第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」に
つながった生活クラブと庄内地域の
ローカルSDGsプロジェクト

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

受賞者紹介

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」につながった
生活クラブと庄内地域のローカルSDGsプロジェクト

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

庄内の移住・交流拠点TOCHiTO(とちと)
生活クラブと山形県庄内地域は、約50年前から消費者と生産者が交流を深めてきました。その深い繋がりの中で、庄内の水田の維持と飼料自給の拡大を図る飼料用米の取組や、太陽光発電所の建設、生産者による地域生協づくり、さらに単なる移住定住でない「参加する暮らし」による持続可能な地域づくりを進めています。また、2023年6月にはローカルSDGsの推進事業の集大成となる移住者の住まいと地域の交流拠点「TOCHiTO(とちと)」をオープンしました。

*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな活動?

生産者と消費者が垣根を超えたコラボレーション!!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞遊佐町の水田

生活クラブは、1968年に東京都世田谷区で誕生した生協(生活協同組合)で、現在約42万人の組合員がいます。ほとんどの消費材(商品)を組合員と生産者の協力によって開発し、宅配事業と店舗事業を展開しています。元々は食品の問題を解決しようとはじまった生活クラブでしたが、50年以上の間にエネルギーや福祉の分野にも活動を広げています。

庄内は庄内平野を中心とした山形県の日本海沿岸地域です。山と海に囲まれた自然豊かな地域で、日本有数の穀倉地帯として知られています。主要都市は鶴岡市と酒田市、他にも三川町、庄内町、遊佐町があり、総人口は約32万人です。

今回、優秀賞を受賞したプロジェクトは、庄内地域の生産者とのパートナーシップ形成と循環型農業を共に築くことから始まりました。食べものを作ることと消費することは切り離せない関係であり、長年、組合員が「生産する消費者になろう!」という信念を持ち続けてきたことの延長線上に取組が位置しています。

その関係がさらに発展して、エネルギー自給の問題も一緒に取り組むことになります。 遊佐町に「庄内・遊佐太陽光発電所」を建設し、2019年1月に営業運転を開始しました。 建設にあたっては、庄内の提携生産者や生活クラブ組合員らが出資し、発電した電気は組合員へ供給されています。そして、売電益も地域に還元するため、生活クラブ連合会、生協庄内親生会、酒田市、遊佐町、庄内自然エネルギーの5者が参加して、「庄内自然エネルギー基金」を設立、地域の活性化のために使われます。

一方、日本の多くの地域で問題となっている人口減少と高齢化。庄内でもこの課題に直面しています。このため、生活クラブの組合員に生活の選択肢として庄内の酒田市への移住を提案し、地域づくりに参加するプロジェクトが開始されました。2023年6月は、移住・交流拠点「TOCHiTO(とちと)」がオープン。組合員を中心に16世帯が首都圏から移住し、新しい生活を始めています。

活動のきっかけは?

生活クラブと庄内地域が推進する
食・農業・エネルギー・移住のプロジェクト!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞遊佐町の農業

今回、グッドライフアワード実行委員で(株)日本政策投資銀行 設備投資研究所長の竹ケ原啓介氏の同行のもと、山形県酒田市を訪れ、生活クラブと庄内の人々が取り組んでいるローカルSDGsの現場を取材しました。 まずは、生活クラブ連合会会長の村上彰一氏とTOCHiTOプロジェクト担当の生活クラブ共済連 小泉奉子氏に、取組のきっかけについてお話を伺いました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞生活クラブ共済連 小泉奉子氏、生活クラブ連合会会長  村上彰一氏

庄内地域と生活クラブの関係は約50年に及びます。それは、お米の産直と、当時から酒田市で畜産・食肉加工業を営んでいた平田牧場との無添加ポークウインナーの共同開発から始まりました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞生活クラブ連合会 村上会長

村上会長は、「50年前、平田牧場さんが開発した無添加ウインナーを東京で供給することを生活クラブ組合員の有志が実行したのですが、配達されたウインナーは物流の不手際もあって腐ってしまいました。しかし、腐るということは本当に無添加であることが証明され、安心安全な食品をいかに消費者に届けるかという努力がはじまったのです」と、当時の伝説エピソードを披露してくれました。

お米に関しては、生活クラブと遊佐町の生産者が、米が国によって管理されていた時代、自分たちが満足できる米を作るために提携を結びます。また、生産者は減反政策によって米を作る人が減っていくことにも悩んでいました。1973年に両者の思いが一致し、産地指定の米の共同購入がスタート、そして、その後品種や価格、利用する人の拡大などを双方で決めていく「共同開発米事業」をスタートさせたのです。

共同開発米事業は、農薬を減らした美味しいお米作りを目指して始まり、初の開発米「庄内遊YOU米」が1988年に生産されました。その後、長野・栃木・宮城でも共同開発米が生産され、地域との連携が強まりました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞生活クラブ共済連 小泉奉子氏

生活クラブ共済連の小泉氏は、「赤いウインナーしかなかった時代、無添加ウインナーは特別な存在でした。庄内のお米も他と比べられないほど美味しいです。だから全国の組合員からの支持も続いています」と誇らしげに語ってくれました。

生活クラブの養豚事業は、アメリカから遺伝子組み換えされていない飼料を輸入し、庄内で収穫された飼料米も与えて育てています。

一方、自然エネルギーや移住のプロジェクトは、地域の課題がきっかけでした。村上会長は、「数年前から、生産者と消費者の関係だけでなく、両者で高齢化や人口減少などの課題が出てきました。そこで、自然エネルギーと移住のプロジェクトがはじまったのです。そこには、地域との信頼関係が必要です。遊佐町とは、50年の付き合いがありました。食があり太陽光があり、それに福祉という流れがちょうど重なり合ったのだと思います」というお答えでした。

成功のポイントは?

庄内地域で50年にわたる信頼関係を築き上げた!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞生活クラブ 庄内交流会

生活クラブが庄内地域でローカルSDGsを成功させたのは、なんといっても50年にわたる地元の人々との信頼関係です。また、組合員や生産者、地元民、農協、行政など地域全体としてのやる気がうまくかみ合あったことも大きかったそうです。 その背景には、毎年開催される庄内交流会があります。全国から組合員約100人が参加し、2023年には50回目を迎えました。この交流会のおかげで、庄内地域を「食のふるさと」という意識を持つ組合員が増え、関係人口を生み出していったのです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞TOCHiTO記念式典であいさつをする村上会長

さらに村上会長は成功の秘訣について、「農業においては、一部の優れた生産者と直接取引するのではなく、農協を含めた地域全体との関係を重視しています。当然、行政の協力も欠かせません」と言い切ります。

酒田市にも生活クラブの生産者は多くいますが、自治体としての市との直接的なつながりは薄かったそうです。食(Food)、環境(Energy)、福祉(Care)を庄内地域で自給し、都市と連携しながら持続可能な地域づくりをめざす「庄内FEC自給ネットワーク構想」の推進を、酒田市の「生涯活躍のまち基本計画」に基づく事業としてともに進めていく中で関係を深めてきました。

そして、グッドライフアワードの受賞については、「環境問題やSDGsに興味を持つ人々に生活クラブのことを知ってもらえたことが嬉しかったです。これからはそんな皆さんと協力して何かできることを考えていきたい。一緒にローカルSDGsを推進していきたいと思います」と笑顔を見せました。

レポート!

生活クラブと庄内の人々との絆で育んだ
SDGsプロジェクト!

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞遊佐町 パプリカ栽培

まず訪れたのは、国産パプリカのハウス栽培です。 庄内地域の遊佐町では、JA庄内みどり(庄内みどり農業協同組合)の後押しのもと、日本では珍しい国産のパプリカを栽培しています。このパプリカは肉厚でみずみずしく甘みがあります。また、無加温、土耕栽培による環境保全型農業を早くから実践し、産地化を進めてきました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 パプリカ

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞 パプリカ青年隊

減反政策により米の代わりにつくる作物を探していたこともあり、パプリカ栽培をはじめました。現在遊佐町では、5ヘクタールの敷地でパプリカを栽培しており、その収穫量の約3割を生活クラブが購入。生活クラブが一定量を買い入れてくれることにより、パプリカ農家の数が増えたそうです。また、同町ではパプリカ農家が集まり、国産パプリカの魅力を広める「パプリカ青年隊」を結成しています。

続いて、遊佐町にある共同開発米の田んぼを視察しました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞共同開発米の田んぼ

遊佐町の共同開発米部会会長である今野修氏は、かつて大手IT企業に勤めていました。農家の後継者として米作りを始めたのですが、生活クラブとの出会いが大きなきっかけになったそうです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞共同開発米部会会長 今野氏

今野氏は、「自分は農家の後継者として米作りを始めました。ほとんど言われるままに作業をしている状態でしたが、生活クラブの組合員と出会って交流することで初めて農家になれたと思っています」と明かしてくれました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞庄内・遊佐太陽光発電所

庄内・遊佐太陽光発電所は、大規模な太陽光発電所で、18MWの出力と67,000枚の太陽光パネルを備えています。発電所の年間の発電量は約18,000MWhで、約5,700世帯分の電力を供給できます。また、売電益は基金を通して庄内地域の持続可能な地域づくりに役立てられています。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞株式会社CSS 菅原氏

太陽光発電所の保守管理を担当する菅原善悦氏もまた、生活クラブと深く関わってきたひとりです。 地元農協で働いていた菅原氏は、生活クラブと農産物の提携などを長い間担当し、共同開発米や飼料用米の取組にも関わっていました。そして、農協の退職と発電所開発計画が始まる時期が重なり、太陽光事業においても生活クラブと関わることになりました。当時、建設地の地権者は主に農家であり、彼らに計画の案内をしていました。地権者たちは、生活クラブが関わるなら大丈夫だと安心していたそうです。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

TOCHiTOオープニング記念式典

TOCHiTOのオープニング記念式典が、酒田市のTOCHiTO・交流棟の多目的スペースで2023年6月17日に開催されました。地元事業者や自治体の首長などが出席し、セレモニーでは設立に貢献した人々からお祝いの言葉が述べられ、地域活性化への展望も語られました。また、入居者23名、プロジェクトに関係する来賓36名を含む総勢約100名が参列しました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞居住棟 TOCO

TOCHiTOは、3階建ての「居住棟」と2階建ての「地域交流拠点棟」、その間にある「憩いの広場」を含む施設全体の名称です。 居住棟は、地域の人々と住むとこ(TOCO)ろなので「TOCO(とこ)」、交流拠点棟は地域に参加すること(COTO)だから「COTO(こと)」と名付けられました。

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞

居住棟 TOCOの室内

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞交流棟 COTOのコワーキングスペース

これは、酒田市の「生涯活躍のまち基本計画」事業として、酒田市と生活クラブが連携し建設から居住者の募集、居住予定者の交流を進めてきたものです。

グッドライフアワード実行委員 竹ケ原啓介氏

庄内のローカルSDGsの視察を終えた実行委員の竹ケ原氏は、「現在、食の安心安全や自給が問われていますが、この問題を50年以上取り組んでこられたと先見性に驚かされました。庄内地域で生活クラブが実践していることは、経済的便益だけではなくて循環型農業や食の自給、さらに自然エネルギーや福祉など、ポジティブな社会的インパクトがあります。ここに、持続可能な地域づくりの答えがあるのではないでしょうか」と述べました。

今後の展望

プロジェクトが目指している事、今後やりたい事

第10回グッドライフアワード 環境大臣賞取材を終えて、TOCHiTOで記念撮影

生活クラブは、庄内、栃木、長野、紀伊半島という重主要産地に加えて、これから北海道でも活動を展開する予定です。特に、庄内をモデルにした食べものや自然エネルギーなどローカルSDGsのプロジェクトに重点を置く予定だそうです。村上会長は、「自治体を巻き込んで、その地域の特性に合わせた新しいことにチャレンジしてきたい」と胸を張りました。

第10回 グッドライフアワード

懐かしい未来を里山から つくる「里の家」 ~風の子、海の子、 里山体験~

環境大臣賞 最優秀賞

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一般社団法人 里の家

再生可能エネルギーの普及と地域のエネルギーによる収益を地域に還元、SDGs未来都市の創造!

環境大臣賞 優秀賞

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一般社団法人 市民エネルギー生駒

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」につながった生活クラブと庄内地域のローカルSDGsプロジェクト

環境大臣賞 優秀賞

消費者の「食べたい!」が「住みたい!」につながった 生活クラブと庄内地域のローカルSDGsプロジェクト

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

みぞのくちノクティ「みんなで地球をまもろう!」~一人ひとりができることを考え行動しよう

環境大臣賞 優秀賞

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みぞのくち新都市株式会社

地域の自治体や学校と共に100万人のエコな子どもたちを育み続ける 環境・SDGs教育情報紙「エコチル」事業

環境大臣賞 企業部門

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7ヶ月で200万倍に増殖する侵略的外来水草をバイオエタノールに~燃やすべきか飲むべきか、それが問題だ

環境大臣賞 企業部門

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株式会社サンウエスパ

アマモ場を保全し、水産生物増殖を担う魚礁を活用した、豊かな海づくり

環境大臣賞 企業部門

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志田内海株式会社

「ゼロカーボンタウン能勢」の実現に向けて~地域の高校生と共に推進するまちづくり~

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大阪府能勢町

中津川 THE SOLAR BUDOKAN(中津川 ザ ソーラー ブドーカン)

環境大臣賞 NPO・任意団体部門

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中津川 THE SOLAR BUDOKAN実行委員会

人生100年時代!! 森・人・地域経済を活性化する「グッドウッドプロジェクト」

環境大臣賞 地域コミュニティ部門

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一般社団法人 ゴジョる 釜石支店

臼杵観光ナビ(青の洞門 禅海和尚のように)

環境大臣賞 個人部門

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中野重二

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