第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

みぞのくちノクティ「みんなで地球をまもろう!」 ~一人ひとりができることを考え行動しよう~

みぞのくち新都市株式会社

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

みぞのくちノクティ「みんなで地球をまもろう!」
~一人ひとりができることを考え行動しよう~

みぞのくち新都市株式会社

みぞのくちノクティ ごみ保管施設 エコファクトリー
神奈川県川崎市溝口の駅前にある商業施設「ノクティ」の運営管理を業務とする、みぞのくち新都市株式会社は、各テナントと共にごみの分別を徹底的に行っています。そして、計量器で排出されるごみの種類・量をデータ管理して焼却するごみを減量化するなどのリサイクルを推進。さらに、ごみの資源化による収益は各テナントにすべて還元するという先進的な取組が高く評価され、環境大臣賞 優秀賞を受賞しました。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

「みんなで地球をまもろう!」を合言葉に商業施設のリサイクルを推進!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞川崎市 溝口駅前 商業施設ノクティ

神奈川県川崎市の溝口駅前にある商業施設「ノクティ」は、マルイファミリー溝口と専門店からなる商業施設。1997年の開業で現在1日に約6万人が訪れるといいます。まちづくりの発展と地域貢献を目的に、ノクティの運営管理・デベロッパー事業を展開している、みぞのくち新都市株式会社は、各テナントと共に「みんなで地球をまもろう!」というテーマを設定して環境問題への取組を進めています。 そのテーマは、①地球温暖化(電力使用量)、②ごみ(リサイクル率)、③生物多様性(屋上利用)という3つの目標が柱です。

ごみを分別するサポート人員を配置し、分別を徹底するなどして、ごみ処理運用を改善。また、暗いごみ置き場というイメージを払拭するため、数々のアイデアが導入された「エコファクトリー」という、ごみ保管施設を2019年に稼働させました。

そして、計量器を利用して約300店舗のテナントから排出されるごみの種類・量を把握するデータ管理を行い、焼却するごみを減量化してリサイクルを推進し、ごみの資源化による収益は各テナントにすべて還元しているそうです。

その結果、リサイクル率は数年で約2倍に向上。また、省エネ化しながら再エネを導入することで再エネコストを吸収しながら総コストを低減しました。さらに、屋上を緑化リニューアルすることで地域との絆づくり・交流に役立っています。

ノクティは、「再エネ100%にすると電力料金が増加する」などという懸念を払拭し、社会的課題の解決と収益性が商業施設でも両立できることを証明したのです。

どんなきっかけ?

環境対策に後れをとっていた商業施設が力を合わせて、一歩を踏み出す!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞ノクティ エコファクトリー 取材・視察

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞竹ケ原啓介実行委員
環境省地域政策課加藤久乃係長
谷中修吾総合プロデューサー

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞みぞのくち新都市株式会社
渡辺博子氏 渡辺雅彦氏 齊藤和宏氏

今回、グッドライフアワード実行委員で、㈱日本政策投資銀行 設備投資研究所 エグゼクティブフェローの竹ケ原啓介氏、総合プロデューサーでビジネス・ブレイクスルー大学経営学部教授の谷中修吾氏、環境省の加藤久乃係長と共に、環境大臣賞優秀賞を受賞した商業施設ノクティの取組を視察取材しました。

対応してくれたのは、みぞのくち新都市の取締役管理部長齊藤和宏さん、ノクティ管理部の渡辺博子さん 渡辺雅彦さんのお3方で

まず、環境への取組のきっかけとなったのは、ノクティが2017年度に川崎市内の商業施設の中で、ごみのリサイクル率がワースト1になってしまったことです。開業以来、環境問題には率先して取組んできたものの、これを契機として、力を合わせ、知恵を絞って環境問題に取組んでいくことに舵を切ったそうです。

また、定期的に行っているお客さんへのアンケートで「環境」に関して質問したところ、 地球温暖化などへの関心がとても高いという結果が出て、地元の方々からも環境への取組について背中を押してもらった形となったということでした。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞みぞのくち新都市 齊藤和宏氏

しかし、大きな商業施設が何をすればリサイクル率をあげられるのか?掛け声だけでは結果がともないません。当時を振り返ってプロジェクトを立ち上げた管理部長の齊藤氏は、「環境問題に関して我々は素人ですから、“教えてください作戦”を実行しました。同業他社さんの現場を見せてもらったり、教えていただいたり、テナントや業者さんとの契約内容まで助言をいただきました。ライバル会社ですが、ごみの処理やリサイクルについて皆さん快く協力して頂いたのです。」と笑顔で語ってくれました。

具体的には、2022年度までの中期計画として取組を進めた結果、2021年度のCO2排出量は2013年度に比べ 約9割減(△9,000t)となり、1年前倒しで目標を達成することができました。

成功のポイントは?

空港をイメージした「エコファクトリー」がごみに対する意識を変えた!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞ノクティ ごみ保管施設 エコファクトリー

ノクティの環境対策で最も象徴的なのは、ごみ保管施設のエコファクトリーです。 ごみ置き場といえば、「暗い」「臭い」「怖い」「行きたくない」というイメージがありますが、それを大胆な形で刷新したのです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞エコファクトリー 通路

そのコンセプトの元となったのは「空港」。空港では、はじめて訪れた人でも分かる案内板や壁には楽しいイラストなどが施されていますが、それらをノクティのごみ保管施設に導入したのです。川崎市在住の女性のイラストレーターと共同作業で壁にイラストを多用し、案内表示などを作成。売り場と同じBGMが流れ、売り場と同じ照度の照明で明るくし、入ったばかりのアルバイトの方でもひと目でわかりやすいレイアウトと導線を工夫するなど、誰もが行きたくなるようなごみ保管施設を目指しました。すると、テナント・スタッフなどの環境意識も大きく変わっていったそうです。 また、新設した生ごみ分別室は夏場でも悪臭が漂わない工夫を施し、排出された生ごみについては、メタン発酵による電気化などエネルギーの再利用などを進めています。

そして、ごみ処理の運用方法も大きく変えました。リサイクル率を向上させるためには、とにかく分別ごみを徹底させることが近道だと川崎市や同業他社へのヒアリングで分かったからです

齊藤氏は、「商業施設ですから、段ボールなど資源ごみの多いテナントさん、プラごみの多いテナントさんなど、もうバラバラです。その中で、食品ごみ・生ごみには、水分が7、8割と言われています。実は水まで捨てていたのです。水分を取り除いて計ってみると2割ほどの量になり、水切りが大事だということが分かりました。」と振り返り、さらに「それまで使用していた大型貯留機を撤去し、各テナントに19品目に細かく分けられた分別ごみを出してもらうことにしました。大型貯留機とは、ごみを圧縮して保管する設備で更新には6000万円がかかっていたのですが、その費用も削減できました。」と当時の試行錯誤の苦労を語ってくれました。

また、テナント・スタッフとの勉強会を開き、効率的なごみのリサイクルを学んでいく中で、リサイクルに積極的なごみ処理業者と新たに契約。その業者のスタッフがごみのことを「お荷物」と呼ぶことに感銘を受けたそうです。齊藤氏は「そのスタッフさん達には、ごみは資源だという意識が徹底されていたのです。」と語ってくれました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞全体空調機51台のインバータ化(環境省補助金利用)

CO2排出量の9割が電力使用によるため、地球温暖化対策には電力使用量の削減が不可欠です。ノクティでは電力使用量の約半分は空調で使用するので、空調を中心とした動力系の使用量を減らす必要があります。

そこで、環境省の補助金を利用しながら投資コストを抑えた上で、全体空調をインバータ化し、個別空調の更新をすることで使用量を削減することにしたのです。 夏場の設定温度を高めに設定して省エネするわけではなく、インバータ化により自動制御しながらお客さまにとって快適な環境を維持しつつ省エネが可能となりました。 また、照明はLED化するなど照明器具自体が環境に配慮したものになっています。

また、電力使用量の削減には限界があるため、再生可能エネルギーへの転換が重要になってきます。核となる店舗のマルイファミリー溝口は2020年度に再生可能エネルギー100%を実現。ノクティ全体についても、2021年度から再生可能エネルギー100%利用を実現しています。これにより、施設全体のCO2排出量は、2013年度比で約9割減となりました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞みぞのくち新都市 齊藤和宏氏

齊藤氏は、「2017年度のリサイクル率は36%で川崎市内ワースト1でしたが、2018年度に44%、2021年度には83%に向上。わずか数年で44%から83%と2倍に向上したことは私たちも正直驚きました。」と語り、「一人ひとりの環境意識の高さと、みんなでできることを考え行動したことがリサイクル率向上の大きな要因の一つと考えています。」と胸を張りました。

ノクティでは、ゴミ処理運用を刷新して分別を徹底することで、ごみの減量化・リサイクル化が進みました。また、減量化によりごみ処理費が減り、さらには設備費も減り、みんながWin‐Winの関係となっているのです。

レポート!

本当にごみ処理施設?ノクティのエコファクトリーを視察!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞グッドライフアワード一行のエコファクトリー視察

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞空港のような導線表示

グッドライフアワード一行は、みぞのくち新都市の皆さんの案内で、ノクティのごみ保管施設エコファクトリーを視察。その明るい雰囲気や楽しいイメージに驚きを隠せませんでした。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞川崎市在住のイラストレーターが描いた壁画

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞はじめて来た人でも分かるイラストの案内板

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞分別ごみが何に生まれ変わるかを解説

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞生ごみがエネルギーに変わる

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞19品目に分けられているごみの置き場

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞説明を受けながらの視察

ノクティのリサイクル活動の中で、ごみ分別を徹底すると処理設備がスリム化できることが分かったそうです。設備にはランニングコストがかかり、メンテナンスが必要となりますが、細かいごみまで分別をすることで、その費用や手間も少なくて済むのです。

また、それぞれごみを計量することで日々のデータが取れ、ごみを多く出したテナントには、その分だけ費用の負担をお願いします。ですから、テナント側もなるべくごみを出さないよう努力するというインセンティブが働いているのです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

AIでごみを自動識別する装置を施策し実験中

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞ごみの識別・計量中

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞識別・計量後のシール

現在、エコファクトリーでは、ごみをAIで自動識別し計量できる装置を導入して実験中です。実生活でも燃えるごみかプラごみかなど分別に悩むことは多いと思いますが、この装置では持ち込まれたごみを画像分析し、AIによってごみの種類を識別、同時に計量もできるのです。識別後には、ごみの種類と重さが明記されたシールが張られます。

このエコファクトリーは企業などの視察も多く、毎年夏休みには、自由研究週間として「親子で楽しむエコファクトリー 見学ツアー」を開催しています。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞グッドライフアワード実行委員 竹ケ原啓介氏

エコファクトリーの視察を終えたグッドライフアワードの実行委員・竹ケ原氏は、現場を見て、「分別のAI化の取組が素晴らしい」と実感されていました。また、テナントを巻き込んだごみの分別化・リサイクル率の向上は、全国の商業施設に広がる可能性がある、とおっしゃっていました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞グッドライフアワード総合プロデューサー谷中修吾

グッドライフアワード総合プロデューサー谷中氏は、「川崎市の商業施設でリサイクル率ワースト1からの大逆転の背景には、やるなら徹底的にやる。中途半端にやらない。やり切って失敗するなら仕方ないという本気スタンスと同時に、仕事としてではなく、自分たちが楽しみながらやるという遊びのスタンスがあったことが成功要因だと思いました。」と語り、「空港をイメージしてデザインされた分かりやすい表示、クリエイティビティあふれるアート空間、商業施設と同じく流すBGM、臭いが全く気にならない空調と物流管理など、スタンフォード大学のデザイン研究所のエッセンスに近しいものを感じました。」ということでした。

今後の展望

プロジェクトが目指している事、今後やりたい事

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞小学生のアイデアで誕生したノクティ1Fのビオトープ

今後の展望について齊藤氏に尋ねたところ、「ノクティは実験台で構わないというスタンスです。率先して行動を起こしていき、それを真似していただきたいですし、そうすることでノクティにとどまらず、日本全体に環境への取組が拡がっていけばよいと考えています。 」とのお答え。

溝口周辺地域で脱炭素に取り組んでいる事業者・団体等が集まり、「脱炭素アクションみぞのくち推進会議」が2021年に発足。「脱炭素アクションみぞのくち」などの取組が国に評価され、川崎市は「脱炭素先行地域」に選定されました。

齊藤氏は、「ノクティは会員事業者として、地域社会・地元事業者・ 団体・行政と一体となった取組みで、誰もがしあわせを感じられるまちづくりをめざしていきます。 また、その取組が全国を牽引するものとなるよう、すべての関係者と力を合わせ進めてまいりたいと思います。」と環境対策の未来像を力強く語ってくれました。

第10回 グッドライフアワード

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