20のチャレンジ
長野県飯田市
■暖房度日地域区分
■パッシブ地域区分
■提案概要
中心市街地の「りんご並木」沿いに木造のモデルハウスを建設。太陽光、太陽熱、木質バイオマス等再生可能エネルギーの活用により化石燃料ゼロハウスとすることで、中心市街地、ひいては地域全体の低炭素化を実現するための先導的な役割をもち、環境共生型住宅の普及と環境意識の高揚を図る地球温暖化対策の拠点として活用する。
■地域の紹介文
飯田市は、長野県の南端、諏訪湖から流れる天竜川に沿った南北に広がる「伊那谷」に位置し、東西を南アルプスと中央アルプスに囲まれた急峻で狭隘な地形に位置する都市で、総面積が658.76k㎡、うち森林面積が84%、約10万7千人が居住する典型的な中山間地域である。また、この地域は、年間約2,000時間もの日照時間と住民の高い意識により、早くから太陽エネルギーを利用してきたため、太陽光発電システムの普及率は全国でもトップクラスであり、平成16年には環境大臣表彰を受けている。
建設予定地「りんご並木」は昭和22年の大火後に地元中学生によってりんごの木が植樹された緑地帯であり、中心市街地復興のシンボルにとどまらず、美しい街を希求し創造する飯田市民の心の拠り所となっている。
■コンセプト
地域産材を利用し、建物断熱性能の向上を図り、地域固有の再生可能エネルギーを活用したゼロカーボン住宅の整備を契機として波及する、中心市街地の低炭素化及び中心市街地をモデルとした地域全体の低炭素化。
長野県飯田市
信州飯田エコハウス推進地域協議会ホームページ
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■予定地の緯度/経度
北緯 35度30分54秒(35.515000)
東経 137度49分30秒(137.825000)
建設地
建設地航空写真
■計画提案
- ◇タイトル
- 伊那谷風の家
- 設計者
新井優(新井建築工房+設計同人NEXT)
- ◇ここがポイント
- ○地域性
厳しい内陸性盆地気候の南信州。遮熱格子がりんご並木に映える - ○環境性
豊かな森林資源と冬場の高い晴天率を活かした二世代住宅 - ○ライフスタイル
様々なローテクを操り、住み良い環境を考え創り出す喜び
◇設計主旨
敷地は昭和22年の大火で消失した中心市街地の復興まちづくりの原点“りんご並木” に面する南北27m、東西8m弱の細長く、さらに南側には3階建てのビルが隣接する自然エネルギー利用には難しい土地。
飯田市は『環境文化都市宣言』を行い、平成21年1月には環境モデル都市に選定された。中期目標として2030年までに家庭部門のCO2排出量を2005年比較40~50%削減を掲げ、多様な主体の協働による太陽や森のエネルギー利用等の具体的行動を始めている。それらの考え方を『りんご並木のエコハウス』として実際の住宅として実現する。
内陸性盆地気候の当地域は、冬場の晴天率は高いが寒暖差の激しい気候。実施設計完了時のQ値1,65、C値2,0の断熱気密性能に加え、熱の時間的移動としての蓄熱方法を工夫し、夏と冬・昼と夜・在宅と不在時の自然エネルギー利用のモードの切り替えを人が手をかけ操作することによって、「住み良い環境を自分で考え創り出す事」を念頭に置いた。
南部分は子世代、北部分は親世代の二世代型住宅を地元の杉材を渡りアゴ構法で組み上げた次世代に受け継がれる高耐久な家づくり。冬季の日射は期待出来ない南部分は熱を逃がさない“閉じ系” の住まいとし、地下1,0mまで基礎断熱した三和土の土間床へチューブを埋め込み24時間換気を送りペレットストーブの温熱を蓄熱する。夏は夜間の冷風を直接送り土間蓄冷。地中の緩やかな年間温度変化を室内環境に活かす。
冬季の日射に期待できる北部分は“開き系” の住まい。限られた屋根面積を最大限活用する太陽光発電・太陽熱回収ハイブリッド屋根一体型システム(OMソーラー)を採用した結果、年間暖房エネルギーの約60%を自給する。補助暖房はペレットストーブ。さらに給湯は残り湯熱回収機能付太陽熱利用エコキュートを採用し、給湯コストの削減を目指す。
東側のりんご並木をパノラマで楽しむ大開口には断熱障子で冬に対処、外には片引込みの格子戸や植性メッシュで夏の午前の日射を遮断。それらを季節に合わせて閉じたり開いたりは住人の役割。操作を忘れると室内環境に影響する事も“気付き” のきっかけづくりとしてのエコハウスの役割。
準防火地域であるが杉板・漆喰の外装仕上げとして木造らしさにこだわった。親しみやすい大きさに分節された『りんご並木のエコハウス』は目的地ではなく、まちなかの気楽に立ち寄れる住まいとして、多くの市民に愛され環境共生のメッセージを伝え続けていく。
■工事中
蓄熱ベタ基礎の配筋 太陽熱を蓄熱し夜間にゆっくり放熱する(1月29日撮影)
渡りアゴの架構をそのまま現し。内断熱材と気密シートの状況(3月9日撮影)
下向きに作業する屋根下地 外断熱材、遮熱シート,通気桟、野地板(2月19日撮影)