③ 遺伝性影響
次に、遺伝性影響に関するこれまでの研究結果を見てみましょう。
人間では、両親の放射線被ばくが子孫の遺伝病を増加させるという証拠は見つかっていません。
原爆被爆二世の健康影響調査結果
原爆被爆二世の健康影響調査で、重い出生時障害、遺伝子の突然変異や染色体異常、がん発生率、がんやそのほかの疾患による死亡率等について調べられていますが、どれも被ばくしなかった性別・年齢・居住地等が同じ属性の集団(対照群)との差は認められていません。
原爆被爆二世の健康影響調査結果の詳細は令和5年度版 上巻109ページを参照
その他の被爆二世疫学調査
20歳までに発症した悪性腫瘍による死亡
41,066名の追跡調査の結果、親の生殖線量(平均0.435Sv)と死亡との関連はありませんでした。
(出典:Y. Yoshimoto et al.: Am J Hum Genet 46: 1041-1052, 1990.より作成)
がんの罹患率(1958年ー1997年)
40,487名の追跡調査の結果、575件の固形腫瘍、68件の血液腫瘍が発症していましたが、親の線量との関連はありませんでした。(調査継続中)
(出典:S. Izumi et al.: Br J Cancer 89: 1709-13, 2003.より作成)
がんによる死亡
1946年-2009年の観察期間で、75,327名の追跡調査の結果、1,246件のがんによる死亡が発生していましたが、親の線量との関連はありませんでした。
(出典:E. Grant et al.: Lancet Oncol 16: 1316-23, 2015.より作成)
生活習慣病有病率(2002年ー2006年)
約12,000名の臨床横断調査の結果、生活習慣病と親の線量との関連はありませんでした。(調査継続中)
(出典:S. Fujiwara et al.: Radiat Res 170: 451-7, 2008.より作成)