ワシントン条約とは

ワシントン条約

概要

ワシントン条約は、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」といい、英文の頭文字をとってCITES(サイテス)、あるいは1973年(昭和48年)に米国のワシントンD.C.で採択されたことから、ワシントン条約という通称でも呼ばれています。

現在、自然のかけがえのない一部をなす野生動植物種の多くが、開発や管理放棄による生息地の破壊や劣化、捕獲・採集や外来種の侵入、さらには気候変動等の様々な要因により、絶滅の危機に瀕しています。さまざまな要因がある中で、ワシントン条約は、輸出国と輸入国とが協力して国際取引の規制を実施することで、国際取引のための過度の利用による野生動植物種の絶滅を防止し、それらの種の保全を図ることを目的とした条約です。

歴史

1972年(昭和47年)の国連人間環境会議(ストックホルム会議)において、絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引を規制するための条約案を作成し、採択するための会議を速やかに招集することが勧告されました。これを受けて本条約は1973年(昭和48年)3月3日に米国・ワシントンD.C.で採択され、1975年(昭和50年)7月1日に発効しました。日本は1980年(昭和55年)に条約を締結し、同年11月から発効しています。なお条約が採択された3月3日は、世界野生生物の日となっています。

条約の内容

ワシントン条約では、国家間の過度な国際取引による種の絶滅を防ぐため、国際取引の規制が必要と考えられる野生動植物の種を附属書にリストアップします。附属書は、絶滅のおそれの程度、必要とされる規制の内容に応じて3つに区分(附属書Ⅰ~Ⅲ)されています。附属書Ⅰ及びⅡの掲載種(規制の対象となる種)は、2~3年ごとに開催される締約国会議で見直しが行われ、審議を経て、改正されます。

附属書Ⅰ

絶滅のおそれが高く、取引による影響を受けているか受ける可能性があるため、取引を特に厳重に規制する必要のある種を掲載。商業目的のための国際取引を原則禁止。学術目的等の取引は可能だが、輸出国・輸入国双方の政府の発行する許可証が必要。

附属書Ⅱ

現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となりうる種を掲載。商業目的の国際取引は可能だが、輸出国政府の発行する輸出許可書等が必要。

附属書Ⅲ

締約国が自国内での保護のため、他の締約国の協力を必要とする種を掲載。商業目的の国際取引は可能だが、掲載国を原産地とする輸出には政府の発行する輸出許可書等が必要。掲載国以外の国を原産地とする輸出がなされる場合には原産地証明が必要。

※条約に基づき、各締約国は、自国のために許可書又は証明書を発給する権限を有する管理当局と、当該取引がその種の存続に影響を及ぼすおそれがあるか等について管理当局に助言を与える科学当局を指定することとなっています。

日本の基本的立場と措置

我が国は、野生動植物の保護については、科学的データに基づいた「持続可能な利用」(※)の考えに立った措置がとられることが重要と考えています。

※生物資源について、その収穫や利用を一定の量的限度の範囲内で許可すること等により、開発行為や資源の利用と、生態系や環境の保全を調和させるとの考え方。

ワシントン条約に基づく国際取引規制を適切に履行するために、日本では、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)に基づき、輸出入の際の水際規制を行っています。条約に基づき許可書等を発給する管理当局には経済産業省、農林水産省が、管理当局に対して助言を行う科学当局には環境省、農林水産省が指定されています。

管理当局 経済産業省 海からの持ち込みを除く(一般的な輸出入)
農林水産省 海からの持ち込みに限る
科学当局 農林水産省 植物及び主な水棲動物
環境省 陸上動物

輸出入に係るワシントン条約の手続きや関係省庁等についてはこちらをご確認ください。

なお、ワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されている種については、商業目的の国際取引が原則禁止されるだけでなく、日本国内における取引についても、種の保存法に基づく国際希少野生動植物種として規制を受けます。

種の保存法に基づく国内での取引等の規制についてはこちらをご確認下さい。

希少野生動植物種の国外と国内の取引規制の関係を示したイラスト。

国内と国外の輸出入はワシントン条約が対象としており、ワシントン条約の国内担保法は外為法です。国内取引を種の保存法が対象としています。