屋久島エコツーリズムの体系
エコツーリズムとは
エコツーリズムには様々な定義がありますが、そこに共通するのは「自然を守りながら、自然とふれあい、遊び、学ぶ」観光のあり方であるという視点です。
エコツーリズムの様々な定義
近年は、山、川、海などをフィールドにした様々なツアーがありますが、単純に自然を体験するだけではなく、それぞれの環境を損なうことなく、将来の世代に伝えていくことができるよう、その保全に責任をもち、地域振興・観光振興をもかなえていこうという考え方がエコツーリズムです。
- 「自然を中心として、その土地に存在する生態系を守り、インパクトを最小限にしようとするツアーを実践する運動」(日本旅行業協会(JATA))
- 「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のあり方」(環境省 エコツーリズム推進会議)
- 「その地域の自然環境を保護し、地域住民の生活を高めることにつながる、責任ある旅行」(国際エコツーリズム協会(TIES))
屋久島におけるエコツーリズム
屋久島では、縄文杉や白谷雲水峡などの山岳部だけではなく、川や海でも多くのツアーが行われています。ツアーの担い手となるガイド事業者も200名以上いるとも言われ、国内では有数の自然系ツアーが発達した地域だと言えます。こうした中で屋久島では、「屋久島における固有の自然や文化にふれあう機会の提供」、「地域資源の保全と適正な管理」、「地域振興への貢献」を同時に実現するというエコツーリズムを確立することを目的とし、上屋久町(当時)と屋久町(当時)の両町が中心となり、関係団体16団体が参加した「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」を2004(平成16)年度に設立しました。
これまで同協議会では、「屋久島ガイド登録・認定制度づくり」、「里の自然を活用したツアーの開発」、「西部地域の保全・利用のあり方」について検討を進めてきましたが、2008(平成20)年4月に施行されたエコツーリズム推進法を受けて、2009(平成21)年8月、「屋久島町エコツーリズム推進協議会」として再編し、以降、屋久島町全域でエコツーリズムを推進するための「エコツーリズム推進全体構想」の策定作業を行っています。作業にあたっては、縄文杉や宮之浦岳等利用が集中する山岳部、世界遺産の登録理由の1つでもある海岸部の亜熱帯から山頂部の冷温帯までつながる植生の垂直分布がみられる西部地域、北太平洋一のアカウミガメ上陸数を誇る永田浜などこれらの貴重な自然をいかに守り、利用していくのか、また、里の各集落がもつそれぞれの魅力をいかに島外の方へ伝えるのか等、様々な議論が行われています。
エコツーリズム等に係る動向
- 1972年
- 屋久島の林業のあり方をめぐり、地元有志からなる「屋久島を守る会」の結成
- 1981年
- 屋久杉の保全を方針とする第4次地域施業計画の策定
- 屋久島が生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に登録
- 1985年
- 地元と研究者をつなぐ博物館活動を担う「あこんき塾」立上げ
- 屋久島ウミガメ研究会による永田浜でのウミガメ調査活動開始
- 1986年
- 「屋久杉の里整備事業」の開始(旧屋久町)
→『屋久杉自然館』建設*1987年〜1989年
- 「屋久杉の里整備事業」の開始(旧屋久町)
- 1989年
- 地域のイメージコンセプトとして「スーパーネイチャー屋久島」を打ち出した
「林地活用計画」策定(旧上屋久町)
- 地域のイメージコンセプトとして「スーパーネイチャー屋久島」を打ち出した
- 1992年
- 自然と人との共生をうたった「屋久島環境文化村構想」発表(鹿児島県)
- 1993年
- 「屋久島環境文化財団」設立
- 森林環境整備を推進するための協力金制度の導入(営林署)
- 「屋久島憲章」制定(旧上屋久、屋久両町)
- 日本ではじめての世界自然遺産に登録
- 1994年
- 「屋久島山岳部利用対策協議会」が発足
- 1995年
- 「足で歩く博物館を作る会(足博)」が発足
- 永田ウミガメ連絡協議会による有料のウミガメ観察会開始
- 2000年
- 町道荒川線車両乗入れ規制(期間限定)開始
- 2002年
- YAKUSHIMAマナーガイドの作成
- 島内の関係機関等による「エコツーリズム支援会議」の設置
→『屋久島エコツーリズムの推進のための指針及び提案等』作成
- 2003年
- 「屋久島地区におけるエコツーリズム推進モデル事業」の実施
(環境省)2003年~2005年
- 「屋久島地区におけるエコツーリズム推進モデル事業」の実施
- 2004年
- 「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」発足
- 2005年
- 地元有志中心の任意団体「屋久島まるごと保全協会(YOCA)」設立
- 永田浜がラムサール条約湿地に登録
- 2006年
- 「屋久島ガイド登録制度」が開始
- 2007年
- 上屋久町、屋久町の合併により、屋久島町誕生
- 2008年
- 「屋久島山岳部保全募金」を導入
- 2009年
- 永田浜ウミガメ観察ルール2009」の策定
- 山岳部で携帯トイレ導入開始
- 「屋久島町エコツーリズム推進協議会」が発足
- 「マイバック持参運動及びレジ袋有料化に関する協定」が締結
- 2010年
- 町道荒川線車両乗入れ規制(オンシーズン全期間)が開始
- 「屋久島町エコツーリズム全体構想(素案)」を作成
- 2011年
- 大株歩道、西部地域、永田浜の利用調整を盛り込んだ「屋久島町自然景観資源の利用及び保全に関する条例案」否決
- 2012年
- 屋久島国立公園誕生
- 2016年
- 屋久島生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に口永良部島が拡張登録され、名称が屋久島・口永良部島生物圏保存地域に変更
- 「屋久島公認ガイド制度」が開始
- 「屋久島山岳部利用のあり方検討会」が発足
- 2017年
- 「屋久島山岳部保全利用協議会」が発足
- 「世界自然遺産屋久島山岳部環境保全協力金」を導入
- 2019年
- 「ウミガメ保護利用専門部会」を設置