20のチャレンジ
熊本県水俣市
■暖房度日地域区分
■パッシブ地域区分
■提案概要
市南部の住宅地「月浦福祉ニュータウン」に木造モデルハウスを建設する。
住宅のライフサイクルにおける温室効果ガス削減を視野に、新エネ・省エネ活用、生態系に配慮した宅地造成、地域の産業が生産する自然素材の活用、高齢者や障害者への配慮、化学汚染物質への配慮を踏まえた住まいづくりを行う。
■地域の紹介文
水俣市は九州の南西部に位置し、九州山地の豊かな水が流れ込む不知火海沿岸にできた自然豊かな地方都市です。
水俣病という公害で苦しんだ経験を教訓とし、平成4年に環境モデル都市づくりを宣言し、これまでごみの22分別、ISO14001自己宣言をはじめとするさまざまな環境施策を展開してきました。
平成13年には水俣エコタウンプランが国の承認を受け、リサイクル関連事業の立地が進むなど、市民と一体となったまちづくりを進めています。このような市民一人ひとりが築き上げてきた環境モデル都市の取り組みが高く評価され、平成20年7月には、国の「環境モデル都市」の認定を受け、今後、更なる環境施策の推進を目指しています。
建設予定地となる水俣市月浦台地ニュータウンは、高齢者、身障者、健常者がともにくらすやさしいまちづくり(ノーマライゼーション)を目指し水俣市民のコミュニティ再生のシンボルである水俣市南部もやい直しセンター「おれんじ館」を核として開発されました。
県営市営の公営住宅、障害者自立支援施設、不知火海、天草の島々を眼下に見下ろす月浦ふれあい公園があり、21年度には養護老人ホームが完成する予定であり、環境・健康・福祉施策が調和した地域です。
■コンセプト
健康で快適で人にも地球にもやさしい「住まいづくり」
快適・健康な住まいづくりのために、水俣の気候・風土や立地特性を理解し、生態系をこわさない、地球環境への負担をなくすような自然と共生するライフスタイルの確立と普及を目指します。
熊本県水俣市
21世紀環境型住宅のモデル整備による建設促進事業について
※ 別ウィンドウで開きます
■予定地の緯度/経度
北緯 32度11分20.3秒(32.188972)
東経 130度23分4.5秒(130.384583)
建設地周辺
建設地
■計画提案
- ◇タイトル
- 「足るを知る普通の家」なごみともやい
- 設計者
古川保(すまい塾古川設計室有限会社)
- ◇ここがポイント
- ○地域性
地域の建材で、地域の職人で、地域の人々の生活スタイルにあった家をつくる。 - ○環境性
ライフサイクルCO2の少ない住まい作り。
自然に対して何も足さない何も引かない持続可能な社会の住まい作り。 - ○ライフスタイル
夏は暑くない程度、冬は寒くない程度の家をつくる。昔からあった生活のしかたから学ぶエコライフスタイル
◇設計主旨
水俣の気候は温暖で、年間雨量は2200㍉と多く、高温多湿な地域である。そこで設計ではこの地域のふさわしい住宅環境性能を確保して、都市型の閉じられた施設のような快適性は求めずに夏は暑くない程度、冬は寒くない程度の家を提案する。外部と内部を遮断するのでなく、家の両者の融合性を重視した間取りが水俣には似合う。水俣市は水俣病を経験し、人のつながりを重視した「もやい」思想が生まれ、そこから自然との「もやい」にまで発展し、持続可能な社会を形成している。建築材料の生産時も建設時もあまりエネルギーを使わず、生活時も、夏は吸湿材・深い軒と風通しでエアコンは無し、山の整備の手伝いをして冬は山で余っている薪を燃やして暖を取る。
この地域に適した温熱性能として日射遮蔽は充分に考慮し、断熱性能は夏の室内の熱が逃げ易い程度とした。
水俣は木材の産地である。水俣の大関山にたくさん杉や檜が植わっている。また、水俣には伝統構法が建築可能な建具職人・左官職人・大工職人がたくさんいる。地元の木と地元の土と地元の紙を使い、地元の職人で伝統構法を採用し、地域の仕事量を増やす建築にする。真壁・無垢の木・瓦・木製デッキ・漆喰・白蟻点検のメンテナンスをして長寿命化させるのが、日本流である。役目が終われば土に戻すか煙になる。
「循環の視点」でゴミになる前の段階から考え、自然に対して何も足さない何も引かないの精神で必要以上の性能を求めることなく、「足るを知る普通の家」を水俣から提案する。
■工事中
構造体に金物は使っていない。木と木の接合は木を使うのが良い。
敷地の段差は、棚田みたいに段差にあわせて骨組みを架構する。
地元の木材、地元の竹、地元の土、地元の職人による家づくり