野生動植物の保全と持続可能な利用

日本の象牙利用の考え方

日本国内では象牙・象牙製品の商業取引は原則禁止されており、限定的な条件の下でのみ商業取引することが可能となっています。この限定的な条件は、種の保存法の規定により、ワシントン条約の決議10.10をはじめとする関連決議を踏まえた、象牙の厳格な取扱を実現するために設けられているものです。象牙・象牙製品の商業取引を行うために事業者は登録申請や登録税の支払い、取引に関する書類の保存等の数々の規定に従う必要があります。

このような複雑な制度を運用しながらも、なぜ象牙利用の道を残しているのか、疑問をもたれる方もいらっしゃることでしょう。私たち人間の生活は食や生活基盤から文化に至るまであらゆる面で動植物に支えられており、決議8.3でも「当該種の存続に有害でないレベルで行われるならば、商業取引は、種と生態系の保全、及び地域住民の発展のいずれか、もしくは両方にとって有益となるであろうこと」を認識しています。ゾウの生息国にとって、ゾウは土地を分け合う存在であると同時に、農作物被害や人身被害をもたらす存在でも、経済的な利益も含む便益をもたらしてくれる貴重な資源でもあります。

アフリカゾウの保全状況が良好な生息国の中には、地域社会の生計向上と資源の保全の両立を図る住民参加型の自然資源管理を採用して、自然死や加害個体駆除などから合法的かつ持続可能な形で得られる象牙がもたらす利益を、アフリカゾウの保全や地域の発展に活用することを提唱している国があります。このような生息国を支援することはワシントン条約や生物多様性条約等による保全と持続可能な利用の取り組みを推進する国際社会の責務であり、日本は国際社会の一員として種の保存法に基づき象牙を利用することを通じて上記のようなアプローチを採用している国々の努力を支え、これらの国々におけるアフリカゾウの保全や地域住民とアフリカゾウの共生の実現に貢献できる立場にあります。合法市場を閉鎖してしまえば、持続可能な利用を通じた保全を望む生息国の努力を無にするばかりか、違法市場を活性化させ、密猟や違法取引を助長するとも考えています。

だからこそ、種の保存法による制度の下で、国内の象牙市場を厳格に管理し、合法的に輸入された象牙によって行われている国内の象牙取引が、アフリカゾウの密猟や違法取引に寄与していないことを示しながら、持続可能な利用を達成することが重要です。