大阪府立堺工科高等学校 定時制の課程は、「捨てればゴミ、活かせば資源」を合言葉に、天ぷら油などの廃棄油を使って発電する「バイオディーゼル発電機」や「プラごみ」から発電機の燃料になる油を作る「プラスチックごみ油化装置」などを製作。生徒たちが授業の一環である「ものづくり」を通じての環境問題への取組です。
*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
どんな活動?
授業の「ものづくり」を活かして
地球温暖化防止をめざす!
堺工科高等学校製作の包丁
大阪府立堺工科高等学校定時制の課程には全学年で76名(2021年11月1日現在)が在籍しており、東日本大震災以来、毎年、堺市の伝統地場産業を学ぶ「堺学」の授業で製作した「包丁」と「線香」及び「義援金」を被災地に訪問、直接手渡しで寄贈してきました。包丁を届けた理由は、被災地の学校で家庭科で使用する包丁が流されて困っていることを知ったからです。
また、被害の大きかった釜石、大船渡、陸前高田、女川などを毎年訪れ、それぞれの市にある花の香りを線香の原料に使い、被災地の高校との「コラボ線香」を作って支援もおこない、さらに今までに寄贈した「包丁」の研ぎ直しのための訪問も継続しています。
そして、10年以上続けられている東北支援プロジェクトの交流の中、災害時に発電機があっても油がなければ発電できないという課題を聞き、自分たちの学校の特性である「ものづくり」を活かして、天ぷら油などの廃棄油を使って発電する「バイオディーゼル発電機」を製作。また、「プラごみ」から発電機の燃料になる油を作る「プラスチックゴミ油化装置」も製作するなど地球環境に配慮した循環型の「ものづくり」を授業の一環として行っています。
活動のきっかけは?
被災地支援がきっかけとなり、
地球温暖化防止のものづくりへ!
保田光徳先生とボランティア部員
今回、大阪府立堺工科高等学校を訪れ、グッドライフアワード表彰式の発表者で、教諭・進路指導主事の保田光徳氏と定時制の課程 ボランティア部3名の生徒の皆さまの同席のもと話をうかがいました。
保田先生に環境問題への取組のきっかけを聞くと、「堺工科高等学校には、地場の伝統地場産業を学ぶ『堺学』の授業があり、その成果物である、支援品を送らずに手渡すという東北支援プロジェクトを10年以上続けています。その交流の中で、支援することも大事だけど、そこからさらに進めて防災や温暖化防止の意識が高まっていったのです。そこで本校の特性を活かして、地球環境にやさしいものづくりをはじめました。」と話してくれました。
さらに保田先生は、「被災地では“電気がなくなって困る”という話をよく聞きました。発電機があったとしても災害時には、ガソリンや軽油が入手できず、発電機がただの箱になってしまう。そこで、堺工科高等学校では、廃棄する天ぷら油で発電できる『バイオディーゼル発電機』を製作したのです。油の処分にも困らず、どの家庭にもある天ぷら油を利用して電気が作れます。ただ難点は発電時に天ぷらの臭いがすごくする!」ということでした。
そして、堺工科高等学校が地球温暖化防止のため、一歩進んで開発をはじめたのが、プラスチックごみを有効利用する発電システムです。そのために、一般家庭から出るプラごみを油にする「プラスチックごみ油化装置」を製作しました
<堺工科高等学校が開発したプラごみ油化システム>
粉砕されたプラごみ
抽出された油
プラごみから出来た油をバイオディーゼル発電機へ
また、排気ガスが出ない環境に優しい「電気自動車」も作り、子どもにも「環境」について考えてもらうよう「電動カート」も作りました。
堺工科高等学校製作 電気自動車
電動カート
成功のポイントは?
学びの場で環境問題への取組の継続性が大事
保田先生に成功のポイントを聞くと、「堺工科高等学校の活動がなぜ長く続いているのか?自然災害の対策を若い人に伝えて風化させないという気持ちもあるが、生徒が被災地を直接訪問して、それを後輩に伝えていくという継続性が成功につながるのだと思います。」との答え。
自然災害が多発している昨今、地球温暖化防止のために環境問題に取組み、天ぷら油や不要な油で電気を作る「バイオディーゼル発電機」をはじめ、排気ガスが出ない環境に優しい「電気自動車」、「プラスチックごみ油化装置」などを製作する堺工科高等学校。 実際に取材すると、ものづくりの情熱と災害対策や環境問題への取り組みがうまくマッチングしているようでした。
2019年に大阪府などで大きな台風被害がありました。その際、処分に困っている廃油を燃料にして「バイオディーゼル発電機」を用いて停電の復旧工事が行われ、地域の方々から環境に優しくて、発電機の存在がとても心強いと言われました。
また、「プラスチックごみ油化装置」は、海洋プラスチックごみの有効活用及び地球温暖化防止に役立つと吉村大阪府知事も絶賛してくれたそうです。
今後の展望
プロジェクトが目指している事、今後やりたい事
最後に保田先生と生徒3人に今後の抱負について語ってもらいました。
「環境大臣賞をいただいて、ありがとうございます。すごい反響で生徒共々喜んでいます。今後も被災地支援を続けていきたいと思っています。それと並行して、災害を減らすにはどうすればいいかを考えながら、不要なプラスチックごみから燃料油を作って、そこから電気を作るという『捨てればゴミ、活かせば資源』をモットーに活動を続けていきます。今後は、太陽光発電と浄水に取組んでいきます。それは、環境に配慮すると共に、災害時には電気と水の確保がとても重要だからです。」
そして3人の生徒のみなさんも、「堺工科高等学校の活動をもっと多くの人に知ってもらって、次にくる大きな災害に備えるというのが将来の目標です。」と語ってくれました。
大阪府立堺工科高等学校 定時制の課程は、廃棄する天ぷら油やプラごみなど身近な素材を使って、リサイクルのものづくり教育を行っています。それは生徒たちが社会に出ても環境問題への関心をさらに高くするための教育にもなっていました。