環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護メッセージ:トップ

第7回 昭和基地の設営作業

2006年1月20日

今日もゼロ災でいこう!

 夏の昭和基地の一日は、朝7:45分からの朝礼で始まる(写真1)。設営作業(基地の建設や維持管理に関する作業)を前に、観測隊員が準備運動をしているのである。観測船しらせの乗組員も、1月から2月初旬までの約1ヶ月間は、設営作業に参加する。
 南極地域観測を円滑に実施するためには、観測拠点である昭和基地の維持管理も重要である。設営作業は、雪が解けて気候が穏やかな夏期期間に集中して行われる。作業現場ごとに、建設会社などの出身の設営担当の隊員がリーダーとなって、その人の指示に従って、実施される。作業には、研究観測担当の隊員も参加するなど、必ずしもすべての隊員が、建設や機械の専門家ではないので、特に作業の安全が重視される。
 ラジオ体操後のかけ声は、「今日もゼロ災(災害ゼロ)で行こう!」であり、これが設営作業の合い言葉になっている。

写真1:朝礼の様子

第47次南極地域観測隊が実施する設営活動

 第47次南極地域観測隊が実施する設営作業の主なものとして、不要になった施設を解体し(写真2)、それを、非常用の予備食料保管庫として基地中心部に離れたところに移設する作業(写真3)や、老朽化した隊員宿舎の外壁の改修工事(写真4)、燃料タンクの防油堤設置工事(写真5)、燃料輸送配管の設置工事(写真6)などである。私も、調査の合間を縫って、これらの設営活動に参加した。

写真2:施設の解体 写真3:予備食料庫の設置基礎工事
写真4:隊員宿舎の外壁改修工事 写真5:金属タンクの防油堤設置工事
写真6:燃料輸送配管の設置基礎工事  

環境影響評価書の作成と審査体制

 基地の運営のために必要な設営作業も、南極の環境に対して一定の負荷を与える。このため、南極環境保護法に基づき、作業が周辺の環境に与える影響を、周辺生物、大気、地形、景観などの観点から多角的に予測し、評価した環境影響評価書を提出し、確認申請書とあわせて環境省で審査される。
 今回の設営工事は、上述の審査を経て、環境大臣の確認を受けて実施されている。しかし、例えば新たな場所に基地を新築するなど、南極の環境に対する影響が大きいことが予想される場合には、環境影響評価書は南極条約協議国会議でも審査されることとなる。このように、南極の環境保護は国際的な枠組みの下で行われているのである。

(了)