第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門

アマモ場を保全し、水産生物増殖を担う魚礁を活用した、豊かな海づくり

志田内海株式会社

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 企業部門

アマモ場を保全し、水産生物増殖を担う魚礁を活用した、豊かな海づくり

志田内海株式会社

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞ナマコ・アマモ育成礁 竜宮礁

青森県青森市にある建設会社 志田内海株式会社が開発したコンクリート製の魚礁「竜宮礁(りゅうぐうしょう)」は、減少する海草アマモを保護しながら漁業操業を行うことを目的としています。青森県陸奥湾を中心に4万基以上が設置され、人工的に作られたアマモ場は、ナマコなど多くの魚の生息地となっています。同社は環境保全と漁業の活性化に寄与し、ローカルSDGsの牽引役となっています。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

陸奥湾のアマモ場を守り、水産資源を増やす竜宮礁プロジェクト!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞アマモ

本州最北端の青森県陸奥湾は、津軽半島と下北半島に囲まれた穏やかな海のため、古くからホタテ養殖などが行われる豊かな漁場として知られています。その水産資源の根幹をなすものにアマモが群生する「アマモ場」が挙げられます。アマモは浅い海底に生息し、小魚の隠れ場や産卵地として重要であり、「海のゆりかご」とも称されています。また、アマモ場は海の浄化や酸素の生成にも寄与しています。しかし、全国の海でアマモ場が減少しており、陸奥湾も例外ではありません。

陸奥湾沿岸に位置する青森市を拠点とする志田内海は、2020年に志田建設と内海工業の合併によって設立されたローカルゼネコン。主な業務は建築工事、土木工事、港湾・漁港の砕石事業などです。

そんな地場企業が代表取締役会長の志田 崇(しだ たかし)氏の発案で、陸奥湾の漁業操業と減少するアマモ保護を両立させる事業に乗り出しました。それが、コンクリート製のナマコ・アマモ育成礁「竜宮礁」のプロジェクトです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞陸奥湾に設置された竜宮礁

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞外海の大型竜宮

竜宮礁は青森県の公共事業として陸奥湾に設置され、これまでに4万基以上を販売。また、厳しい波浪に耐えられるよう大型化を図り、日本海、津軽海峡、新潟県佐渡市などへの導入も進んでいます。この志田内海の取組は、減少しているアマモ場を回復させることによって、豊かな水産資源を守り、持続可能な環境事業を実施しているのです。

活動のきっかけは?

陸奥湾のアマモ場保護とナマコ漁を両立させる事業を推進!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞岐阜市 アマモ場のモニタリング調査に同行取材
環境省野杁 拓専門員 志田崇氏 グッドライアワード森摂実行委員

今回、グッドライフアワード実行委員で株式会社オルタナ代表取締役社長・オルタナ 編集長で、武蔵野大学大学院環境学研究科 客員教授の森摂氏とともに、志田内海のある青森市を訪れ、志田内海株式会社の志田崇会長を取材しました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞インタビューを受ける志田崇会長

まず、志田氏に環境保全への取組のきっかけを聞くと、「宮城県の建設会社で働いていた私は、2005年に地元に戻り、志田建設を引き継ぐことになりました。地元漁師や研究者と話す中で、アマモ場が減少していることを知り、陸奥湾の水産資源に危機感を抱いたのです」と語ってくれました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞陸奥湾のアマモ4種

陸奥湾には、アマモ、スゲアマモ、コアマモ、タチアマモという4種類のアマモが生息し、その中のタチアマモは7mもの高さに成長することがわかっています。アマモ場には、メバル、カレイ、マダイ、ナマコなど、さまざまな魚類の生息地となり、魚の卵やホタテの稚貝などが葉に付着します。アマモ場は青森のおいしい食材を育む役割を果たしているのです。このアマモ場の面積と漁獲量には深い関係があると言われ、陸奥湾は、6000ha(ヘクタール)以上(1990年環境省)で日本一の面積を誇っています。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞漁船に乗り、アマモ場の調査へ

しかし、陸奥湾では日本で最も広いアマモ場の減少も起きています。これは埋め立てや湾岸工事などでアマモが生育しやすい場所が減少したことが大きな原因です。さらに、ナマコの桁曳き操業がナマコの漁獲と同時にアマモ場を消失させる要因ともなっています。桁曳き操業とは、海底で使用される頑丈な桁を曳くことで、ホタテやエビなどを漁獲する方法。桁網には爪のついた枠があり、これを使って海底の魚介類をかき起こして漁獲します。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞ナマコ・アマモ育成礁 竜宮礁

そこで志田氏は、2007年から陸奥湾のアマモ場を保護し、ナマコを増やすためにナマコ・アマモ育成礁を考案し、開発に着手しました。そして、完成したのが直径1.5m、高さ0.3m、参考重量387㎏の頑丈なコンクリート製の人工礁・竜宮礁です。中央の穴の中にスゲアマモが移植されるので、桁曳き操業の邪魔をせず、根と地下茎を保護でき、ナマコの育成場になります。また、波の抵抗を受けにくいという特徴もあります。

2009年、志田氏は竜宮礁を製品化するために『青森県の藻場環境を創える会』同志とともに合同会社epcoを設立して実証実験をスタート。翌年には特許を取得し、2013年からは青森県水産環境整備事業として採用されました。そして、2020年4月までに陸奥湾に4万基以上の竜宮礁が設営されたのです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞海中調査を行う志田氏

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞アマモの生育をチェック

その結果、環境省や青森県の調査によると、竜宮礁を設置により減少していたアマモ場の面積が回復していることがわかりました。また、海中でのモニタリング調査では、アマモの保護だけでなく、ナマコや多くの魚の生息も確認されています。さらに、竜宮礁を大型化し、日本海や津軽海峡、新潟県佐渡市など、外海への導入も行われるようになっています。

その他、 アマモの種苗生産と移植を漁業者や水産総合研究所、水族館などと協働して行い、地元小学生や高校生などを対象にしたアマモの海洋プログラムも実施しています。

成功のポイントは?

プロジェクト成功の鍵は、
地元の人々の協力と漁師からの太鼓判!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞アマモ場の調査を終えた志田氏と熊谷浩氏

今回の取材には、漁師兼ダイバーの熊谷浩氏にもご協力いただきました。志田氏は「当初、アマモ場の状態を知るため、海洋調査会社に調査を依頼したとき、そこでダイバーとして働いていたのが熊谷さんです。現在もアマモ場の潜水調査を一緒に行っています」と長年の協働を教えてくれました。また、熊谷氏によると、「桁網に爪のついた桁曳操業でナマコ漁をすると、大量のアマモを引っかいて網に入ってきます。船上では、その中からナマコを探す作業です。でも、ドーム型の竜宮礁に植えられたアマモは網に引っかからないのです」と実際に効果があることを説明してくれました。つまり、竜宮礁の成功は、地元漁師や漁協など多くの人々の協力が不可欠だったのです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞アマモ場に生息するナマコ

そして、なぜナマコにこだわるのかというと、「青森県の漁業において、ホタテとスルメイカに次いでナマコの漁獲金額が大きいのです。ナマコは青森県にとって大事な水産資源。これを失ってはいけないという地元愛がありました」と志田氏は笑顔を見せました。 また、志田氏は、実証実験で得られた結果をもとに論文を仕上げ、これによって県の水産環境整備事業として承認され、公共事業として取り扱われることになりました。また、最近になって弘前大学大学院で学位を取得し、自らの専門知識を磨いています。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞森実行委員 熊谷氏 志田氏

グッドライフアワード実行委員の森摂氏は、志田内海の取組について、「竜宮礁は、日本の海の家のような存在であり、海の生物多様性の指標になることを期待しています。今後は東京湾にもぜひ設営してほしい」と述べています。

今後の展望

プロジェクトが目指している事、今後やりたい事

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞環境プロジェクトの構想を語る志田氏

志田内海では、サスティナブル事業部を設立し、外海や洋上風力発電所の周辺に竜宮礁を設置し、アマモ場や海藻の藻場を作って水産資源を増やしたいと計画しています。そして志田氏は、「洋上風力発電所エリアや全国の沿岸部で、生態系の豊かさを実感できる海の再生・ブルーカーボンによる脱炭素化を目指したい」と夢を語ってくれました。

第10回 グッドライフアワード

懐かしい未来を里山から つくる「里の家」 ~風の子、海の子、 里山体験~

環境大臣賞 最優秀賞

懐かしい未来を里山からつくる「里の家」~風の子、海の子、里山体験~

一般社団法人 里の家

再生可能エネルギーの普及と地域のエネルギーによる収益を地域に還元、SDGs未来都市の創造!

環境大臣賞 優秀賞

再生可能エネルギーの普及と地域のエネルギーによる収益を地域に還元、SDGs未来都市の創造!

一般社団法人 市民エネルギー生駒

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」につながった生活クラブと庄内地域のローカルSDGsプロジェクト

環境大臣賞 優秀賞

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」につながった 生活クラブと庄内地域のローカルSDGsプロジェクト

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

みぞのくちノクティ「みんなで地球をまもろう!」~一人ひとりができることを考え行動しよう

環境大臣賞 優秀賞

みぞのくちノクティ「みんなで地球をまもろう!」~一人ひとりができることを考え行動しよう

みぞのくち新都市株式会社

地域の自治体や学校と共に100万人のエコな子どもたちを育み続ける 環境・SDGs教育情報紙「エコチル」事業

環境大臣賞 企業部門

地域の自治体や学校と共に100万人のエコな子どもたちを育み続ける環境・SDGs教育情報紙「エコチル」事業

株式会社アドバコム

7ヶ月で200万倍に増殖する侵略的外来水草をバイオエタノールに~燃やすべきか飲むべきか、それが問題だ

環境大臣賞 企業部門

7ヶ月で200万倍に増殖する侵略的外来水草をバイオエタノールに~燃やすべきか飲むべきか、それが問題だ

株式会社サンウエスパ

アマモ場を保全し、水産生物増殖を担う魚礁を活用した、豊かな海づくり

環境大臣賞 企業部門

アマモ場を保全し、水産生物増殖を担う魚礁を活用した、豊かな海づくり

志田内海株式会社

「ゼロカーボンタウン能勢」の実現に向けて~地域の高校生と共に推進するまちづくり~

環境大臣賞 学校部門

「ゼロカーボンタウン能勢」の実現に向けて~地域の高校生と共に推進するまちづくり~

大阪府能勢町

中津川 THE SOLAR BUDOKAN(中津川 ザ ソーラー ブドーカン)

環境大臣賞 NPO・任意団体部門

中津川 THE SOLAR BUDOKAN(中津川 ザ ソーラー ブドーカン)

中津川 THE SOLAR BUDOKAN実行委員会

人生100年時代!! 森・人・地域経済を活性化する「グッドウッドプロジェクト」

環境大臣賞 地域コミュニティ部門

人生100年時代!! 森・人・地域経済を活性化する「グッドウッドプロジェクト」

一般社団法人 ゴジョる 釜石支店

臼杵観光ナビ(青の洞門 禅海和尚のように)

環境大臣賞 個人部門

臼杵観光ナビ(青の洞門 禅海和尚のように)

中野重二

第10回グッドライフアワード 受賞者一覧