ワシントン条約とは

事例2:ビッグホーン
メキシコにおけるビックホーンの狩猟とハンティングトロフィー取引

イメージ画像:ビッグホーン Ovis Canadensis

※本記事はワシントン条約(CITES)ウェブサイトで参考事例として紹介されている事例の1つを紹介しているものです。より詳細な情報、その他の事例及び関連情報については、ワシントン条約ウェブサイトをご覧ください。

ビッグホーン Ovis Canadensis
附属書Ⅱ(メキシコの個体群のみ)

ビックホーンは、カナダ西部、米国西部、メキシコ北部にまたがる乾燥・半乾燥地域の険しい山岳や崖に生息するウシ目ウシ科に属する野生のヒツジです。

植民地時代の家畜の導入と無秩序な狩猟により、ビックホーンの個体数は約100万頭(1800年)から2万5,000頭未満(1950年)へと激減しました。メキシコにおいては、北東部の個体群が絶滅し、北西部とバハ半島の個体群の生息地は分断されました。

ビックホーンのトロフィーハンティング(頭部を記念品として持ち帰るための狩猟)は北米各地で広く行われており、メキシコでは主に米国に向けて年間約100~200のトロフィーが輸出されています。狩猟は保全・野生生物管理区 (UMA)内でのみ許可されており、UMAの多くが現地の共同耕作民や先住民によって設置・管理されています。UMAでは、地域コミュニティや先住民が自らの土地で行われる狩猟を監督・運営して収益を創出・維持するほか、モニタリング調査、密猟対策、その他の野生生物管理活動も実施しています。

狩猟プログラムの実施以前、主に多数の家畜ヤギと伝統的な漁業に依存して生計を立てていた共同耕作民や先住民は、深刻な貧困に直面していましたが、トロフィーハンティングにより大きな経済的・社会的利益がもたらされています(1回の狩猟で1万~4万米ドル(約104万~416万円)の利益)。また先住民がUMAを所有・管理している島では、本土生息域への再導入用に若い個体を販売したことによる利益も得られています。

狩猟による収入は、保全、生息地管理、コミュニティの開発プロジェクト(奨学金、自然災害基金、インフラ(照明、水、衛生))、現地警察への支払い、エコツーリズムインフラの構築を支え、トロフィーハンティングの実施は、密猟防止隊やガイドやツアー運営者等の雇用も創出しています。 

狩猟プログラム開始以前、地域住民がビッグホーンを保護することはほとんどなく、主にヤギに頼っていましたが、ヤギは生息環境を悪化させビックホーンの個体群と競合していました。ビックホーンの生息地全体の個体数はもっとも少なかった頃から3倍以上増え、現在約6万~8万頭となりました。この個体数の回復は、現地の土地所有者やコミュニティがトロフィーハンティングから利益を得られることにより実現しており、トロフィーハンティングや取引からのインセンティブ(動機付け)によって、大規模な生息地の回復や連続性の向上、家畜と過放牧の減少も実現したとされる事例です。

※1米ドル=104日本円として換算