屋久島のエコツーリズム

西部地域におけるエコツーリズム

世界自然遺産の森で野生動植物の魅力を知る

西部地域は、屋久島の世界自然遺産の登録理由の1つである海岸部の亜熱帯から山頂部の冷温帯まで連続した植生の垂直分布が保存されており、世界遺産地域を車道が通っている唯一の場所です。この車道は通称「西部林道」と呼ばれており、頭上を樹木が覆い茂る緑のトンネルが形成されていて、バスツアー等による観光利用が活発に行われています。

林道周辺の低標高域には、かつて薪炭林として活用されたシイ・カシ類の二次林が広がり、アコウやガジュマルの大木やその樹上に生育するオオタニワタリなど亜熱帯域のダイナミックな自然が見られる他、長年のフィールド研究の成果により、ヤクシマザル及びヤクシカの野生生活を間近で観察することができます。
また、各所には昭和40(1965)年代まで利用されてきた住居跡や炭焼き窯跡などが点在しているため、自然と人との関わりや生活の歴史を垣間見ることもできます。

西部地域を通る林道の脇で、食事をしている複数のヤクザルとヤクシカの写真。お互い干渉することなく、ゆったりと過ごしています。

このため、ガイドツアーによるトレッキング利用や写真撮影等を目的とした入林がみられ、利用者のマナー低下に伴う生態系への悪影響が懸念されていました。

このような状況を受けて、2005(平成17)年に屋久島地区エコツーリズム推進協議会の下部機関として「西部地域の保全・利用作業部会」が設置され、西部地域における保全と利用のあり方について検討が行われ、西部地域は豊富な自然観光資源を有し、生き物同士または、自然と人のつながりを野外で直接観察し、体験し、学ぶことができる最適な場所であり、その利用にあたっては自然環境の保全を前提とした限定的なものであること、加えて利用による影響を常にモニタリングによって監視することが確認され、それに準じた「西部地域保全・利用ルール」が策定されました。

利用実態

  • 林内への立ち入りは、釣り人やガイドツアー利用者、野生動物の生態調査をする研究者など限定的。
  • 1996(平成8)年から2007(平成19)年までの11年間でガイドツアー利用が1事業者から12事業者に増加し、うち6事業者が林内を歩くツアーを実施。
  • エコツアー等で主に利用される地域は、半山及び川原地区であり、特に半山地区では、ガジュマル・アコウの大木や住居跡や炭焼き窯跡など見所が豊富。

近年の動き

  • 屋久島地区エコツーリズム推進協議会に設置された「西部地域の保全・利用作業部会」において、「西部地域保全・利用ルール」を策定。

利用により生じた主な変化・問題

1. 自然環境

  • 野生のヤクシカ、ヤクザルに餌を与える観光客等が少数であるが見られ、生態系への悪影響が懸念される。

2. 利用環境

  • 人と自然が共生してきた歴史を知ることのできる、森林資源から糧を得ていた時代の貴重な文化的資源の持ち帰りなどが問題視されている。
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