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第12回 昭和基地をきれいに!~環境保全の取組み(1)

2006年2月8日

持ち帰られるドラム缶

 野外調査から昭和基地に戻った際、ヘリポートの近くにたくさんのドラム缶が並べられていた(写真1)。これは、主に第46次越冬期間中に出た生活ゴミなどの廃棄物であり、ヘリコプターでしらせに積み込み、日本に持ち帰り処分されるものである。

写真1:右下に見えるのが、持帰り廃棄物が入ったドラム缶

南極地域における廃棄物処理と環境保全隊員

 南極地域では、生活や観測、設営によって生じる廃棄物への対応は重要な問題となっている。南極地域で発生した廃棄物は、南極環境保護法に基づき、現地処分することは原則として禁止されているので、日本に持ち帰られる。もっとも、可燃物を焼却施設で焼却することはできるが、その灰も持ち帰られる(※注1)。また、持ち帰るものは、日本で適切に処分できるよう、あらかじめ種類ごとに、分類される必要がある。
南極地域観測隊の中で廃棄物に関する対応をはじめとして、環境保全活動の中心的な役割を担っているのが、環境保全隊員である。第47次越冬隊では安藤さん、永木さんの2名、同夏隊は横山さん1名の、合計3名が担当している(写真2、3、4)。
 今回は、環境保全隊員の活動を紹介したい。
 

写真2:安藤隊員(日立プラント建設(株)) 写真3:永木隊員(日本大学大学院理工学研究科)
写真4:横山隊員(新潟大学財務部)  

廃棄物への対応

 昭和基地では、段ボール、空き缶、生ごみなど普段の生活に伴って生じる廃棄物に加えて、新しく搬入した物資の梱包解体品や設営作業で排出された鉄くず、木枠などの廃棄物が多く出る。生活廃棄物は通称「タイコン」と呼ばれる大袋に梱包し、鉄くずや木枠などは、電動カッターで適当な長さに切断され、通称「エコバッグ」と呼ばれるプラスチック製の袋やスチールコンテナなどの容器に梱包される。
 また、突然天候が悪化し、風速数十メートルの風が吹くことがある。そのため、宿舎の外に仮置きしている「タイコン」や「エコバッグ」は、風に飛ばされないように封をして、ベルトで固定(これを「ラッシング」という。)する必要がある。
1月15~16日には、私たちが南極にきてからはじめて、低気圧の接近により、風速20m/秒以上の強風が吹いた。この時は、あらかじめ強風が予想されていたため、準備が適切にできた(写真5)が、普段から廃棄物が散乱しないように気が配られる。
 こうした作業は、環境保全隊員が中心となり、他の多くの隊員たちとともに行われており、こうした努力により日本への持帰りが可能となるのである。

写真5:強風で飛ばされないように保定された廃棄物(茶色い袋が「タイコン」、灰色の袋が「エコバッグ」、緑の「ラッシングベルト」でこれらをつなぎあわせて固定している。)

過去に排出された廃棄物の問題

 昭和基地のまわりには、過去の観測や設営作業で使用されなくなった雪上車やドラム缶などが、再利用や持ち帰りされなかった結果、「残置廃棄物」として残されている。
平成2年(1991年)の南極環境保護議定書の採択や、その後平成9年(1998年)に南極環境保護法が成立した際、衆議院と参議院の附帯決議の中で「残置廃棄物」の除去をするように対応するように求められたことなどを背景に、南極地域観測隊ではこれまでも持帰りの努力をしてきた。
特に、平成16年度からは「クリーンアップ4カ年計画」をたてて、平成19年度を目標として、地上の残置廃棄物を、持ち帰るよう取組みを行っている。
 これも環境保全担当の隊員の重要な活動の1つである。次回は、その様子を紹介したい。
(つづく)


【注】
※注…南極地域では廃棄物を焼却、埋設、排出、遺棄その他の処分が禁じされているが、例外として以下の処分は認められている。
[1]可燃性のものを焼却炉で処分すること(例:昭和基地での焼却炉での焼却)
[2]し尿や生活排水を海域から遠く隔たった氷床に埋設すること(例:ドームふじ基地などでのし尿の氷床への排出)
[3]固形状のものを溶解するまで処理したし尿や生活排水を海洋に排出すること(例:昭和基地での排水の排出)
[4]廃棄物を除去する方が回収するよりも環境影響が大きい場合(例:気象観測のために飛ばしたゾンデ類)
[5]その他やむを得ない場合における液状廃棄物の陸域から海域への排出(例:野外調査中に、海氷クラック等にし尿を排出する。)

(了)