福井県の勝山市立平泉寺小学校の生徒たちは、地区の湿原の環境保全のため、群生するヨシを刈り取り、それをストローに加工することでプラスチックごみ削減に貢献する取組を行っています。
*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
どんな活動?
池ケ原湿原の環境保全のための「ヨシ刈り」!
刈り取ったヨシをストローにしてプラごみ削減!
平泉寺小学校
全校児童45名(2021年現在)という福井県の勝山市立平泉寺(へいせんじ)小学校は、様々なジオサイトが校区内にあり、平泉寺全体がジオパークとして自然と歴史が豊かな地域 です。平成26年度からは、ユネスコスクールの認定を受け、SDGsの目標に関連づけて教育活動を展開しています。
校区には希少植物が生えて多くの動植物が生息する豊かな池ケ原湿原があります。その中には、イネ科の多年草で高さ2~3メートルになる「葦(ヨシ・アシ)」が生い茂り、大群生をつくります。昔は雪囲いなどの資材としてヨシが利用され、村民総出のヨシ刈りが実施されていました。しかし、生活様式が変化してヨシ刈りが行われなくなり、湿原の荒廃が進みました。大量の枯れたヨシは湿原植物の生長の妨げになるなど環境に大きな影響を与えてしまうのです。
そこで平泉寺小学校の児童たちは福井県の自然保護センターの指導の下、ヨシ刈りの活動を毎年実施するようになりました。さらに近年では刈ったヨシから「ヨシストロー」を作り、プラスチックごみ問題改善にも力を入れる活動を行っているのです。
活動のきっかけは?
池ケ原湿原の動植物の環境調査を実施!
ヨシストローづくりは、プラスチックごみ問題がきっかけ
ヨシストローづくり
平泉寺小学校では、福井県自然保護センターと連携し、池ケ原湿原の保全活動に取組んでいます。年2回、湿原に生息する動植物を観察する個体数調査や水質調査を実施しています。
個体数調査や水質調査から、ヨシを刈ることで希少植物の個体数が増え、湿原が良好な状態を保ち環境保全がなされていることがわかっています。また、これまでの約10年間、 刈ったヨシの一部を越前和紙に混ぜて紙すきを行って卒業証書として活用し、軒先に立て掛ける日よけの「よしず」を編んでいました。しかし、近年は地域でヨシを利用する人も減ってしまい、何とか利用できないかと考えていたそうです。
そうした中で、福井県自然保護センターの方からプラスチックごみ問題について知り、その改善策のために閃いたのがヨシストローでした。また、古代メソポタミア文明ではヨシのストローでビールを飲んでいたという話を聞き、プラスチックのストローに代わってヨシストローを生みだすことが、ヨシの再利用や地球環境の改善にもつながると考え、令和元年より全て児童による「ヨシストロー」の製作がスタートしたのです。
成功のポイント!
ヨシストローを広めよう!児童が取組を情報発信!
平泉寺小学校 児童
平泉寺小学校は、ヨシストローの製作とともに、ヨシストローを通じた環境保全活動を広く情報発信してきました。
手作りのヨシストローにラッピングを施し、市長や教育長に進呈。自分たちの取組を応援してほしい!と要望。地元で開催された勝山市環境フォーラムでは、「脱プラ」の必要性を発信しました。また、池ケ原湿原の近くにある自然体験施設「ミルク工房奥越前」に200本進呈し来場者に使用してもらう活動も開始。すると、平泉寺小学校の活動が多くの新聞やネット記事で紹介されたのです。
自分たちの取組の情報発信を行うことで、周囲とのつながりを深めることができ、グッドライフアワードの優秀賞受賞をきっかけに平泉寺小学校の取組を知った県内の企業からヨシストローづくりのサポートなどの申し出も寄せられるようになっていきました。
そんなヨシストローの活動を通じて、校内では給食の時間にプラスチックストローを使わないでヨシストローで飲む姿も見られるようになり、児童の環境への意識がどんどん高まっていきました。平泉寺小学校では全校児童の9割がふるさとを大切に思い、これからもふるさとの役に立ちたいと答える児童も全体の8割を越え、次世代育成にもつながっています。
レポート!
ヨシストローづくり
ヨシストローの魅力は、「自然にやさしい」「無限につくれる」「何回でも使える」ところ。 今回は、勝山市立平泉寺小学校のヨシストローづくりの現場を取材しました。
活用方法は徐々に広がりを見せ、勝山市の飲食店4か所で使ってもらうことになったヨシストローをみんなで協力して作っていきます。
作り方は・・・
①ヨシの皮をむく
②ヨシを切る
③中身の綿を抜く
④両端をヤスリで削る
⑤煮沸する
児童作成のヨシストローの作り方
乾燥させたヨシ
皮むき
切る
綿抜き
ヤスリで削る
さらに、越前和紙の製紙メーカーである山田兄弟製紙株式会社から提供されたヨシ紙でヨシストロー入れとヨシストロー置きも製作します。こうした地元の企業とのコラボレーションも広がっています。
ヨシ紙
ストロー入れづくり
完成したストロー入れ
生徒たちも馴れた手つきでヨシストローづくりに熱中していました。
その理由を聞くと・・・
「自分たちの活動でふるさと勝山のことが新聞やニュースで取り上げられ、ヨシストローを置いてくれる飲食店も増えました。後輩たちにはヨシストローをもっと多くの人に発信してほしいと思います。」
「ヨシストローや池ケ原湿原の保全活動を通じて、温暖化などの環境問題を学んで驚いています。ヨシストローでプラごみ削減に貢献できていることが、うれしいです。」 「この活動を通じて、地球環境のことをとても意識するようになりました。いまは家族にもヨシストローを使おうと言っています。自分がマイバッグや水筒をもって自然環境を意識することがスタート。もっと多くの人に地球環境に関心をもってほしいと思います。」など、とてもしっかりした答えが返ってきました。
取材した児童と関係者の皆さん
今後の展望
プロジェクトが目指している事、今後やりたい事
最後に指導を担当する齋藤英市先生と平泉寺小学校の児童をサポートしながら池ケ原湿地の保全活動に取組んでいる福井県自然保護センター(福井県安全環境部自然環境課)の佐野沙樹さんのメッセージを紹介します。
齋藤英市先生のメッセージ
「これまでの「ヨシストロー」の活動は学校だけでなく、福井県の自然保護センターをはじめ、行政、地元の企業の方々などと連携することで進められてきました。それがグッドライフアワードの優秀賞を受賞したことでさらなる注目が集まり、ヨシストローが勝山市内の多くの飲食店で扱ってもらうようになりました。また、地元の企業からはヨシストローづくりの新しいヒントやサポートの提案も頂いています。
これからも様々な方々や企業と連携を密にして「ヨシストロー」の取組を推進していきたいと思っています。
そういったことがSDGsの目標達成につながり、将来、持続可能な社会の担い手となる子どもたちを育成していけると考えています。」
福井県自然保護センター 福井県安全環境部自然環境課 佐野沙樹さんのメッセージ
「自然豊かな池ケ原湿原の保全活動には多くの人の協力が必要です。平泉寺小学校の 皆さんの活動を好機ととらえ、より多くの人に働きかけて湿原の保全活動を頑張っていきたいと思います。」
「ヨシストローで地球環境保全もヨシ!!」平泉寺小学校の取組は今後も地元に根を張って大きく広がっていきそうです。