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第6回 スカルブスネスでの南極地域自然環境調査

2006年1月8日

スカルブスネスきざはし小屋

 スカルブスネスのきざはし浜の観測小屋を出ると、正面に、海氷に覆われた海とその向こうに山並みが見え、奥にはシェッゲと呼ばれる垂直に約400m切り立った断崖が見える。海岸線はシェッゲの方から西に続き、それから弓なりに南へと向かい、この観測小屋まで続いている。
 年が明けて1月2日、私はスカルブスネスでの野外調査に同行した。同行中、自然環境や調査活動の状況を写真によって記録した。今回はその記録の一部を紹介したい。

南極地域自然環境調査

 まずは、野外活動中の生活や調査の拠点となる観測小屋の利用状況を記録した(写真1)。中心の建物が観測小屋で、奥が発電機の小屋。海側には試料を処理するための緑色の小屋もある。小屋の中は4人までしか宿泊することができないので、残りの人は外でテントを張って宿泊していた。1月4日には、小屋の前の浜にはペンギンが来て、ここで一夜を明かした(写真2)。
 また、今回の調査の対象となった場所の状況も記録した。私が調査に同行している間は、スカルブスネスの北にある舟底池で、湖心付近の堆積物のサンプリングが行われた。調査の拠点となる地点(写真3)の近くは、砂地になっており、貝の遺がいなどがある(写真4)ため、これらをかく乱しないように、注意しなければならない。また、すりばち池(写真5)でも同様に、ボートによるサンプリングが行われた。
 すりばち池に行くときは、峠を越えていくが、その峠を登り詰めたところに、ユキドリの集団繁殖地がある。ユキドリは、風化などによって崩落している岩のわずかな隙間に巣を作っている(写真6※注…矢印を示した箇所にユキドリの巣がある)。この斜面には、8つの巣穴の中に、合計約20羽のユキドリを確認できた(写真7)。
 その他、断崖のシェッゲの他、氷河の流れによって形成されたすりばち山(写真8)も特徴ある景観として、記録した。

写真1 写真2:小屋の前に来たペンギン
写真3:舟底池と調査拠点 写真4:貝の遺がい
写真5:すりばち池  
写真6:ゆきどり繁殖地
写真7:巣穴から顔をのぞかせたユキドリ 写真8:すりばち山

自然環境調査を役立てる

 南極地域で観測や調査活動を行う場合は、南極環境保護法に基づき、事前にその活動計画を環境大臣に申請し、南極地域に与える影響に係る基準を満たしている旨の確認を受ける必要がある。
 一方、計画された活動が与える環境影響を適切に評価するためには、計画された活動場所の自然環境や活動の状況についての情報が必要である。しかし、南極地域に関する個別の学術論文からでは、総体的な状況は把握しにくい。
 そこで、環境省職員が南極地域観測隊に参加した際には、野外調査に参加して、各地域の自然環境や利用状況を収集、記録している。これにより、環境影響の評価をより効果的に行うことができるのである。

(了)