コンパクトなまちづくりを支える技術とTA

2.低炭素公共交通システム技術

コンパクトなまちづくりで欠かせないのが、公共交通の整備事業です。自動車への依存を減らすことで、CO2排出量を大幅に削減することが期待できます。代表的な公共交通として、LRT(次世代型路面電車システム)、BRT(バス高速輸送)、ART(次世代都市交通システム)の導入が各地で進められています。これらの技術の概要を表1に示します。

表1 低炭素公共交通システム技術の例

名称 概要
LRT
  • Light Rail Transitの略で「次世代型路面電車システム」と呼ばれる。都市の中心部において専用もしくは分離された軌道に電気駆動の軽量車両を短い連結で走行させるシステム。
  • 整備コストは地盤面の軌道を走行するため、建設コストが他の新交通システムと比較して安価と言われる。
  • 中容量・高速度の輸送機関(都市モノレールなど)と少量・低速度の輸送機関(路線バス、従来型路面電車など)との間の旅客輸送ニーズに対応できる。
BRT
  • Bus Rapid Transit(バス高速輸送)の略。バス専用道路やバスレーンなどの設置、公共交通優先車両システム(PTPS)の導入などにより、一般道路において通常の路線バスよりも高速かつ定時制を確保するシステム。
ART
  • Advanced Rapid Transit(次世代都市交通システム)の略。BRTをベースとしてITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)による先読み情報を活用した自動走行システム。
  • 2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの実用化(準自動走行)、2020年代後半以降の市場化(完全自動走行システム)を予定。
コミュニティバス/デマンド交通
  • 地方公共団体などが、交通空白地域・不便地域の解消、地域活性化などを目的として、自らが主体的に運行を確保するバス。
  • 循環系統による運用、バス停間隔の短縮、運行速度の均一(例:15分間隔)、運賃のワンコイン化など、工夫がなされている例が多い。運営主体は、地方公共団体単独、地域住民や任意団体などさまざまである。
  • 定時定路線型ではなく予約などに基づき運行するものはデマンド交通と呼ばれる。

LRTの特徴としては、中容量・高速度の輸送機関(都市モノレールなど)と、少量・低速度の輸送機関(路線バス、従来型路面電車など)との間を埋める旅客輸送ニーズに対応できることが挙げられます。また、自動車交通量を抑制できることから、大きなCO2削減効果が期待できます。BRTの特徴としては、従来のバスとは違い、専用道路やバスレーンなどを走行することで定時制を確保することが挙げられます。

低炭素公共交通システム技術の将来見通し

公共交通のLRTやBRTについては、今後、人口減少や高齢化などを背景に、コンパクトシティ政策を強く打ち出す地方自治体が増えてくれば、導入が進むと予想されます。

表2 低炭素公共交通システム技術の将来動向

資料等に基づく現状やマイルストーンを示す、薄い緑色 資料等に基づく現状やマイルストーン マイルストーン等に基づく予想を示す、薄い緑色 マイルストーン等に基づく予想

項目 LRT
(次世代型路面電車システム)
BRT
(バス高速輸送)
ART
(次世代都市交通システム)
現状
(2016年)
全国軌道事業者19社のうち15社が低床式車両を導入(うちLRTは富山のみ)
宇都宮市、静岡市などで、ゼロからの新規導入を目指す動きがある
全国で16事例 国内導入例はなく市場化に向けた国家プロジェクト(SIP)が進行中
民間主導の動きとして、近年、GoogleなどのICT関連の企業やトヨタ、日産、GM、BMWなどの自動車メーカーが自動運転の開発に着手
~2025年
(~10年後)
    [2020年:SIP]東京五輪での実用化(準自動走行)
~2035年
(~20年後)
[2030年:国目標]530万台(全世帯の1割)   [2020年代後半~:SIP]完全自動走行システムの市場化
~2045年
(~30年後)
道路構造などの問題により新規導入が進まない現状はあるが、政策が色濃く反映される社会情勢では導入が進む可能性あり 道路構造などの問題により新規導入が進まない現状はあるが、政策が色濃く反映される社会情勢では導入が進む可能性あり 自動運転は、高速道路やルートが決まったバス等では実現している可能性が高い。ただし一般道での普及は不確実。民間イノベーションにより早まる可能性もあり
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