20のチャレンジ
兵庫県豊岡市
■暖房度日地域区分
■パッシブ地域区分
■提案概要
生物多様性保全の実践や教育の拠点として整備した「ハチゴロウの戸島湿地」を、地球温暖化対策なども含めた総合的な環境保全について考える拠点としても活用するため、敷地の一角にエコハウスを建設する。
但馬の風土に適した在来木造工法に、新エネルギー・省エネルギーなどの最新技術を組み合わせ、県産材の活用、自然素材の利用など解体時の環境負荷の軽減も考慮した、耐久性、省エネ効果の高い住まいづくりの提案を行う。
■地域の紹介文
自然界で一度絶滅した国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰に取り組む豊岡市では、「コウノトリも住める環境は、人間にとってもよい環境である」という理念のもとに、「コウノトリと共に生きるまちづくり」を進めている。
エコハウス建設予定地の「ハチゴロウの戸島湿地」(2009年4月オープン)は、円山川下流域におけるコウノトリの生息拠点であり、生物多様性の宝庫と呼ばれる場所である。将来的には、ラムサール条約湿地への登録を目指している。
■コンセプト
「コウノトリ舞う里で、自然と折り合う暮らしを提案するエコハウス」
◎地球温暖化防止と生物多様性保全を考えるモデルエリアの創出
◎気候風土に適合した伝統技術と最新技術の融合
◎総合的な環境保全についての意識啓発
■予定地の緯度/経度
北緯 35度37分6.95秒(35.618597)
東経 134度49分6.34秒(134.818428)
建設地
建設地航空写真
■計画提案
- ◇タイトル
- 豊岡型エコハウス
- 設計者
重村桂子(株式会社いるか設計集団)
- ◇ここがポイント
- ○地域性
コウノトリ舞う里で - ○環境性
風そよぎ光あふれて - ○ライフスタイル
自然と折り合い暮らす
◇設計主旨
コウノトリが生息する拠点でもあり多様な生態系を保持する「ハチゴロウの戸島湿地」で、自然環境と親和しながら、自然を楽しみ、地域の伝統に学び、自然と折り合い、ローインパクトな暮らしを楽しむ住まいが豊岡のエコハウスです。自然との連続感、室内外が交流し、自然と交歓するライフスタイルをはぐくみます。
日本海側に位置する豊岡の気候の特徴は、多雨(雪)・多湿で、さらに盆地特有の寒暖の差があげられます。このような自然条件と折合いをつけるため、かつての豊岡の家屋の中心部には暑気・湿気の排出ルートとなる大きな吹抜けが存在し、空間構成の軸として家人の暮らしの中心となっていました。この「吹抜け空間」の伝統を現代のエコハウスに活かし、いつも家族の気配が感じられる開放的な内部空間を創出することで、先人の知恵を活かしながら現代的エコライフを豊かなものとするモデルハウスを実現します。
(特徴)
- 日射コントロール装置としての縁側空間
夏の日差しを遮る縁側空間や西日除けの格子戸を設け、冬は日射を最大限取り入れる縁側のすのこ庇のライトシェルフ効果により光を部屋の奥まで導きます。 - 呼吸する壁(土壁外断熱工法)
多湿な気候に適応するため、吸放湿効果のある土壁で空調に頼らず湿度をコントロールします。土壁には、施工性に優れた工法を採用します。 - 換気・補助暖房装置としての吹抜空間
夏は、吹き抜け上部にたまった熱を越屋根から逃がすことで排熱換気を促し、冬はこの暖気を1階床下に送り、窓際に放出することでコールドドラフトを和らげます。 - 自然素材と地元産材の利用
木・土・紙などの自然素材を多用し、可能な限り県産木材を活用します - 豊岡らしいエコロジカルな景観の創出
豊岡の伝統的な民家の形態を継承し、切妻平入りの瓦屋根、越屋根、格子等をモチーフとした外観で周囲の景観との調和を図ります。
■工事中
建物全景 縁側空間を日射コントロール装置として利用(3月11日撮影)
外壁 瓦屋根と外壁(漆喰壁+板張り)は地域の景観にも配慮(3月5日撮影)
土壁と竹小舞ネット 土壁の住まいを現代工法で実現(竹+ガラス繊維ネット+土壁)(3月8日撮影)