならないくらいです。参木氏からは他にも、アイスズメダイとスジブチスズメダイという串本で未記録のスズメダイ2種の情報ももらっていますが、今のところ観察の機会に恵まれていません。
また、スギノキミドリイシの群落では、チョウチョウウオ類の群れに混じり、水色に輝くアオバスズメダイとオキナワスズメダイの群れ(合わせて10個体ほど)が見つかりました。アオバスズメダイはデバスズメダイに似ており、区別が難しいのですが、今回の群れでは胸ビレ基部の黒点がはっきりと見て取れ、デバスズメダイでないことが判りました。本種は2002年にデバスズメダイの大きな群れの中に数個体が混じっていたと情報があり、それ以来の出現となります。オキナワスズメダイについては、1995年頃に見たことがあったのですが、それ以来の出現と思われます。他にもイシガキスズメダイやルリホシスズメダイが多いことなど、スズメダイ類の出現傾向がいつもとは異なる年となっています。但し、暖かい時に多いと思われていた(暖かかった1998年に多数が見られた)ネッタイスズメダイは今のところ、全く見られていません。
これらが見られたスギノキミドリイシ群落は、海中観光船などの航路上にあるために、普通は潜ることができませんが、観察を続ければ他にも様々な発見がありそうな気がします。また、面白い物を発見できれば、紹介をしたいと思います。