自然環境・生物多様性

第60次南極地域観測隊同行日記

 環境省では、南極地域観測統合推進本部(本部長:文部科学大臣)が組織する「南極地域観測隊」に定期的に職員を同行させ、主として我が国昭和基地周辺の環境や動植物の状況等について、現地調査を実施してまいりました。
 第60次南極地域観測隊夏隊(平成30年11月25日~平成31年3月21日)にも、1名の環境省職員が同行します。
 このページでは、南極で活躍する環境省職員の現地からの声を「第60次南極地域観測隊同行日記」として紹介します。

環境省職員日記

第11回:シドニー到着 ~4か月間ありがとうございました~

2019年3月18()

こんにちは。

318日にしらせは、ついにオーストラリアのシドニーに入港しました。

シドニー入港<シドニー入港>

60次南極地域観測隊夏隊は、レセプション参加等のためシドニーに21日まで滞在した後、飛行機で日本に帰国することになります。

これで4か月間の観測活動は全て終了し、この第60次南極地域観測隊同行日記も今回が最終回となります。

しかし、第60次南極地域観測隊の活動としては、夏隊の活動はこれで終わりとなりますが、越冬隊は南極に残ってあと約1年間、昭和基地での観測を続けていきますので、第60次南極地域観測隊の活動は続いています。

なお、我々夏隊を乗せてきてくれたしらせは、このあと海路で日本へ向かい、4月初旬に帰港します。

私も環境省の南極保全担当として、今回の同行で得られた知識や経験を今後の業務に活かしていきたいと思います。

あまり頻繁にホームページを更新することができませんでしたが、この日記をきっかけに少しでも南極の環境や観測に興味を持っていただけたなら幸いです。

環境省ではホームページに南極の環境情報を掲載しておりますので、ご興味があればそちらもご覧いただければと思います。

それでは、4か月間お付き合いいただき、ありがとうございました。

第10回:北上開始 ~砕氷艦しらせについて~

2019年3月11()

こんにちは。

海洋観測のため昭和基地から南極大陸近海を東に向かって航行していたしらせは、目標の東経150°地点までたどり着き、オーストラリアのシドニー目指して北上を開始しました。

かれこれ昭和基地を出発してからしらせでの生活も1か月になりました。そこで、今回は砕氷艦しらせについてご紹介します。

(2代目しらせ)

しらせは、海上自衛隊に所属する砕氷艦で、今私が乗艦しているしらせは平成21年に就役した2代目に当たり、初代しらせは昭和58年から平成19年まで第2549次南極地域観測隊を南極に運びました。

(砕氷艦)

強力な推進力で薄い氷(氷厚1.5m程度まで)を砕いて進む「連続砕氷」と、艦を200300m程度後進させてから氷に向けて突進し、厚い氷を艦の自重で砕く「ラミング(チャージング)」で砕氷を行いながら氷海を進みます。

氷海を砕氷しながら進むしらせ(昭和基地沖合)<氷海を砕氷しながら進むしらせ(昭和基地沖合)>

(観測設備)

しらせには砕氷や輸送能力の他、気象、海洋、重力等といった各種観測設備や乗員用のエレベーター等、他の自衛艦ではあまり見られない施設も備わっています。

(しらせでの生活)

また、長期間の航海が続くしらせでは、毎日変わる食事が乗員の大きな楽しみの一つになっています。月曜朝食はシリアル、水曜朝食はパン、金曜昼食はカレー等曜日によって食事メニューが異なり、曜日感覚が失われがちなしらせでの生活で、カレンダーを思い出させてくれます。

金曜日は少し豪華なカレーの日

<金曜日は少し豪華なカレーの日>

シドニー到着までに予定されているカレーの日は後1回のみ。

しらせでの生活も残りわずかになってきました。

これからしらせは、海が荒れることで知られる南緯40度から南緯60度の区域を北上しながら海洋観測を続けていきますが、船酔いに負けないように過ごしたいと思います。

第9回:アムンゼン湾調査に行ってきました ~ペンギンについて~

2019年3月1日()

こんにちは。

昭和基地があるリュツォ・ホルム湾の海氷域を抜け出したしらせは、現在、海洋観測を行うためケープ・ダンレーという地点に到達し、観測の準備を進めています。

ケープ・ダンレーに向かう途中、第60次南極地域観測隊夏隊(以下、「夏隊」)は、昭和基地から約600km離れたアムンゼン湾のリーセルラルセン山の周辺で調査を行いました。夏隊にとって、この調査が上陸して行う最後の調査になるので、隊員のやる気はより一層溢れんばかりでした。

私もリーセルラルセン山周辺にペンギン調査等に行ってきましたので、今回は南極の代表的な生物であるペンギンについてご紹介したいと思います。

ペンギンは、南極をはじめ、ニュージーランドやオーストラリア、南アフリカ、南米等に生息する鳥です。

昭和基地周辺にはアデリーペンギンとエンペラーペンギンの2種が生息していますが、南極海を航行するしらせから、マカロニペンギン等他の種類のペンギンを見ることができます。

往路のしらせで見られたマカロニペンギン<往路のしらせで見られたマカロニペンギン>

南極のペンギンは、魚やオキアミなどの生物を捕食する南極の食物連鎖の中で高位の捕食者です。

高位の捕食者は、DDTPCB、水銀といった人為由来の有害物質を体内に蓄積しやすいため、環境省では、南極でアデリーペンギンの死体を回収し、南極地域観測活動や昭和基地の運営等の人間活動が南極の自然環境に悪影響を与えていないかモニタリング調査を行っています。

また、ペンギンに関する調査でいうと、夏隊のペンギン調査チームによりアデリーペンギンの繁殖個体数や採餌行動等の調査が行われています。

<アデリーペンギン>

コウテイペンギン<コウテイペンギン>

第8回:乱氷帯を脱出 ~アイスアルジーについて~

2019224()

こんにちは。

海洋観測のため南極海を移動していたしらせは、ブリザードによってできた乱氷帯に行く手を阻まれ、なかなか乱氷帯を抜け出せない状況になってしまいました。

しかし、23日についに氷海を抜け、氷に覆われていない海に戻ってきました。

その際、氷と格闘しながら進むしらせ船上から少し不思議な景色が見られたので、今回はその様子についてご紹介します。

氷海では、雪と氷の白と海の青からなる景色が続きますが、途中、海氷が茶色に染まっている光景を見ることができました。

茶色の氷に覆われた海 色のついていない氷に覆われた海

<左:茶色の氷に覆われた海(2019223日撮影)

 右:色のついていない氷に覆われた海(20181215日撮影)>

これは、海氷の下側にアイスアルジー(ice algae)と呼ばれる藻類が付着していることによるもので、氷の薄い海域や、砕氷によりひっくり返った氷では、このアイスアルジーは船上からも見えるために氷が茶色く見えます。

アイスアルジーはおもに珪藻、鞭毛藻、繊毛虫などからなり、一見生物はいないように見える海氷にも多くの生物が生育していることに驚きます。

アイスアルジー

<アイスアルジー>

無事氷海を抜けましたが、氷に覆われていない海に戻り船が揺れだしたので、船酔いに負けないように頑張りたいと思います。

第7回:昭和基地を出発 ~環境省の南極調査について~

2019214()

こんにちは。

夏隊の昭和基地での活動期間が終わり、211日に昭和基地からしらせに戻ってきました。昨年1222日に昭和基地入りし、52日間の活動でしたが、あっという間に終わってしまった気がします。

昭和基地を離れるヘリコプターから手を振る夏隊員とヘリポートで人文字を作って見送る越冬隊員<昭和基地を離れるヘリコプターから手を振る夏隊員とヘリポートで人文字を作って見送る越冬隊員>

今回は、私(環境省)が南極で行っている調査について簡単にご紹介します。

環境省は、南極で4つの調査を行っています。

(1)南極地域活動実態把握調査

南極に関する国際的な取組として、南極の環境や生態系等の保護を図るため「環境保護に関する南極条約議定書」が制定されました。これを受け、日本では、南極地域の環境保護に関する法律を制定し、日本国民が南極で活動する際に必要なルールを定め、環境保護の促進を図っています。環境省職員が南極地域観測隊の各種活動が適切に行われているか確認を行っています。

(2)南極地域環境調査

南極地域の環境情報を蓄積するため、動植物相等の調査を行っています。

(3)南極地域環境資質調査

南極地域の中でも特に優れた価値を持つ地域は、南極特別保護地区として指定され保護されています。日本が管理主体となっている南極特別保護地区には、昭和基地周辺の露岩域であるラングホブデの雪鳥沢があり、この地域の自然の概況調査等を行っています。

(4)南極地域環境実態把握モニタリング調査

昭和基地を運営する南極地域観測隊による活動が、周辺環境に与える影響を継続的にモニタリングするため、排水や生物等を採取し、水質等の調査を行っています。

南極地域環境実態把握モニタリング調査 昭和基地でのサンプリングの様子 撮影:渡邉哲也

<(4)南極地域環境実態把握モニタリング調査 昭和基地でのサンプリングの様子 撮影:渡邉哲也>

昭和基地での活動がひとまず終わった夏隊は、これから昭和基地から約600km離れたリーセルラルセン山等南極大陸に上陸しての調査や海洋観測を行う予定です。

私も気を抜かず引き続き活動を続けていきたいと思います。

※最新の記事を表示しています。以前の物は過去の南極地域観測隊同行日記をご覧下さい。

環境省による南極地域現地調査の概要

その他の関連情報

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TEL 03-5521-8274
FAX 03-3591-3228
e-mail : antarctic@env.go.jp

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