20のチャレンジ
北海道下川町
■暖房度日地域区分
■パッシブ地域区分
■提案概要
緑豊かな場所に、「下川らしさ」「長寿命」「安心・安全・健康」「環境との共生」の4つの基本となる性能から具体的な水準を定めた「下川・建築物環境目標水準」に準拠し、循環型森林経営から産み出されるFSC認証材や自然エネルギーを活用した木造のモデルハウスの建設を契機に、ゼロカーボン住宅の建設を推進します。
■地域の紹介文
下川町は、夏は30度を越え、冬は-30度を下回り年間の気温差が60度以上になる「寒暖の差」が激しい地域です。また、町の面積の約90%が森林であることから、森林・林業を基盤として発展してきました。町では機会あるごとに森林を取得し、循環型森林経営の確立を目指すとともに、FSC森林認証の取得、森林バイオマスの総合的な利活用などに取り組んできました。
平成20年7月に国の「環境モデル都市」の認定を受け、これまでの取り組みを持続・発展させるとともに、地域の活性化に結びつけた取り組みと低炭素社会の構築を推進しています。
■コンセプト
エコハウスの普及構想は、低炭素社会の構築に向け、環境モデル都市アクションプランの具現化を図るものであり、高気密・高断熱、長寿命、省エネ・省資源、地域材使用に伴うウッドマイレージ、CASBEE-すまい、LCAなどを考慮したゼロカーボン住宅を建設します。
北海道下川町
環境モデル都市下川町でのエコハウスモデル事業
※ 別ウィンドウで開きます
■予定地の緯度/経度
北緯 44度15分3秒(44.251)
東経 142度38分24秒(142.640)
建設地
建設地航空写真
■計画提案
- ◇タイトル
- はぐくむ つながる よりそう すまい
- 設計者
- 櫻井百子・川崎芳弘(アトリエmomo)
- ◇ここがポイント
- ○地域性
地元の木材の積極的利用と森に寄り添う北国らしい力強いフォルム - ○環境性
手厚い断熱による暖房負荷の低減と最小限のウッドマイレージ - ○ライフスタイル
最新技術の力を借りながら住み手参加で
厳しい気候環境とも快適に楽しく
◇設計主旨
下川町エコモデルハウスは美しい林の奥に広がる傾斜地に、ひっそりと寄り添い佇む配置です。南の方へ伸びやかに広がる通り土間は下川産カラマツの粉炭を混ぜ込み、太陽熱を蓄え暖房負荷を軽減し、地中熱HPが熱源の床暖房が冬期間の快適な熱環境を作ります。
通り土間に面する小上り空間は、障子を閉めると個室としても利用でき、下川産カラマツの炭が敷き詰められた床下に取り入れた新鮮空気は、暖房配管で予熱されつつ炭の中を通過し浄化され、高気密・高断熱空間の空気環境を快適に保ち、南側の大開口を通じて冬期間も多目的に地域とつながる空間です。2階からは各方向に美しい林を望むことができ、水回りの動線は回遊しながら露天風呂のように開放的な浴室に通じます。丘までつながるデッキは、屋外での食事なども楽しめます。
年間の寒暖の差が60℃と厳しい環境で大開口と伸びやかな空間を獲得できるのは、梁間5.2m、スパン4mの在来軸組と、トリプルガラスダブルLOW-Eグリーンの入ったQ値0.9の木製サッシの採用、壁:300㎜、屋根面:500㎜のウッドファイバーなどによる手厚い断熱のおかげです。(建物全体のQ値は0.8)
森林資源に恵まれた森のまち下川町にとって、大きな窓は地域性を暮らしに取込む大切な要素の一つです。現在の一般的な北海道住宅の熱損失は概ね、窓・換気・床屋根壁が1/3ずつなのに対し、このモデルハウスは約半分の熱損失が窓からで、重要な提言だと考えます。さらに、FSCプロジェクト認証取得を前提に、木材の大部分を下川の森林から伐採されたFSC認証カラマツ材で賄っている事で、ウッドマイレージの劇的な減少により、CO2を削減、固定し、下川産のバイオマスの積極的利用によりCO2の排出も最小限にし、トータルでゼロカーボンを目指していることは、森のまち下川から発信する環境配慮のありかたと考えます。
北海道特有の、冬長く、夏短い気候、約5ヶ月続く降雪、累積積雪約9m、最深積雪が1.2mを超えるなかで、草屋根は短い夏の間熱を遮り、建物を周囲になじませ、長い冬には積もった雪とともに断熱効果を発揮します。また、大きく張り出した庇は、下川産カラマツを燻煙処理した外壁を守り、直方体のボリュームともに北海道らしいシンプルで力強い外観を構成しています。リズミカルな押縁の縦ラインは木立の縦ラインと呼応し、年を重ねるごとに緑になじみ、下川の人々に愛され、長く大切に使っていただけることへつながれば幸いです。
■工事中
下川産FSCカラマツ材をふんだんに使ったシンプルな骨組み
下川産トドマツで作られたウッドファイバー断熱材
カラマツ集成材のリズミカルで美しい構造体