ワシントン条約とは

事例1:ビクーナ(ビクーニャ)
ボリビアにおける
ビクーナ繊維の採取と取引

イメージ画像:ビクーナ Vicugna vicugna

※本記事はワシントン条約(CITES)ウェブサイトで参考事例として紹介されている事例の1つを紹介しているものです。より詳細な情報、その他の事例及び関連情報については、ワシントン条約ウェブサイトをご覧ください。

ビクーナ(ビクーニャ) Vicugna vicugna
附属書Ⅰ及びⅡ(ボリビアの全個体群及びその他一部の個体群は附属書Ⅱ)

ビクーナは南米(アルゼンチン、ボリビア、チリ、ペルー、エクアドル)の高地に生息するラクダ科の動物で、ボリビアには世界の個体数の約3分の1が生息しています。ビクーナの毛の繊維は、高級衣類の原料として国際取引されています。

繊維を採取するために乱獲されていたビクーナの個体数は20世紀に激減し、1969年以降、ビクーナは生息国の国内法により保護対象となり、ワシントン条約発効時の1975年には全個体群が附属書Ⅰに掲載されました。その後、回復した個体群から段階的に、持続可能な利用と国際取引を可能とするため附属書Ⅱに移されてきました。ボリビアの個体群は2002年に附属書Ⅱに移行し、2007年から国際取引が開始されています。

ボリビアでは先住民などの地域共同体の共有地において、野生の生きたビクーナの毛刈りが行われます。インカ時代の伝統的な手法(チャク)で行われることもあります。網と針金で作られ、漏斗形に配置されたワナにビクーナをゆっくり追い込んで毛を刈り、再度野生に戻します。まとめ販売された繊維の利益の大部分が集落に還元されています。

低温で乾燥した厳しい環境の高地に住み、他の現金収入源がほとんどなく、経済的にも厳しい環境にある住民にとって、ビクーナ繊維の取引による収入は重要なものとなっています。また取引の波及効果として、土地所有権の強化、地域に人々が留まり都市への移住が避けられること、地域の野生生物担当機関の強化、野生生物管理への関与促進などが挙げられ、古来の伝統や地付きの知識も活性化されています。2018年に利用されたビクーナ個体群は全体のわずか6%ほどであり、このような利益を拡大できる可能性は非常に大きいとされています。

ビクーナの個体数は、1960年代後半以降は生息国全体で着実に増加し、合法取引による持続可能な利用が確立されて以来、増加速度は上がっており、ボリビアでは1969年の約3,000頭から2018年には約16万3,000頭(推定)に増加しています。ビクーナは牧草地を家畜と競合する存在からコミュニティの経済的資産に変化し、密猟の減少だけでなく、繊維の取引はコミュニティが密猟対策や保護を行う動機にもなりました。繊維取引によって得られる利益を契機にビクーナの管理を始めるコミュニティの増加とともに、以上のような保全上の利益が拡大し、ビクーナを保護する動きは中央政府の目が行き届かない広大なエリアにも及んでおり、さらに家畜の放牧の減少から、生息環境の保全も進んでいるとされる事例です。

※1米ドル=104日本円として換算