コンパクトなまちづくりを支える技術とTA

都市のCO2排出を削減する技術

1.エリア・エネルギー・マネジメント技術

エリア・エネルギー・マネジメント(AEM;Area Energy Management)は、ICTを活用したエネルギー管理の技術を、地区・街区(エリア)全体に適用するものです。住宅やオフィス、商業施設や公共施設、病院、学校などをエネルギー・ネットワークでつなぎ、電力のピークカットや非常時の電力融通などを行うことで、エリア全体のエネルギー利用効率を最適化することを目指しています。コンパクトなまちづくりにおいては、都市機能の集積化を進めると中心市街地のエネルギー需要密度が高くなるため、AEM技術の導入が効果的と言われています。

表1 地区・街区単位でのエリア・エネルギー・マネジメントの典型例

技術項目
未利用排熱の有効利用 工場・清掃工場・下水施設など、未利用熱源が利用可能な地域で、排熱を需要家に供給。
大規模集約型需要地における効率的エネルギー需給システム オフィスビル密集地域など、エネルギー需要が多い地域で高効率な分散型エネルギー(例:電気と熱需要に応じたコージェネレーション)を導入し、効率的なエネルギー供給を実現。
住宅地などにおける再生可能エネルギーの積極活用 比較的低密度な住宅地区・街区においても、賦存する再生エネルギーや未利用エネルギーを活用することで系統からエネルギー供給を減らしCO2を削減。
新規開発地区などにおける街区スマート化 再開発などの際に、建物単位のエネルギー制御(BEMS)を導入。

出所:上記区分は、「平成23年度地方公共団体実行計画(区域セサク編)策定マニュアルに関する低炭素化手法(地区・街区関係)の検討業務報告書」(平成24年、三菱総合研究所)に基づく。

現在、「環境未来都市」や「環境モデル都市」などの先進的な環境政策を進める都市や、人口が集中する都市部の再開発エリアなどにおいて、エリア・エネルギー・マネジメントが導入されています。下の表は、代表的な導入例である「柏の葉スマートシティ」と「横浜みなとみらい21地区」について、その概要をまとめたものです。

表2 エリア・エネルギー・マネジメントの事例

技術項目
柏の葉スマートシティ
  • ららぽーと柏の葉、街区(商業施設、ホテル)、大規模太陽光発電施設など、異なる用途の施設間で電力融通を行う。柏の葉スマートセンターで中央管理。
横浜みなとみらい21地区
  • 地域冷暖房の導入、大規模ビル間の電力ピークカットなどによるエネルギーの面的利用や負荷平準化を実施中。
  • 地域エネルギー・マネジメントと大規模ネットワーク。
    資料:
  • 「世界の未来像」をつくる街 柏の葉スマートシティ地域電力制御システム実証事業」(2013、三井不動産株式会社)
  • 横浜市HP(http://www.ymm21.jp/city-info/environmental-measure/global-warming/
  • 「次世代エネルギー・社会システム実証地域提案書」(横浜市)

エリア・エネルギー・マネジメントの概念図

エリア・エネルギー・マネジメントの概念図の図。図の内容は下記に記載。

柏の葉スマートシティの例。ららぽーと柏の葉などの商業施設やホテル、オフィスなどと、大規模太陽光発電施設や蓄電施設などとの間で電力の融通を行っている。

出所:柏の葉スマートシティ ホームページ

エリア・エネルギー・マネジメント技術の将来見通し

現在、地域単位でのエネルギー・マネジメントは、環境先進都市や都心部などにおいて、先行的導入や実証事業を進めている段階にあります。国はここでの実証結果をもとに、2020年代を目標にスマートメーターを全世帯・全事業所へ導入することを目指しています。スマートメーターは、エリア・エネルギー・マネジメントを支える基幹技術であることから、普及がこの目標どおりに進むとすれば、30年後には地域特性に応じたエネルギー源と消費形態の多様な組合せが全国各地で実現していると予想されます。

表3 エリア・エネルギー・マネジメントに関する技術の将来動向

資料等に基づく現状やマイルストーン  マイルストーン等に基づく予想

項目 エリア・エネルギー・マネジメント スマートメーター 建築物
(ビルやマンションなど)
現状
(2016年)
地域単位でのエネルギー・マネジメントは、環境先進都市や都心部等における導入や実証事業の段階    
~2025年
(~10年後)
  [2020年代早期:国目標]スマートメーターを全世帯・全事業所に導入 [2020年の目標]新築公共建築物などでゼロエミッションビルディングを実現
~2035年
(~20年後)
    [2030年の目標]平均的な新築建築物でゼロエミッションビルディングを実現
~2045年
(~30年後)
スマートメーターの完全普及等により、地域特性に応じたエネルギー源と消費形態の多様な組合せが可能に HEMSやエリア・エネルギー・マネジメントの基幹技術としてのスマートメーターが全世帯に普及 ゼロエミッションビルディング普及のトレンドに沿って、ビルやマンションの省エネと創エネが進む
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