2050年のニッポンの姿 Ⅱ

沿線地区活性化の社会実験を実施

現在の富山市は、2005年に旧富山市、上新川郡大沢野町、大山町、婦負郡八尾町、婦中町、山田村、細入村の7市町村による合併によって発足しました。新市の全域において、駅やバス停の徒歩圏を「団子」にたとえ、公共交通という「串」でつなぐことによって、新しいまちをつくるというのが、都市計画の骨子になっています。

こうした周辺地区=「団子」の開発事例として注目されるのが、JR高山本線の活性化を目的にした社会実験です。2008年に実験的に新設された婦中鵜坂駅の周辺は、既存の企業団地や住宅団地が整備されていたことから、新駅の設置に合わせて、JR線の利用客のためのパークアンドライド駐車場や駐輪場、駅前広場なども整備されています。富山市が経費を負担してJR線の増発運行を核とした社会実験を行った結果、利用客の増加が見込まれたため、2014年から婦中鵜坂駅は常設駅になりました。富山型のコンパクトシティ施策のモデル的な事例と言えるでしょう。

2008年に実験的に新設されたJR婦中鵜坂駅の周辺。JR線の利用客のためのパークアンドライド駐車場や駐輪場、駅前広場などが整備されている。

2008年に実験的に新設されたJR婦中鵜坂駅の周辺。JR線の利用客のためのパークアンドライド駐車場や駐輪場、駅前広場などが整備されている。

ソフトの充実でにぎわう“まちなか”を演出

富山市は、中心市街地の魅力を高めるため、賑わいの核となる全天候型の多目的広場「グランドプラザ」を2007年にオープンしました。年間を通してイベントなどに利用されており、稼働率は年間平均で82.4%、休日ともなるとほぼ100%になるといいます。フリーマーケットや音楽ステージなどが毎日のように開かれ、市民の交流の場になっています。

中心市街地に設けられた全天候型の多目的広場「グランドプラザ」。イベントが毎日のように開かれ、市民の交流の場になっている。

中心市街地に設けられた全天候型の多目的広場「グランドプラザ」。イベントが毎日のように開かれ、市民の交流の場になっている。

さらに2010年には、地元の野菜や果物などの生鮮食品を集めた「地場もん屋総本店」をオープン、高齢者を中心に多くの利用者を集めています。市街地ではとれたての新鮮野菜が手に入りにくいという住民の声に応えたもので、年間の来店者数は25万人に上るといいます。また、大学生など若者が気軽に集まれる場所として「富山まちなか研究室 MAG.net」を開設。中心市街地の空き店舗を利用したもので、音楽ライブや展示会、就職相談会など様々なイベントに活用されています。

まちなかの移動を容易にし、環境面でも効果を上げているのが自転車市民共同利用システムです。市内19カ所に設置された「ステーション」から、自由に自転車を借りて、任意のステーションに自転車を返すことができる新しいコミュニティサイクルです。利用料金は、最初の30分まで無料、60分までが200円。300円の1日パス、1000円の7日パスのほか、月極め料金も設定しています。登録台数210台のところ年間のべ5万回の利用があるといいます。美しいデザインの自転車ステーションは、まちづくりと連携した富山の新しい風景の一つになっています。

自転車市民共同利用システムでは、どのステーションからでも自由に自転車を借りることができ、どのステーションにでも自転車を返すことができる。

自転車市民共同利用システムでは、どのステーションからでも自由に自転車を借りることができ、どのステーションにでも自転車を返すことができる。

公共交通の整備というハード面から出発した富山市のまちづくりは今、より魅力ある都市を目指し、ソフト面の充実へと広がりを見せています。次々と生み出される新しい施策には、富山市の若い職員たちのアイデアも多く生かされています。未来に向かって変化し続ける富山市に、これからも多くの注目が集まりそうです。

取材協力、資料提供:富山市

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