環境大臣賞 最優秀賞を受賞したのは、アイ・グリッド・ソリューションズの「自然を傷つけない屋根上太陽光発電とグリーンテックで環境に優しいエネルギー循環の実現」の取組です。また、アイ・グリッド・ソリューションズでは独自開発のエネルギー管理システムを用い発電した再生可能エネルギーを最大活用することも推進しています。
*グッドライフアワードは、環境省が提唱する地域循環共生圏の理念を具現化する取組を表彰し認知を広げるためのプロジェクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
どんな活動?
商業施設の空いている屋根上に太陽光パネルを設置!独自のAI予測システムで電力を管理!
AI予測を活用したエネルギー管理システム
アイ・グリッド・ソリューションズは、2017年から自然を壊さずに既存の商業施設の屋根を活用した分散型太陽光発事業を開始。
現在、国内では2050年カーボンニュートラルに向けて、CO2を排出しない再生可能エネルギーの普及の取組が活発化している一方で、大規模開発による自然への影響も議論を呼んでいます。こうした中、アイ・グリッド・ソリューションズではいち早く施設の屋根に着目した太陽光発電施設を手がけ、自然環境に負荷をかけない再生可能エネルギーの利用推進に寄与している点が、グッドライフアワード実行委員会の審査で高く評価されました。 また、AIによる高精度の余剰電力予測と各施設のきめ細かい自動制御が可能なエネルギーマネジメントプラットフォームを独自開発。先進的な取組により、発電した再エネの最大活用を推進している点や、将来のさらなる発展が期待される点も評価され、最優秀賞の受賞となりました。
アイ・グリッド・ソリューションズでは、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を利用しない太陽光発電所としては、国内最大級となる全国約420か所の流通サービス施設を中心に約87MW(メガワット)の分散型太陽光発電所を稼働させています。 また、創るだけでなく、AI予測や行動変容の理論を活用したエネルギーマネジメントシステムを約6,000の事業所に導入し、電力の最適利用の促進や、家庭・法人向けにのべ約28万世帯への電力供給も行っています。
※データは2022年8月現在
分散型太陽光事業をはじめたきっかけは?
エネルギーから経営面を支えるために。お客様に寄り添うことで課題が見えてくる
アイ・グリッド・ソリューションズの代表取締役社長 秋田 智一氏
今回、アイ・グリッド・ソリューションズの代表取締役社長である秋田 智一氏を取材しました。秋田氏によると、分散型太陽光事業を始めたきっかけは全国にあるスーパーマーケットの屋根に注目したことでした。
秋田氏は「スーパーマーケットは屋根が広い施設。この空いている屋根を活用して、太陽光発電をすれば、多くの再生可能エネルギーを生みだせると思った」と当時を振り返りました。事業を始めた頃はまだ社会に「脱炭素」という潮流はなかったものの、エネルギー自給率が低く、自然災害による大規模停電など日本の電力システムの変革の時期で課題意識も高まりつつあったタイミングでした。
そうした中で、秋田氏は「エネルギーを通じてお客様の経営改善を提案していた当社として、施設の屋根を活用した太陽光発電から直接電気を供給することで、経営面をサポートするだけでなく、エネルギーリスクも改善できる」と意気込んでいたそうです。しかし、「自社で屋根に太陽光パネルを設置するには大きなコストが掛かります。また、パネル設置をしながら店舗を運営していくことに対し不安を感じる企業も多く、事業を始めた当初は、積極的に導入をしてくれる企業は多くありませんでした」と立ち上げの苦労も多かったとか。
太陽光への投資にハードルが高いと感じる事業主も多かったため、アイ・グリッド・ソリューションズは、自社がまず投資して太陽光パネルの設置・管理を行い、そこで発電された電力を施設の所有者へ電力供給することで電気代以外のコスト負担がないビジネスモデルを開始しました。実は全国のスーパーマーケットは概ね2階・3階建てで南向きに駐車場を設営している施設が多く、太陽光を遮るものがありません。また、多くのスーパーマーケットは金属屋根を折り返した形状の「折半屋根」という工法になっていて、太陽光パネルを設置しやすいという好条件もありました。この事業によって顧客の経営面でメリットはあると確信があったため、不安要素を一つ一つ取り除くためじっくりと顧客と向き合いながら計画を進めていったそうです。
事業成功のポイントは?
社会的な価値観の変化が分散型太陽光事業の推進を後押し!
分散型太陽光事業について語る秋田氏
再生可能エネルギーや脱炭素は社会的に価値があると理解を示してくれる事業主が一定数いたものの、「従来に比べて電気代が安くなり、メンテナンスもかからない。そんなうまい話があるのか?本当に採算はとれるのか?」など、不安の声もあったとか。その不安を取り除くため、「太陽光パネルを設置すると電力の基本料金の削減にもつながる」というデータを用いて経済的なメリットがあることを示し、導入する企業を増やしていったそうです。
一方で、設置コストの観点から、施設で使い切れる分だけの量を発電する太陽光パネルしか設置できず、屋根を最大限活用することができないという課題もありました。
スーパーマーケットは電力消費量が多く、屋根上いっぱいに太陽光パネルを設置しても、発電した電気を全て施設で使いきれるのですが、ホームセンターなどは面積が広い割に店舗で使う電力が少ないので、施設の電力使用量に合わせると、屋根上の半分や1/3にしか太陽光パネルを設置できなかったそうです。 こうした課題を解決するために、再エネの発電量、使用量を管理し、AIを活用したシステム(R.E.A.L. New Energy Platform)を独自開発。予測技術を活用し、施設で使いきれない余った電力を一般家庭や他の事業所に供給できる仕組みを構築しました。これにより各施設の屋根上いっぱいに太陽光パネルを設置することが可能となりました。
秋田氏は試行錯誤する中、「再生可能エネルギー分野におけるテクノロジーの急速な進歩で、思い描いていた構想が現実のものになっていった」と語ってくれました。さらに、菅前総理の「2050年カーボンニュートラル宣言」によって脱炭素社会へ向かう意識が高まり、「電気代を減らすというよりも、脱炭素化の取組がしたい」「脱炭素経営を通じて企業価値を向上させたい」というニーズが先行する社会に変わってきた印象があるそうです。
今後の展望
グリーンエネルギーがめぐる世界の実現を目指し、地産地消で再エネが循環していく事業を推進
アイ・グリッド・ソリューションズは、「R.E.A.L. New Energy - グリーンエネルギーがめぐる世界の実現」を事業ビジョンとして掲げビジネスを展開しています。
秋田氏は、「これまでも多くの課題を解決することで、自然を壊さずに再生可能エネルギーを増やすためのビジネスモデルを構築してきました。今後も、再エネを増やすとともに、地産地消で再エネが循環していく事業を推進していきたい。」と語ります。
今後、アイ・グリッド・ソリューションズでは、屋根で発電した再生可能エネルギーを施設内で使用するだけでなく来店客のEVに給電するサービスの構築や、大型蓄電池を活用し、太陽光が発電しない時間帯に使用したり、地域内で融通しあったりと地域全体の再生可能エネルギー比率を高めていくビジネスを推進していくことなどを計画しています。それは「グリーンエネルギーが地域社会で身近になっていく」ということです。
分散型太陽光発電所のひとつひとつは小さいですが、集約することで大きな発電所のような機能を創り出します。 AIやIoTを活用して身近なところで生まれたグリーンエネルギーが地域をめぐる社会を目指しています。